家づくりでは、素材や設備の選び方によって、その後の暮らしの快適さに大きく差が出てきます。意外とスルーしてしまいがちなのが、外壁&屋根材。選ぶときにチェックしておきたい6つのポイントと、その種類、特徴を編集部が解説します。監修は、一級建築士の玉木直人さんです。

外壁&屋根材を選ぶとき気をつけるべきことは6つ

1.デザイン性

外壁材を選ぶときに、いちばん気になるのがデザイン性ではないでしょうか。外壁材は外観上大きな面積を占めるため、全体のイメージを決定づける重要なファクターです。また、一度完成した外壁材を交換するには多大なコストがかかります。

デザインや色調は、建主の好みだけでなく周囲の環境も考慮することが大切です。一方屋根材は普段見える場所ではありませんが、家全体のイメージや外壁と合わせたデザインを選びましょう。

 

2.経済性

経済性、つまりコストを考えるときに忘れてはならないのが、施工費用だけでなくメンテナンスフィーも考えておくべきということ。たとえばタイルはほかの外壁材に比べて施工時のコストがかさみますが、メンテナンスフィーは低く抑えられます。これは屋根材にも同じことが言えます。

設計者や工務店にそれぞれの素材のコストや耐久性、メンナンスの頻度などをよく聞き、建設場所の気候特性なども勘案することが大切です。

 

3.断熱性

一般的には壁内に施工する断熱材によって断熱性をコントロールしますが、外気と接する外壁材を断熱性の高いものにすることでも断熱性能の向上が可能です。

外壁材を断熱性が高い順に並べてみると、金属系サイディング(断熱材一体型)、木質系サイディング、窯業系サイディング、モルタル(塗り壁)となります。一方屋根材は、断熱性に大きな違いがなく、屋根裏の通気層と断熱材の充実が断熱性アップのポイントです。

 

4.遮音性

とくに都市の住居では遮音性は住み心地を大きく左右する要因となります。気泡を多く含むALC板は素材自体が高い遮音性を持っています。

また、一見すると音を通しそうな属系の外壁材や屋根材は、断熱材と一体型になっている製品を選べば高い遮音性を発揮。雨の音も吸収してくれます。

窯業系や木質系のサイディングはほぼ同等の遮音レベル。モルタルの塗り壁は、素材自体特に遮音性に優れるわけではないので、壁内の断熱材次第です。

 

5.耐久性

住まいの外殻にあたる外壁と屋根の耐久性は、住まいそのものの耐久性に直結します。ですから高耐久な素材選びをしたいのですが、これは建築後のメンテナンスに大きく左右されます。たとえば現在外壁材の主流を占めるサイディングは、金属系、窯業系、木質系を問わずメンテナンスを行うことが前提で、これは屋根材も同様です。

どちらも水洗いや再塗装などのメンテナンスを定期的に施すことで、本来の耐久性を発揮します。

 

6. 防水性

住まいを守る機能として最も大切なのは防水性です。現代の外壁や屋根材はおよそどれを選んでも、防水性はきちんと担保されています。問題は経年劣化。継ぎ目のシール材の劣化や金属系素材のさびによる穴、木質系素材の腐朽などを原因に雨が浸透して、内部の構造材を腐食させることがあります。

クルマに車検があるように、住まいも定期的な点検を受けてメンテナンスを施すことが、快適な住まいを長持ちさせる唯一のコツです。

タイル、サイディング…押さえておきたい外装材のメリット・デメリット

外壁材の種類は多種多様です。ここでは素材ごとに大まかに5つ紹介しますが、これ以外にもALC板やコンクリート打ち放しなどがあり、それぞれに長所、短所があります。それを理解したうえで外壁素材を選ぶことが後悔しない家づくりにつながります。

 

●タイル

高級感のある外観がタイル外壁の身上。メリットは見た目だけではありません。汚れやキズに強いタイルはメンテナンスの間隔が他の外壁材よりも長く、ランニングコストが抑えられます。

