●CineBench / PCMark / Procyon

Unboxingに続き、Raptor Lakeの性能の速報版として、Preview記事をお届けしたい。「Previewなのかよ」と突っ込みが入りそうであるが、今回はご容赦いただきたい。私事で恐縮なのだが、取材の出張が続いたり、機材手配のスケジュールだったりで、ベンチマークを始めたのは実に10月17日なのである。流石にこの期間でRaptor Lakeの複数モデルとその競合製品のベンチマークをフルに取れなかったので、今回はRaptor Lakeベースの「Core i9-13900K」 vs Alder Lakeベースの「Core i9-12900K」の比較のみに留めさせていただいた。追って、Core i5-13600KやZen 4ベースのRyzen 7000シリーズの性能も含めた完全版を掲載するので、もう少々お時間を頂きたい。

まずは速報版にて、Core i9-13900Kの性能テストの結果をお届けする

ということでまずは今回の評価機材のご紹介を。既にCore i9-13900KのパッケージはUnboxingでご紹介しているので割愛するとして、まずはRaptor Lake、きちんとWindows 11で認識された(Photo01〜03)。メモリはCorsairのDominator Platinum RGBを利用している(Photo04)。

Photo01: L2が合計32MB、L3が36MB。性能向上に繋がるのは間違いないが、ちょっとちぐはぐな容量になっている印象はある。

Photo02: 今回Core i9-13900KはDDR5-5600のOC状態で動作させた。

Photo03: Windowsからもきちんと認識された。遂に合計32 Threadである。

Photo04: XMPだとDDR5-5600だが、JEDECだとDDR5-4800どまりであった。

マザーボードはASUSよりROG Maximus Z790 Heroを借用して利用した(Photo05〜13)。実は当初、手持ちのASUS Prime Z690-Aを使ってテストを行う予定だった。実際出張前に試しにBIOS Updateを掛けた後で装着するとちゃんと動作した(Photo14)からだ。実際この状態でWindowsやアプリケーション、ベンチマーク類のインストールは完全に行えた。ところが実際にベンチマークを開始すると落ちる落ちる。それもアプリケーションやベンチマークが止まるのではなくリセットが掛かって再起動ばかりである。「これはやっぱりZ690ではまずかったか?」と考えてROG Maximus Z790 Heroに入れ替えたものの、現象は一切変わらず。メモリのOC動作がまずかったか? とDDR5-4800に戻しても相変わらずリセットの嵐。結果から言うと悪いのは電源。Alder LakeベースのCore i9-12900Kは問題なく動作した1000W電源(ANTEC TPQ-1000:これの前モデルなので、流石に古かった)が原因だった。もう少し新しいATX12V電源に切り替えるとちゃんと動作したからだ。要するにAlder Lakeと比べてRaptor Lakeでは電源に要求する性能(おそらくは応答性)が厳しいことがあり、今回のような古いATX12V電源ではリクエストが来てからそれに合わせて供給電力を増やすのが間に合わず、電源不足からリセットに陥ったものと思われる。まぁ2007年発売の電源を使ってるのが悪い、と言われればその通りであるが、Alder Lakeは問題なく動く電源がRaptor Lakeでは駄目、とは思わなかった。ちなみに試しに電源を変えてみると、Prime Z690-Aでも問題なくRaptor Lakeでベンチマークが動くことは確認できたが、折角開封して環境を移してしまったので、今回はROG Maximus Z790 Heroのままでテストを行った。

