『キングダム2 遥かなる大地へ』より山崎賢人演じる信
 - (C) 原泰久/集英社 (C) 2022映画「キングダム」製作委員会

写真拡大

 原泰久の人気漫画を映画化した2019年のヒット作の続編『キングダム2 遥かなる大地へ』(公開中)。紀元前の中国春秋戦国時代が舞台の物語を壮大なスケールで実写化した本作の見どころの一つが、主演の山崎賢人自身が演じた迫力のアクション。その全アクションシーンにおいて、指導から演出、編集まですべてに携わっているアクション監督の下村勇二が、山崎のアクションの魅力を語った(※山崎賢人の崎はたつさきが正式表記)。

 本シリーズはじめ『GANTZ』『図書館戦争』シリーズなど多数の作品で佐藤信介監督と組み、前作『キングダム』でもアクション監督を務めた下村。天下の大将軍を目指す戦災孤児の信(山崎)が、後に始皇帝となる秦国の若き王・エイ政(吉沢亮)の玉座奪還を手助けした前作では1対1の戦いが多かった。対して、信が初陣に臨む続編では、騎馬戦や戦車との戦いなども交えた大勢の敵兵との合戦シーンがメインとなる。ともすると血生臭くなりかねないが、幅広い層が楽しめるようにユーモアも意識したという。

 「前作の時から賢人くんにも伝えていたのが、例えば『るろうに剣心』の主人公・剣心がブルース・リーだとしたら、『キングダム』の信はジャッキー・チェンのイメージだと。ただ強いだけではなく、ユーモアがある。必死だからこそ、不恰好が格好良く見える。何度倒れても立ち向かうような精神だったり、ただ敵を斬り倒すのではなく、アクロバティックな見せ場だったり、場所やモノを活かすような動きも取り入れたアクションです。ただ、パート2の主な舞台は蛇甘(だかん)平原という平地なので、そこでどうやって立体的な動きをつけられるのか、カメラワークも含めて試行錯誤しました」

 パート2の信については「信の戦い方はある意味無謀ともいえますが、初陣なので刀の技術云々というより、動物的、野性的な本能だけで立ち向かっていくような躍動感がある動き」も意識した。そのため、山崎とは前作と同様、クランクイン前から時間をかけて地道なトレーニングを行った。

 「筋トレ、柔軟運動、瞬発力、跳躍力など、基礎的な体力強化の他、受け身やアクロバット、パンチや蹴りなど、あらゆる動きを体得してもらい、信というキャラクターを表現するために必要なベースとなる体づくりを徹底的に行いました。技術を見せるよりも、本人の熱量が伝わる、本人にしか出来ないアクションにしたかったので、危険すぎるところ以外はなるべく本人に演じていただいています」

 実際に劇中の山崎は、原作漫画から飛び出してきたかのような、まさに信そのものという野性的な強さを体現しているが、下村によると「賢人くんは身体能力がめちゃめちゃ高い。跳躍力もすごくて、肉体的なポテンシャルが高いといえる。その一方で、不器用な部分があり、決められた段取り的な動きはあまり得意ではない」そうで、そんなところも野性的な直観で動く信とシンクロする。

 「賢人くんは僕たちの想像を超える動きを見せてくれる時があります。あえて立ち回りを事前にざっくり覚えてもらう形にして、あとは現場で動きながら流れを掴んでもらう方法も行いました。段取りっぽくなった場合は、賢人くんに内緒で相手役にタイミングをずらすよう指示すると、こちらが思ってもみないような反応で躍動感ある動きが生まれる。どんな動きにも対応できる体づくりができているし、彼ならやってくれるという信頼関係があるからこそできることですね」

 山崎の見せ場については、まず「王宮内での対(暗殺者の)朱凶戦」を挙げる下村。信がアクロバティックなアクションを見せるシーンだが、細かい離れ技が多く盛り込まれているという。「冒頭ですから、信の成長した姿と共に、戦いの中でキャラクターを表現したいなと。そのため、ちょっと余裕のある感じも見せているし、側転して避けたり、飛びながら股下で剣を持ち換えて振り下ろしたり。ジグザグに動き回って相手を翻弄(ほんろう)しているうちに倒してしまう。こんな戦い方は信ならではで、エイ政などのキャラクターはやらないと思うんです」とのこと。

 そして、個人的に好きなシーンは「蛇甘平原の初陣で信が先駆けするところ」。「現場で見ていても『始まった!』という感じがしたし、見る人を引き付ける力があって、すごいなと。賢人くんが信として走ることによって生まれた躍動感がある。走るだけでも伝わってくるものがあるんだなと熱くなりました」と振り返る。他にも、本作で山崎は乗馬をマスターしており「馬に乗っていても躍動感がある。馬と一体になっているような感じは、これまであまり見たことがないし、他の役者さんには出せない味があります」と山崎の魅力を語る言葉は尽きない様子だった。(取材・文:天本伸一郎)