駅舎も入口もなし!?「ほぼバス停な終着駅」移転で消滅間近 熊電「御代志駅」新駅の姿は
熊本電気鉄道の終着駅・御代志駅がまもなく移転されます。小さなホームが一つあり、反対側はバスのりばとなっていた簡素な終着駅は、駅舎を備えた近代的な駅に生まれ変わります。
昭和情緒を醸し出す簡素な駅
バスロータリーの片隅に小さなプラットホームと屋根。そこに、東京の地下鉄でかつて走っていた電車が、ゆっくりとやって来る――一見すると「バス停」という印象の不思議な終着駅が、熊本にあります。
熊本電気鉄道の終着駅、御代志駅。バス停と一体化している(乗りものニュース編集部撮影)。
熊本市中心部から北の郊外へ伸びる、熊本電気鉄道。その終着、御代志駅の「駅舎もない簡素な終着駅」の風景が、まもなく見納めとなります。
御代志駅が終着駅となったのは1986(昭和61)年。かつて13.5km先の菊池駅まであった菊池線が一部廃止となったためです。もともとひとつの中間駅にすぎなかった御代志駅は「ターミナル駅」となり、同時にバスロータリーの工事が行われ、バス停標もホーム上に設置されて「電車とバスが同じホームから発着する」今の形になりました。
元東京メトロ銀座線の01形や、日比谷線の03形など、懐かしの電車が、トコトコとやってきては、折り返していきます。乗客はホームの思い思いの位置から地面に降り、駐車場や交差点へ向かっていきます。バスに乗り換える客はホームにとどまり、ベンチに座ってバスを待ちます。駅という空間を忘れるかのように街へ溶け込んだホームには、広告看板のほか「御代志駅のりば」「藤崎宮前まで26分」といった案内板が残され、かろうじて鉄路の「旅情」を醸しだしています。
この御代志駅が、約200m南側へ移設され、新たな駅舎とホームになって生まれ変わります。2018年にスタートした、合志市の土地区画整理事業によるものです。
本事業では御代志駅の交通結節機能向上を図るとともに、開発地に商業施設を誘致するなど、駅を中心としたまちづくりを行うとしています。
広場の隅に線路1本があるだけだった駅は、将来的に2本が発着できる頭端式ホームとなるほか、駅舎も新設され、さらに駅員窓口も設置。近代的な「駅らしい」姿になります。
この新駅は、10月頃に運用開始となっています。
見えてきた新駅、元都営の車両もすでに待機!
さて、新たな御代志駅は、すでにほぼ完成段階。現在は、国道からアクセスする駅前ロータリーの工事が着々と進められていました。構造は1面2線の島式ホームですが、線路と路盤はまだ1本分しか敷かれておらず、この暫定形でひとまず開業を迎えると思われます。
ホームには、かつて都営三田線で走っていた6000形2両編成が“停車中”。新線では、8月末からすでに試運転が開始されています。
この工事では、隣の再春医療センター前駅のさらに熊本側から分岐する形で、新線が敷設されます。再春医療センター前駅もあわせて新ルート上に移設され、すでにホームが姿を現しています。
熊本電気鉄道は、「青ガエル」と呼ばれた元東急5000系がかつて在籍し、戦後すぐの佇まいを残す北熊本駅の駅舎や、今では珍しい、路面電車ではなく一般の電車が「併用軌道」として道路敷を走るなど、「昔の鉄道の姿」を色濃く残す存在として、愛されてきました。その風景のひとつが、まもなく姿を消すことになりそうです。