Photo05: パッケージはいつものROGらしい構成。そろそろ名前が限界になってきたのか、遂にチップセットの型番が入るように。

Photo06: PCIeスロットは3本。NVMe SSDはCPUソケット脇に1つ、PCIeスロットの間に2つ。

Photo07: 裏面はフルカバード。なので結構重量がある。

Photo08: CPU周辺。VRMは20-way。

Photo09: ATX12Vの8pin補助電源コネクタは当然の様に2つ並んでいる。

Photo10: 20pin電源コネクタの脇にも6pinコネクタが。

Photo11: バックパネル。映像出力はHDMIのみ。Ethernetも2.5Gのみ。ただUSB Type-Cが3ポートに増えた。

Photo12: SATAを挟むようにUSBコネクタ(ケース内配線用)が並び、その右にはQ-Release(ワンプッシュでGPUカードを取り外せるスイッチ)が。

Photo13: 下端にはUSB 2とファンコネクタが並ぶ。

Photo14: これは単に装着して起動確認をしただけなので、Memory Clockが4000MHzとかになっている。

その他の環境は表1に示す通りである。Core i9-12900Kに関しては定格がDDR5-4800ということで、メモリもこちらに落としている。

テスト内容は基本的に、「Ryzen 7000 Seriesを試す(速報版)」の記事と同じである。「基本的に」と言うのは、若干バージョンが上がって新テストが追加された(3DMarkのSpeedWay)ものとか、バージョンが上がって性能が変わった(Stable Diffusion UI)ものなどもあるほか、1個テストを追加している。とはいえ殆どのテストは同じなのだが、敢えてRyzen 7000の速報版ベンチの結果は今回入れていない。というのは、今回OSをWindows 11 22H2に切り替えたためだ。こちらの記事で説明したが、Raptor LakeではIntel Thread Directorに手が入っており、これに対応するのはWindows 11 22H2である。逆に言えば、22H1と22H2ではスケジューラのアルゴリズムが変わっている可能性がある。なので、Ryzen 7000シリーズも今回の環境では結果が大きく変わる可能性を否定できない。このあたりは完全版の方でRyzen 7000シリーズを含めてデータを取り直してご紹介するので、今回はAlder Lake vs Raptor Lakeのみでご容赦いただきたい。

あと実はIntelよりSYSMark/CrossMarkでの評価も是非と言われているのだが、こちらは今回純粋に準備時間が足りなかったので見送りである。これも完全版の方で網羅する予定なのでこちらもご容赦頂きたい。

いつもの如く、グラフ中の表記は

i9-12900K:Core i9-12900K

i9-13900K:Core i9-13900K

となっている。また解像度表記も何時もの通り

2K:1920×1080pixel

2.5K:2560×1440pixel

3K:3200×1800pixel

4K:3840×2160pixel

とさせていただく。

○◆ CineBench R23(グラフ1)

CineBench R23

Maxon

https://www.maxon.net/ja/cinebench

グラフ1

Core i9-13900KはSingle Threadの性能向上(10%程度)も凄いのだが、それよりもMulti Threadの伸び方が著しいのが判る。要するにE-Coreもフル稼働させるとここまで性能が伸びる、という判りやすい実例である。伸び率は実に47%。元々Multi-Threadでは最大41%性能が向上するとIntelは説明していたが、この数字を証明する良い例になったと思う。

○◆ PCMark 10 v2.1.2574(グラフ2〜7)

PCMark 10 v2.1.2574

UL Benchmarks

https://benchmarks.ul.com/pcmark10

グラフ2

グラフ3

グラフ4

グラフ5

グラフ6

グラフ7

続いてはPCMark 10だが、Overall(グラフ2)で全ての項目の伸びが明白である。正直、ここまで性能差があるのはちょっとびっくりである。もっともTest Group(グラフ3)を見ると、なぜかGamingがやや落ちているが、これは3DMarkで確認するとしたい。

Essentials(グラフ4)/Productivity(グラフ5)/Digital Contents Creation(グラフ6)も、綺麗に全項目で明確に伸びがある。個別の結果を見ても、突出して何かが高速というよりは、ほぼ全テストでそれなりに伸びている(勿論OpenCLを利用する、例えばVideoConferencingEncodeGroupOclだと21.08sec vs 21.09secと性能差が皆無なものもあるが)形で、もう純粋にCPU&Memory 性能が向上した結果という感じだ。

Office 365を利用してのApplication Score(グラフ7)では、予想通りExcelの伸びが著しく、Word/PowerPoint/Edgeでの伸びはそこまで極端では無いが、それでもちゃんと性能差が出ているあたり、性能の伸びがかなりあると見て良いかと思う。

○◆ Procyon v2.1.527(グラフ8〜11)

Procyon v2.1.527

UL Benchmarks

https://benchmarks.ul.com/procyon

グラフ8

グラフ9

グラフ10

グラフ11

Adobe MAX Japan 2022開催に合わせてか、AdobeのCreative Suiteのメジャーバージョンアップが発生した関係で見事にProcyonがこれに引きずられて面倒な事になったが、一応最新の一つ手前バージョンで今回は実施している。

