新造船「さんふらわあ むらさき」進水 日本初の“LNG燃料フェリー”2隻体制に デカいぞ!
日本初となるLNG燃料の旅客フェリーの2番船「さんふらわあ むらさき」が進水。先にデビューする「さんふらわあ くれない」とあわせて2隻体制となります。新世代フェリーの乗り心地を体験できる日は、まもなくです。
LNGフェリー2番船「さんふらわあ むらさき」
三菱重工業グループの三菱造船は2022年8月30日、三菱重工下関造船所で、商船三井が発注した国内2番目のLNG(液化天然ガス)燃料フェリー「さんふらわあ むらさき」(1万7300総トン)の命名・進水式を開催しました。同船は2023年3月に三菱造船から引き渡しを受けた後、1番船の「さんふらわあ くれない」と共に、商船三井グループの「フェリーさんふらわあ」が用船し、大阪〜別府航路で営業航海を始める予定です。
進水した「さんふらわあ むらさき」(深水千翔撮影)。
海事産業全体で課題となっている環境負荷の低減を図るため、主機関としてLNGとA重油を燃料として使用できる高性能二元エンジンを採用。CO2(二酸化炭素)の排出量を従来比で20%削減し、SOx(硫黄酸化物)の排出量も大きく削減しています。
新造船「さんふらわあ むらさき」は、1998年に就航した「さんふらわあ こばると」(9245総トン)の代替船として計画されました。進水式では商船三井の池田潤一郎会長が命名し、パラアスリートの中西麻耶さんが支綱の切断を行いました。
既存船の約1.9倍!? 一気に大型化
船体の大きさは約1.9倍となる1万7300総トン。全長も199.9mと、既存船153mから大幅に長くなりました。積載能力は大型トラック(13m)換算で92台から約137台まで増強。乗用車も約100台を載せることができます。ドライバーズルームも拡充しモーダルシフトへの対応を促進しました。
内装面積は4950平方メートルから8300平方メートルと広くなる一方、旅客定員は716人に抑えられています。そのぶん、客室は個室を中心とし、定員1人当たりの面積は6.9 平方メートルから10.9 平方メートルへと拡大しました。最上階の8階にはクルーズ船並みのバルコニー付きスイートフロアを設置しています。展望大浴場の面積は現行船の2倍、レストランの席数も1.5倍となり、3層吹き抜けのアトリウムをはじめ、移動手段としてのフェリーに客船の要素を取り入れることで、船旅そのものを楽しむことができるようにしました。
客船「にっぽん丸」の改装で内装デザインを手がけた渡辺友之氏を起用しており、フェリーさんふらわあが目指すカジュアルクルーズの空間を創造していくとのことです。
LNG燃料化は「今すぐ実現可能な取り組み」
主機関は欧州舶用メーカーのバルチラが開発したLNG焚き4ストロークエンジン「バルチラ31DF」を、発電機はヤンマーパワーテクノロジーの船舶用DFエンジン「8EY26LDF」を搭載します。バルチラはエンジンに加えて、減速機、LNGPacストレージ(燃料貯蔵・供給・制御システム)で構成されたLNGパッケージも供給しています。
商船三井グループは2050年までにネットゼロ・エミッションを達成することを目指し、次世代燃料の積極的な導入を掲げています。このうちLNG燃料は従来の重油焚き船と比べ25〜30%のGHG(温室効果ガス)削減効果があることから「今すぐ実現可能な取り組み」と位置づけて、外航・内航問わずLNG燃料船の整備を進めており、「さんふらわあ くれない」「さんふらわあ むらさき」もその一環です。
同社は三菱重工下関造船所で建造している2隻に続き、商船三井フェリーが運航する大洗〜苫小牧航路にもLNG燃料フェリー2隻を投入することを決めており、2021年に内海造船へ発注しています。
大阪〜別府航路のLNG燃料フェリー1番船となる「さんふらわあ くれない」は2023年1月の就航を予定しています。新世代のフェリーの乗り心地を体験できる日も近づいています。