「歯茎が黒い」原因はご存知ですか?医師が徹底解説!

写真拡大

歯磨きをしているのに歯茎が黒くなってしまうのは、何が原因なのでしょうか?Medical DOC監修医が考えられる原因や病気・日常でできる予防法や対処法などを解説します。気になる症状は迷わず病院に相談してください。

監修歯科医師:
上之郷 奈菜 歯科医師

2019年九州大学歯学部卒業
2020年東京医科歯科大学病院臨床研修医修了
神奈川県開業医にて勤務後、
愛知県医療法人正翔会
岡崎エルエル歯科・矯正歯科
葵デンタルデザインオフィス
名古屋みなみ歯科・矯正歯科に勤務中

「歯茎が黒い」症状の対処法と考えられる原因・病気

健康な歯茎はピンク色ですが、歯磨きのときなど鏡でよく見ると歯茎が黒くなっている場合があります。原因はいくつか考えられ、なかには治療が必要なケースもあるのです。なぜ歯茎が黒くなるのか、治す方法があるのかなどを解説していきます。

歯茎が黒い症状で考えられる原因と対処法

歯茎が黒くて笑った時に気になるという声を聞くことがありますが、生まれつきのこともあります。歯茎の色も個性があるのです。人と比較するのではなく、健康であればあまり気にしなくていいという考え方もあります。まずは歯科医院で原因を調べましょう。歯茎の色が黒いという悩みは、治療で解決することもあります。
歯茎の色は、主に血管の数や太さ、上皮の厚さや色素、角化の程度によって決まります。メラニンなどの色素沈着は歯肉の色に影響を与えています。外因的な因子としては金属や粘膜の病気、タバコなどがあります。また、消化管の病気であるポイツジェガース症候群(Peutz-Jeghers症候群)や、副腎機能の低下によるアジソン病(Addison病)、神経線維種を特徴とするレックリングハウゼン病(von Recklinghausen病)、内分泌疾患をともなうマッキューンオルブライト症候群(McCune-Albright症候群)などで、歯茎の色素沈着が起きることがあります。

歯茎が黒く、痛い症状で考えられる原因と対処法

歯茎が黒くて痛い症状がある場合、歯周病などの炎症があることが考えられます。歯茎が腫れて膿があるときなど、はっきり黒いというよりも赤黒く見えるということがあります。歯周病は歯磨きや歯石除去などで予防することができますが、進行した場合は歯科医院での治療が必要になります。急性的な炎症が進むと顔が腫れたり、お口が開きにくいなど強い症状が出ることがあります。抗菌薬の投与や切開・排膿などの処置を要することがあるので、早めに歯科を受診しましょう。

生まれつき歯茎が黒い症状で考えられる原因と対処法

生まれつき歯茎が黒い原因には、メラニン沈着が考えられます。個性として気にしないことも大切ですが、はずかしくて自然な笑顔になれないという方のために審美歯科で治療が行われています。治療の方法にはいくつかあります。レーザー治療はメラニンに吸収される波長で他のところには影響を与えずに色素細胞を破壊します。また、メスによって手術でとる方法も広く行われています。他にも凍結させる方法などがあります。いずれの方法も再発することがあるので、よく説明を受けましょう。

歯茎と歯の境目が黒い症状で考えられる原因と対処法

歯のつけねの歯茎が黒く見える原因には、メタルタトゥーという現象が考えられます。歯のかぶせ物や差し歯の土台(コア・ポスト)に使われている金属が溶解して、歯肉にいれずみのような黒い色となってしまうものです。これは使われている金属がゴールドなどの貴金属ではおこりにくく、いわゆる銀歯などの溶けやすい金属のときにみられます。
治療は、レーザーや外科処置で歯茎の黒い色素を取り除くことが一般的です。その後、原因となっている金属を取り除き、土台であればファイバーポストやレジンコアなどの金属以外の材料に置き換えることで再発を防ぎます。注意点としては保険治療で使える材料に制限があるため、自費治療になる場合があります。治療の方法や費用について受診した時に十分相談してください。

差し歯の根本(歯茎)が黒い症状で考えられる原因と対処法

かぶせた差し歯の根元の歯茎が黒く見える原因にはいくつか考えられます。金属を使ったかぶせ物ではメタルタトゥーのほか、根元の色が透けて見えることがあります。原因になっている金属を取り除き、ジルコニアやセラミック、CAD/CAMなどメタルフリーの治療ができるか歯科医師に相談してください。
また、神経(歯髄)が生きていない歯(失活歯)は褐色になり、歯との境目の歯茎が黒く見えることがあります。インプラントが入っている部分の歯肉が薄いと黒っぽく見えるケースもあるでしょう。同様に歯の根にできた虫歯(根面カリエス)の黒い色が透けていることも考えられます。根面カリエスは内部でさらに進行する前に治療をおすすめします。緊急性はありませんが歯科医院で原因を確認し、必要な治療を受けましょう。

