一度目にしたら忘れられない、長楕円(だえん)型の斬新なデザインの講堂棟を持つ中高校舎

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女性の自立のため大正から昭和にかけて設立され、1世紀前後の歴史を刻む私立の女子一貫校は数多い。創立者の理念を現在も大切にしながら、進学校化を進めてきた洗足学園には、「挑戦」する意気込みが脈々と受け継がれてきた。それが「他流試合」として、さまざまな場所で現在も発揮されている。(ダイヤモンド社教育情報、撮影/平野晋子)

宮阪元子(みやさか・もとこ)
洗足学園中学校・高等学校校長

横浜市生まれ。早稲田大学卒業後、女子高の教員を経て、1997年、洗足学園の国語科教諭に。教頭、副校長を経て、2017年から現職。

創立者の思いが詰まった三つの柱

――創立した頃には東京にあって、地名の「洗足」は日蓮ゆかりですが、校名はキリスト教由来と記憶しておりますが。

宮阪 戦後、現在の校地に移転しました。もうすぐ創立100周年になります。1924年に創立者の自宅に私塾として立ち上がり、その2年後に東京の目黒区洗足で洗足高等女学校として設立されています。

  敬虔(けいけん)なクリスチャンでいらした創立者の前田若尾先生は、校名を聖書からいただき「洗足」と定めました。キリストが最後の晩餐の前夜、使徒たちの足を洗い清められ「主であり、また教師である私があなたがたの足を洗ったからには、あなたがたもまた互いに足を洗わなければならない」(新約聖書ヨハネによる福音書第13章)と教え諭された一節があります。この教えにこめられた「奉仕」の精神を養い、社会貢献に取り組むことを洗足学園の理想としました。

  ですから、洗足学園はキリスト教の学校ではありませんが、奉仕の精神をとても大切にしています。入学式では、前田若尾先生が通っていた霊南坂協会(港区赤坂)の牧師様に、校名の由来をお話しいただきます。

――建学の精神は「謙愛」(謙虚にして慈愛に満ちた心を持ち、社会に奉仕貢献できる人材)ですが、教育方針はどのようなものでしょう。

宮阪 教育の柱は3本あります。幼稚園から大学院まで、園児、児童、生徒、学生、総数5000人を超える洗足学園のどの学校も柱にしているものです。

 女性の自立を支える教育の必要性を感じて設立された学校ですので、一つ目の柱が「自立」です。戦災に遭って東京の校舎が焼失したあと、現在の校地に移ってからも続けられてきた「挑戦」が二つ目の柱です。そして三つ目が、前田若尾先生が大切にしていたキリスト教の「奉仕」の精神です。

――そうしたバックボーンがあって、子どもたちを鍛えていかれたわけですね。

宮阪  前田若尾先生は、「理想高遠 実行卑近」という実践標語も掲げました。理想を高く持って、その実行に際しては、手を動かし足を使って、身近なところから実行していきましょうという教えです。

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