Procyonの場合、基本的には大量のデータ処理のワークロードとなる関係で、やはり何れのテストでも性能の伸びは明白である(グラフ8)。Photo Editing(グラフ9)で1割程度の性能向上、Video Editing(グラフ10)でも処理の軽いH.264/265 Export 2はともかく処理の重いExport 1ではそれなりの処理時間短縮が見て取れる。Office Productivity(グラフ11)でも、ExcelだけなくWord/PowerPoint/Outlookで明確に性能の伸びが示されているあたり、Raptor Lakeの処理性能向上は実アプリケーションのレスポンス改善とか処理速度改善に効果がある、と結論付けて良いかと思う。

●POV-Ray / Stable Diffusion UI / TMPGEnc / Linpack / 3DMark

○◆ POV-Ray V3.8.2 Beta2(グラフ12)

POV-Ray V3.8.2 Beta2

Persistence of Vision Raytracer Pty. Ltd

http://www.povray.org/

グラフ12

POV-Rayの結果もやはりCineBenchに近いもので、Single Thread(One CPU)だと18%ほどの性能向上に留まるのが、All Thread(All CPU)だと37%もの性能向上が見られる。Single Threadでの性能がIntelのいう15%を超えているのは、メモリがDDR5-5600動作だから、という部分もあるだろう(逆にAll Threadで37%と言うのは、CPUからのメモリアクセス要求でメモリコントローラが飽和し、ここがボトルネックになっているためと思われる)。

○◆ Stable Diffusion UI v2.28(グラフ13)

Stable Diffusion UI v2.28

cmdr2

https://github.com/cmdr2/stable-diffusion-ui

グラフ13

今回利用したv2.28では、画面構成が少し変わった(CPUの利用に関する設定が、右上に新設されたSettingsに移動した)他、大幅に性能が向上した。以前試したv2.07 BetaではCore i9-12900Kで457.87secほど掛かっていた処理が、今回は150.78secと、おおよそ3倍の高速化が実現しているからだ。まぁ以前はBeta扱いだったから仕方ないが、そんな訳で結果の互換性はまるでない。

それはともかくとして処理時間を見ると、150.78sec→118.72secと27%ほどCore i9-13900Kが高速である。マルチスレッド動作が効果的な処理には、Raptor Lakeは効果的という一例と言えるだろう。

○◆ TMPGEnc Video Mastering Works 7 V7.0.23.25(グラフ14)

TMPGEnc Video Mastering Works 7 V7.0.23.25

ペガシス

http://tmpgenc.pegasys-inc.com/ja/product/tvmw7.html

グラフ14

こちらも結果(グラフ14)を見れば説明は要らない。21fps程度の処理性能が30fpsまで伸びている訳で、E-Coreをフルに活用しているのが効果的という事になる。まぁ逆に言えば全コアをフルに動かせるくらいThreadを多数生成するアプリケーションでないとこの性能は出ない、というのは1StreamだとCore i9-13900Kでも23fps程度まで性能が落ちる事からも明白である。フルに性能を発揮できるアプリケーションを選ぶ、というのは判っている事ではあるが、それを改めて数字の形で示したと言える。

○◆ Intel oneAPI Math Kernel Library Benchmarks Suite 2022.0.2_92(グラフ15)

Intel oneAPI Math Kernel Library Benchmarks Suite 2022.0.2_92

Intel

https://www.intel.com/content/www/us/en/developer/articles/technical/onemkl-benchmarks-suite.html

久々のIntel謹製Linpackである。AMD製CPUでは動作しないのでRyzen 7000シリーズのレビューでは外したのだが、今回はIntel同士の比較なので入れてみた。

グラフ15

結果は御覧の通りで、Core i9-12900Kは659GFlops程度、対してCore i9-13900Kは900GFlopsと37%もの性能の伸びを示している。これは要するにそれだけE-Coreをフルにブン回している、という事の裏返しではあるのだが。

○◆ 3DMark v2.24.7509(グラフ16〜19)

3DMark v2.24.7509

UL Benchmarks

https://benchmarks.ul.com/3dmark

今年3月にUL BenchmarksはSpeed Wayという新しいベンチマークを追加する事をアナウンスしたが、10月12日にこれを実装したv2.24がリリースされた。ということで結果にはこのSpeed Wayの結果が含まれている。

