水が豊富で山も多い日本では家や寺社などを木で造るため、昔から林業が盛んです。特に京都市北西部の北山地方では室町時代から北山杉の産地として知られ、「台杉仕立て」と呼ばれる特徴的な育林方法が有名です。この台杉仕立てについて、アメリカ・ニューヨークのアンティークジュエリーストアであるDSF ANTIQUE JEWELRYがブログで取り上げています。

The Ancient Japanese Technique That Produces Lumber Without Cutting Tr | DSF Antique Jewelry

https://dsfantiquejewelry.com/blogs/interesting-facts/the-ancient-japanese-technique-that-produces-lumber-without-cutting-trees

京都北山丸太生産協同組合によると、北山地方は古くから朝廷や寺院の所領として営まれており、木材や薪炭(しんたん)、松明(たいまつ)、菖蒲(しょうぶ)などを納めていたとのこと。北山地方には山々が多く、住民の多くが林業を生業にしていたそうです。

北山地方の山は斜面が急なので、木を伐採した後に新しく植える植林が非常に困難。また、植林用の苗木は非常に貴重なものだったので、失敗は許されないという状況でした。



そんな中で編み出された育林方法が「台杉仕立て」です。DSF ANTIQUE JEWELRYによると、台杉仕立ては14世紀に開発されたとのこと。実際に京都の北山地方で林業を営む藤田林業のサイトには以下のように書かれています。

北山台杉は、”垂木丸太”の生産を目的として西暦1200年(室町中期)に作られ、600余年の歴史をもっています。近年、日本各地でも台杉が育成されているようですが、その発祥の地は京都・北山なのです。

(中略)

また、1本の幹から3〜5本の立木がまっすぐ伸びているという・・・。その独特の形状ゆえに、同じ形のものはないと言われるぐらい、仕立て方や手入れ方法により千差万別の表情を見せてくれますので、より個性的な庭園美をお楽しみいただけます。


台杉仕立ては、まるで手のひらを平げたような台状の樹木(取り木)から直立して伸びる木(立ち木)を数本選びます。この立ち木を育てることで、1本の取り木から構造材用の丸太になる複数の取り木を伐採できるというわけです。

台杉がどんなものなのかは、以下のムービーを見るとよくわかります。

京都北山杉_台杉 - YouTube

立ち木から新芽を選んで剪定(せんてい)を行いながら丸太用の立ち木を育てるというのは巨大な盆栽の手入れにも似ている、とDSF ANTIQUE JEWELRY。新芽の成長にかかる時間はおよそ20年ほどとサイクルがかなり早いので、台杉仕立ては環境への害を抑えながら木材の需要に大きく応えることができる育林方法です。



北山台杉から伐採された垂木丸太は、一般的な杉よりも柔軟性が約1.4倍、密度が約2倍で、強度に優れています。そのため、毎年のように台風が上陸する日本にとっては非常に重要な建築材です。



現代では木材の需要が減少し、北山台杉から垂木丸太が伐採されることはかなり減りましたが、その不思議な形状から庭園に植える観葉植物としての需要は高くあります。DSF ANTIQUE JEWELRYは「台杉仕立ての技術は海外でも使用されています。台杉仕立ては日本が何世紀にもわたって私たちに伝えてきた創意工夫の一例です」と述べています。