撮り鉄が原因? “開かず”になった広電の踏切に物議 なぜ電車の停車中に閉まり続けたのか
広島電鉄宮島線で、駅に停車中の電車にカメラを持った人が集まり、その傍らで踏切が閉まり続ける事象が起こりました。踏切前で足止めされた通行人が疑問を呈し、SNSで物議を醸しましたが、なぜ踏切は開かなかったのでしょうか。
撮影会ではなかった
広島電鉄が2022年8月29日(月)、「8/28の貸切電車運行における草津駅長時間停車により踏切を遮断した件について(お詫び)」と題してSNSで謝罪しました。事の発端は、貸切電車が草津駅(広島市西区)に長時間停車したために至近の踏切も閉まり続け、しばらく足止めされた通行人がその対応に疑問を呈したというものです。
そして停車中の貸切電車の脇では、カメラを持った人がその車両を撮影する様子が見受けられました。端から見れば、「撮り鉄が車両を撮影できるよう、鉄道会社が電車を止めている」とも捉えられ、この点についても「踏切を閉めてまでやることか」と物議を醸しました。
広島電鉄宮島線(画像:写真AC)。
これに対し広島電鉄は、冒頭で触れた通り謝意を表明し、原因を「草津駅から貸切電車に乗車予定のお客様が予定の時刻に駅ホームにおられず、その確認等のため4分程度要したものです」としました。また「草津駅で今回のような撮影をされる旨は把握しておりませんでした」ともしています。
実情は、乗客を確認するため停車していたあいだに、ほかの乗客が撮影を始めてしまったというもの。同社は「今後は、貸切運行のご乗車予定時刻・場所について、改めて入念に確認していくとともに、事前計画にない乗降者の有無など、発車の遅れが生じないように努めます」としています。
なぜ停車する電車の前で踏切は閉まり続けたのか
ところで、踏切はなぜ閉まり続けたのでしょうか。電車が駅に停車中で、発車まで時間があるならば、開けてもよさそうです。今回の対応は「鉄道に関する技術上の基準を定める省令」に根拠があります。
同省令第62条の踏切に関する規定には「踏切保安設備は、踏切道通行人等及び列車等の運転の安全が図られるよう、踏切道通行人等に列車等の接近を知らせることができ、かつ、踏切道の通行を遮断することができるものでなければならない」とあり、踏切が閉まるタイミングについても定められています。内容は以下の通りです。
川崎市内のJR南武線 向河原駅近くでは「賢い踏切」の導入が予定されている(画像:JR東日本 横浜支社)。
「遮断動作の終了から列車等の到達までの時間は、20秒を標準とすること。この場合において、当該時間は、15秒以上であること」
つまり広島電鉄の電車も通常、踏切が閉まってから最短15秒後には通過するわけです。ただし駅の至近に踏切がある場合は、この秒数は長めに設定されます。
理由は最悪のケース、「オーバーラン」を想定しているため。万一列車が駅で止まり切れなかった場合、停車を前提にした時間設定では踏切は閉まっておらず、横断者などとの衝突事故が起きかねません。その意味では、今回の件において踏切設備は通常通り動作したといえます。
しかし交通量の多い都市部では、この動作が交通渋滞を招くことも多々あります。近年は「賢い踏切」に代表されるように、踏切を通過する列車の種別を判断し、例えば駅に停車する普通列車ならば通過直前まで踏切を開けるといったシステムを組むなど、対策がなされています。