グラフ16

グラフ17

グラフ18

グラフ19

さて3DMark Score(グラフ16)を見ると、まぁ3Dだから当たり前だが基本それほど性能差が無い。その中で唯一NightRaidのみはCPU性能が比較的大きく出やすいということで差があるが、あとは誤差の範囲であるとして良いかと思う。先にPCMark 10の結果でCore i9-12900Kがやや優勢だったFireStrikeも、結果を見ると確かに微妙にCore i9-12900Kがスコアが上になっている。

Graphics Testの結果(グラフ17)も同じである。興味深いのは、FireStrikeだけでなくFireStrike Extreme/UltraもやはりCore i9-12900Kの方が僅かにスコアが上な事だ。どうもFireStrikeはAlder Lakeの方が相性が良いらしい。

もっともCPU Test(グラフ18)ではFireStrikeであってもCore i9-13900Kが圧倒しているわけで、これはまぁ当然である。ただその組み合わせであるCombined Test(グラフ19)ではまたもやCore i9-12900Kの方が明確にスコアが上(これが恐らくPCMark 10で逆転した主要因だろう)で、こういう相性というのがあり得る事が示されたのは興味深いことである。もう少し他の組み合わせでの結果も見て確認したいところだ。

●ゲームテスト1: Borderlands 3 / F1 22 / Far Cry 6 / Metro Exodus

○◆ Borderlands 3(グラフ20〜26)

Borderlands 3

2K Games

https://borderlands.com/ja-JP/

ベンチマーク方法はこちらのBorderland 3の項目に準ずる。設定は

全体的な品質:ウルトラ

アンチエイリアス:テンポラル

とした。

グラフ20

グラフ21

グラフ22

グラフ23

グラフ24

グラフ25

グラフ26

結果(グラフ20〜22)でも判るように、2K〜2.5KではCPUの性能差が割と顕著であり、2Kでは平均フレームレートが1割以上上がっているあたりは流石である。3K以上はGPUネックのため性能差が無いのはまぁ当然である。

これはフレームレート変動からも明白で、2K(グラフ23)では多少接近している部分もあるが、概してCore i9-13900Kのフレームレートが常に上回っている。2.5K(グラフ24)だと、差があるのは70〜100秒のあたりが一番大きいが、20秒付近でCore i9-12900Kが落ち込んでいる部分がCore i9-13900Kでは落ち込まない、というのも結構地味に性能を示している様に思える。3K/4K(グラフ25・26)はまぁもうフレームレートは同等として良いかと思う。

○◆ F1 22(グラフ27〜33)

F1 22

EA Sports

https://www.ea.com/ja-jp/games/f1/f1-22

ベンチマーク方法はこちらのF1 22の項目に準じる。設定は

Anti Alias:TAA only

Anisotropic Filter:16X

Detail Preset:Ultra High

とし、その他は全てデフォルト設定のままとした。

グラフ27

グラフ28

グラフ29

グラフ30

グラフ31

グラフ32

グラフ33

結果(グラフ27〜29)はもう御覧の通りで、2Kで若干の差はあるものの、基本は変わらず。まぁGPUがボトルネックになっているのが明白である。実際フレームレート変動を見ても、2K(グラフ30)では一応ちょっとあるかな? という差が2.5K(グラフ31)では殆ど無くなり、3K/4K(グラフ32・33)では差が無いに等しくなっている。まぁこれが普通、というべきだろうか。

○◆ Far Cry 6(グラフ34〜40)

Far Cry 6

Ubisoft Entertainment

https://www.ubisoft.com/ja-jp/game/far-cry/far-cry-6

ベンチマーク方法はこちらに準ずる。設定は

Quality:High

Antialias:TAA

DXR Reflections/Shadows On

としている。

グラフ34

グラフ35

グラフ36

グラフ37

グラフ38

グラフ39

グラフ40

結果(グラフ34〜36)を見ると、2.5Kまでは割と明確に性能差があるのが判る。2Kで平均フレームレートで14fps程というのは、無視できない差である。フレームレート変動でもこれは明白で、2K/2.5K(グラフ37・38)では明確にグラフが分離している。3K/4K(グラフ39・40)はGPUがボトルネックになっているためかほぼグラフが1本にまとまっており、逆にGPUの負荷が低い2.5K以下でのCPU性能が明確に示された格好だ。

○◆ Metro Exodus PC:Enhanced Edition(グラフ41〜47)

