「今年の取り組みができた」渋野日向子が目標の大会へ弾み。大ギャラリーを沸かせた躍動にはワケがある
金田久美子の11年189日ぶりの優勝で幕を閉じた樋口久子 三菱電機レディス(埼玉・武蔵丘GC)において、ディフェンディングチャンピオンにして米ツアーから戻って参戦した渋野日向子は、初日に61位と出遅れたものの、28位で迎えた最終日に「68」をマークし、最終的には9位に順位を大きくジャンプアップさせた。
だが、ホールアウト後の渋野はなんとも煮え切らない、困惑の表情だ。
「ショットの感触がぜんぜんいいとは言えず、ショットの感触と、スコアが比例してないような一日で、ちょっとよくわからなかったかな(笑)。モヤモヤしたものが残りました。ただ、(ディフェンディングチャンピオンとして)最終日に盛り上げられたかなとは思うので、すごい帰ってきてよかったなって思います」
インスタートの渋野は前半で3つスコアを伸ばし、後半に入ってからは10m以上のバーディーパットを二度沈めるなど、18ホールで6つのバーディ(2ボギー)を奪った。とりわけ6番は下りの難しいフックラインで、本人も「あれはびっくりした」という。
「ウェッジ1本分ぐらい曲がる感じで、右に打ち出したら入ってくれた。驚きしかなかったけど、(大歓声が起きて)楽しんでもらえているのかなとうれしかった。
ただ、ショットでとったバーディーではなかったので、一日を通じて(ショットとパッティングが)噛み合った感じがない。ロングパットのタッチが合っていたのが、最終順位につながったとは思います」
ショットにせよ、パッティングにせよ、昨日がよかったからと言って、今日も同じような感触で打てるわけではないのはゴルフの常だ。
「ゴルフ(の調子)って本当に日替わり。調子が悪い時でもどれだけの確率でパーを拾えるか、どれだけパー5でチャンスにつけられるか、どれだけパープレー以下(のスコア)で回れるか、そういうことを積み重ねていかなきゃと今年は思っている。しっくりこないなかでも、4アンダーが最終日に出せたというのは、今年の取り組みができたからだととらえていますね」
樋口久子 三菱電機レディスで奮闘したディフェンディングチャンピオンの渋野日向子
米ツアーの参戦中に、国内ではすでに2勝を挙げた川粼春花など、今年デビューした新星も続々と台頭してきている。
「うれしいと同時に、自分も頑張らないといけないという気持ちにさせてもらえる。年下でもみんなライバルですし、年下だからといって、一緒に回って手を抜くということはまったくない。もっともっと年下の子が活躍して、まだまだ下の子が出てくるのが楽しみ。
その一方で、同い年の勝みなみちゃんとか、(2つ下の)西村優菜ちゃんとか、いろんな選手がアメリカツアーに挑戦できる時代になってきた。私も頑張りたい」
次戦のTOTOジャパンクラシックにも渋野は出場する。
「今年の目標のひとつが、TOTOジャパンクラシックにアメリカツアーの選手として出場することだった。それが叶えられたので、すごくうれしいですし、予選落ちがないので、4日間プレーできるのが楽しみだし、初日から頑張れたら、もうちょっといい内容のショットが打てたらというのが、(同大会に向けた)目標かな」
渋野が引きつれる大ギャラリーは、ナイスプレーには喝采を送り、ミスすれば、渋野の気持ちを代弁するように溜息を吐く。そうした素直な反応が、渋野は心地よい。
「アメリカでもそういう反応はあるけど、やっぱり日本は一緒に喜んだり、落胆したりしてくれて、18ホール、ずっといい雰囲気で回らせてもらえる。それは力になります」
日本のギャラリーとともに、1年ぶりとなる通算8勝目(全英女子オープンも含む)を飾ることができれば、これ以上の幸福はない。それを最認識した、日本女子ツアーの復帰戦だった。