もちろん耐久性も抜群。的確なメンテナンスで数十年後も美しい外観が保てるでしょう。問題は初期コストですが、トータルで見れば、決して高価ではありません。

 

●金属製サイディング

表面に意匠が施された金属板に断熱効果のある裏打ち材で構成された外壁材。工業製品ならではの均一な仕上がりと、素材の軽さが大きな特徴です。

標準化された施工方法があり、工期の短縮が図れるほか、素材特性として表面のひび割れや凍害の心配がありません。また、定期的に清掃すれば寿命が延び、再塗装などのメンテナンスもほとんど不要です。

 

●窯業系サイディング

もっともポピュラーな外壁材。主にセメントに繊維質を混ぜて板状に加工し、外壁材にしたものです。

デザインの自由度が大きく、カラーバリエーションも豊富。一見タイルやレンガ張りと見間違うような製品も多くあります。他の外壁材と比べて初期費用を低く抑えられ、施工期間も短縮できます。耐火性が高いのも大きなメリットといえるでしょう。

 

●木質系サイディング

無垢の木材の表面を加工して耐火性、防水性などの機能を加えた外壁材。現在では金属や窯業などのサイディングに取って代わられ、日本ではあまり使われなくなっています。

しかし木材が本来持っている断熱性の高さや、自然素材ならではの質感の高さ、高級感から根強い人気があります。水分による腐朽を防ぐために、定期的なメンテナンスが大切です。

 

●左官仕上げ

塗り壁はモルタルを下地にして、塗装や塗り方によって模様をつける外壁仕上げの手法です。色もデザインも自由自在。表面の仕上げ材も下地のモルタルも不燃材となるため、防火性に優れます。ひび割れやすく汚れやカビに弱く、メンテナンスの手間がかかるのがデメリットですが、表面コートなどのセルフクリーニング機能も充実。機能的に改善されてきました。

 

「私は有機的なものが好きなので、手がけた住宅の外装は8割くらいが左官仕上げです。外壁には奇抜なものは使わずに、色調も周囲に調和するようなものがいいと思います。同じ敷地に棟を分けて建物を設計するような場合には、母屋は左官仕上げでも別棟はガルバリウムの外壁にするなど、正反対の特性をもつ素材でメリハリをつけることもあります」(玉木さん)。


押さえておきたい屋根材。種類とメリット・デメリット

●金属系

金属系屋根材の最大のメリットはその軽さです。屋根が軽ければ建物の重心は低く抑えられ、地震や風に対する耐力が向上します。地震国の日本においては非常に重要な要因といえるでしょう。金属系の屋根材にはガルバリウム、ジンカリウム、トタンが一般的。耐久性では石粒などが表面にコーティングされたジンカリウムが優位となります。

 

●窯業系

窯業系屋根材は、大別すると粘土系の瓦とセメントを素材としたスレートがあります。粘土を成型して釉薬をかけ、高温で焼成した粘土瓦は日本建築でおなじみです。重量があり構造上は不利ですが、「焼きもの」なので塗装によるメンテナンスは不要。一方スレートはセメントに合成繊維を混ぜて薄い板状にしたもの。軽量ですが、メンテナンスは必要です。

「私の場合、屋根に関しては、地震を考えて軽量な部材を用いることがほとんどです。窯業系の屋根材は重厚な外観が魅力的。最近は軽量なものも増えています」(玉木さん)。

 

●その他

そのほかの屋根材として一般的なのは、グラスファイバーなどにアスファルトを塗装し、表面を石粒でコートしたアスファルトシングル、屋上が平らな陸屋根に用いられる防水仕上げなどです。

軽量で耐久性に優れたアスファルトシングルは比較的安価なのが特徴。防水仕上げの陸屋根はメンテナンスが容易で、屋上としても利用できるのが特徴です。

 

教えてくれた人:玉木直人さん

一級建築士。1964年、岐阜県生まれ。GA設計事務所を主宰。東海地方を中心に活躍する建築家。敷地条件を生かし、建主の要望を実現する設計力には定評がある。とくに庭や緑を取り込むコートハウス、アウトドアリビングのある家にはファンが多い