Metro Exodus PC:Enhanced Edition

4A Games

https://www.metrothegame.com/

ベンチマーク方法はこちらのMetro Exodus Enhanced Editionの項に準じる。設定は

Shading Quality:Ultra

Ray Tracing:High

DLSS:Off

Reflections:Hybrid

Variable Rate Shading:4x

Hairworks/Advanced PhysX:Off

Tesselation:Full

とした。

グラフ41

グラフ42

グラフ43

グラフ44

グラフ45

グラフ46

グラフ47

平均フレームレート(グラフ41)を見るとあまり差が見えないが、最大/最小フレームレート(グラフ42・43)では2K/2.5Kで多少差がある事を示しておる。フレームレート変動を見ると、例えば2K(グラフ44)だと開始〜10秒あたりではそこそこの差があるし、45秒以降を見ても大きな差とは言えないまでもCore i9-13900Kの方が僅かにフレームレートが上であり、基本GPUネックと言いつつも多少はCPUによる性能差がある事が判る。もっともこうした差があるのは2.5Kまでで、3K以降はもう差が無いとして良いレベルではあるが。

●ゲームテスト2: Division 2 / Shadow of the Tomb Raider / Watch Dogs:Legion

○◆ Tom Clancy's The Division 2(グラフ48〜54)

Tom Clancy's The Division 2

Ubisoft

https://www.ubisoft.co.jp/division2/

ベンチマーク方法はこちらの"Tom Clancy's The Division 2"に準ずる。設定は

品質:高

とした。

グラフ48

グラフ49

グラフ50

グラフ51

グラフ52

グラフ53

グラフ54

結果(グラフ48〜50)を見ると、これも2Kのみ性能差が明白である。これはフレームレート変動でも明確で、2K(グラフ51)では2つのグラフが分離しているが、2.5K以上(グラフ52〜54)はグラフが重なっている。他のベンチマーク同様、こと2Kに関してのみ、明確にCPU性能によるメリットがある、という感じである。

○◆ Shadow of the Tomb Raider(グラフ55〜61)

Shadow of the Tomb Raider

SQUARE ENIX

https://tombraider.square-enix-games.com/en-us

ベンチマーク方法はこちらに準じる。設定は

Quality:Highest

Ray Tracing:Off

とした。

グラフ55

グラフ56

グラフ57

グラフ58

グラフ59

グラフ60

グラフ61

結果(グラフ55〜57)を見ると、これも2Kのみで差がある格好で、これはこれまでと変わらない。ただ違うのは差がある場所で、フレームレート変動を見ると2K(グラフ58)で差があるのは70秒以降として良いかと思う。逆にそこまでのフレームレートはそれほど変わらない、というのはGPUボトルネックが解消されるのは70秒以降という話になる。性能としては、このGPUボトルネックが解消したところでCore i9-13900Kのフレームレートは70fpsほど上がっているあたり、明確に性能差はあるとして良いかと思う。

○◆ Watch Dogs:Legion(グラフ62〜68)

Watch Dogs:Legion

Ubisoft

https://www.ubisoft.co.jp/wdlegion/

ベンチマーク方法はこちらの"Watch Dogs:Legion"に準ずる。ちなみに設定は

Quality:Very High

RT Reflection:Off

DLSS:Off

とした。

グラフ62

グラフ63

グラフ64

グラフ65

グラフ66

グラフ67

グラフ68

結果(グラフ62〜64)を見ると、2.5Kあたりまで明確にフレームレートの差が見られるようだ。実際にフレームレート変動を確認すると、2K(グラフ65)ではグラフが明確に分離しており、CPUの性能差がはっきり判る。2.5K(グラフ66)だとだいぶGPUネックの傾向が出てくるが、それでも30秒あたりまでははっきり差が出ており、解像度が上がってもCPU性能の差が効果的な場面がある事が確認できる。3K以上(グラフ67・68)だと差は流石になくなるが。

●RMMT / 消費電力 / 考察

○◆ RMMT 1.1(グラフ69〜70)

RMMT 1.1

Rightmark.org

http://cpu.rightmark.org/products/rmma.shtml

グラフ69

グラフ70

今回もRMMTのみ。DDR5-5600の効果は絶大で、Read(グラフ69)で90GB/sec、Write(グラフ70)でも47GB/secもの帯域が確保されており、これが性能の底上げに貢献している事は間違いない。強いて苦言を呈するとすれば、定格(つまりOC無し)でDDR5-5600を達成できるメモリがまだ市場に出回っていない事だろうか? 2023年中に出てくるか? というと個人的には微妙な気がする(DDR5-5200は何とかなりそうだが)。OCメモリ前提で定格をDDR5-5600、というのはどうだろうという気がするのだが。

○◆ 消費電力測定(グラフ71〜78)

最後に消費電力測定を。グラフ71がSandraのDhrystone/Whetstone実施中、グラフ72がCineBench R23(All CPUとOne CPUの両方)、グラフ73がTMPGEnc Vide Mastering Works 7で4streamのX.265エンコードの最初の180秒、グラフ74がLinpack(Size/LDA=60000の条件で繰り返し1回)、グラフ75が3DMark FireStrike、グラフ76がMetro Exodus Enhanced Editionの、やはり2Kでのベンチマークの実効消費電力変動を示したものである。グラフ77がそれぞれの平均消費電力(と一部ピーク時消費電力)、それと待機時の消費電力をまとめたもの、グラフ78が個々の消費電力と待機時との差をまとめたものである。

グラフ71

グラフ72

グラフ73

グラフ74

グラフ75

グラフ76

まずグラフ71〜76を見て頂くと判るが、Core i9-13900KはCore i9-12900Kと比べて間違いなく消費電力が増している。これまでCPU Benchmark(SandraのDhrystone/WhetstoneとかCineBench)で400Wを超えるのは稀だったし、TMPGEnc Video Mastering Works 7の様に全コア+DRAMフル駆動のアプリケーションでも500Wを超える事はなかった。実際TMPGEnc Video Mastering Works 7において、Core i9-12900Kだと、PL2の時でも450W程度でしかない。ところがCore i9-13900Kだと550Wほど。GPUを使わないのに100Wの上乗せはかなり大きい。Linpackでも同じで、Core i9-13900KはCore i9-12900Kに100W程度の上乗せがある。要するに「性能はあがるが消費電力もかなり増える」である。CPU負荷の少ない3DMark FireStrike Demoではそれほど差はない(とは言えちょくちょく600Wに達している)が、CPU負荷の増えるMetro Exodusでは650Wを超えている。マルチGPUとかならともかく、GPU 1枚とSingle CPUでこれは結構な電力食いである。

グラフ77

グラフ78

この傾向は平均消費電力(グラフ77)や平均消費電力差(グラフ78)を見るとより明確である。性能向上は上がったが、消費電力が増えた分で打ち消している感もある。例えばDhrystone/Whetstoneの効率(性能/消費電力比)を計算したものを表2に、Linpackの効率と消費電力量を計算したものを表3に示す。まずDhrystone/Whetstoneでは、WhetstoneこそCore i9-13900Kの方が少し効率が良いが、逆にDhrystoneではCore i9-12900Kの方が効率が良くなっている。これはLinpackも同じで、効率はCore i9-12900Kの方が良好である。だから電力量、つまりLinpackでSize/LDA=60000の計算を完了するまでの消費電力×時間は当然Core i9-12900Kの方が少なくなる。純粋に処理時間だけを見れば勿論Core i9-13900Kの方が高速だが、その分電気代は上がるという訳だ。時間を取るか、電気代を取るかでどちらが優秀かの判断が切り替わる訳だ。

○考察

今回はPreviewであるが、おおよそRaptor Lakeの基本的な性格は示す事が出来たと思う。要するに

性能はAlder Lakeから大幅増

それを埋めるほどに消費電力も相当に激増

である。Ryzen 7000シリーズのレポートの最後で、「消費電力盛り盛りのX付より、この後登場するであろう65W/105WのXなしSKUの方が、ずっと幸せになれそうな気がするのは気のせいだろうか?」と書いたが、まさかRaptor Lakeがこれと似たような、というより更に電力増の傾向になるとは(E-Coreをフルにブン回すようにした時点で消費電力が増える事は想像していたが)想像していなかった。

性能は確かに上がるし、これから冬を迎える訳で、熱にも気兼ねせず計算をブン回したいという人にはすごく良さげな製品に仕上がったというのは、別に皮肉でも何でもない(実際筆者の仕事部屋、気温が下がってベンチマーク中の発熱問題がわりとマシになった)。何というか、もう性能を引き上げるためには消費電力を上げるしかないという現在の半導体事情を物語る製品が、IntelとAMDの両社から出てくる辺りに、現状の限界の近さを感じている。何かの救いが、今後出てくると良いのだが。