すぐに病院へ行くべき「歯茎が黒い」に関する症状

ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。

歯茎以外にも口の中に黒色が多く見られる場合は、歯科・口腔外科へ

歯茎が黒い症状で注意が必要なのはメラノーマです。比較的まれですが、皮膚にできる悪性黒色腫がお口の中にできることがあります。黒褐色に着色した腫瘤でさまざまな大きさや形があり、着色がはっきりしないこともあります。ホクロ(色素性母斑)などとの鑑別が必要になりますが、予後が悪い(悪くなる可能性が高い)疾患です。また、疑わしい場合も安易に生検(生体検査)をすると広がってしまうことがあるため、慎重に精査する必要があります。早期発見・早期治療のためにも日頃から定期検診をおすすめします。

「歯茎が黒い」に関する症状が特徴的な病気・疾患

ここではMedical DOC監修医が、「歯茎が黒い」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。

メラニン沈着

歯茎の黒ずみとして多いメラニン沈着は、笑顔になりにくいなどの心理的な問題につながることがあります。個性として気にしないという考え方もありますが、審美的な治療として除去することができます。レーザーや外科的除去などの方法があります。気になるようであれば悩む前に歯科医院を受診しましょう。再発する場合もあるのでよく相談してください。

メタルタトゥー

歯科治療で金属を使ったときに、歯茎にいれずみのような色がつくことがあります。レーザーや手術で色素を除去することができます。その後、ファイバーポストやレジン、セラミックなど金属以外の治療で治すことで再発を防ぐことが一般的です。気になるようであれば歯科で相談するとよいでしょう。

歯周病

炎症によって腫れて歯茎が赤黒く見えることがあります。歯周病は細菌によって引き起こされ、歯を失う原因になり、全身にも影響する病気です。歯茎が変だと思ったら、早めに歯科医院を受診しましょう。歯周病の検査をし、状況によって治療の内容が決まります。急性的な症状が出ていれば抗菌薬の投与や切開・排膿、重症であれば抜歯が必要になることがあります。歯磨き指導を受けることや歯石を取る治療などで改善が見込めます。日頃から定期的に歯科検診を受けることをおすすめします。

「歯茎が黒い」症状の正しい対処法・気をつけたい処置方法は?

歯茎が黒いのはブラッシングや歯磨き粉では取れません。虫歯予防の観点では、歯茎に近い根面カリエスに効果があるフッ化物入りの歯磨剤でブラッシングをすることは有効です。金属を使った治療によるメタルタトゥーを防ぐために、メタルフリーの治療を検討してもよいでしょう。タバコは歯茎が黒くなる原因にもなるので、禁煙をおすすめします。

「歯茎が黒い」についてよくある質問

ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「歯茎が黒い」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

歯茎が黒い場合、歯医者ではどのような治療をするのでしょうか?

上之郷 奈菜 歯科医師

メラニン沈着などの原因にはレーザーや外科的処置などを行います。

歯と歯茎の境目が黒いのですが、自宅でも治せますか?

上之郷 奈菜 歯科医師

自宅では治せません。歯科で相談しましょう。

若年層で歯茎が黒い場合、放置しても大丈夫でしょうか?

上之郷 奈菜 歯科医師

原因によります。メラニンなどの単なる着色は気にしなくても問題ない場合があります。一方、歯周病や虫歯などでは治療が必要です。また、メラノーマなど早期発見・早期治療が大切な病気もあるので、気になる変化があるときは、歯科を受診しましょう。定期検診を受けていると問題が見つかりやすくなります。

銀歯・差し歯の歯茎が黒いのは治療費がどれくらいかかりますか?

上之郷 奈菜 歯科医師

金属を使わない治療にする際、歯科では保険適応外の治療があります。数万円以上する場合があるので歯科医院で確認してください。

歯肉が一部だけ赤黒いのですが原因は何が考えられますか?

上之郷 奈菜 歯科医師

赤黒い理由に炎症が考えられます。歯周病などで腫れている場合、治療が必要です。

まとめ

歯茎が黒い原因にはいろいろなものがあります。メラニンの沈着が気になる場合、レーザーなどで色素を除去することができます。また、歯周病や虫歯では治療が必要です。金属によって歯茎が黒い場合は歯肉の色素を取り除いたのち、メタルフリーの治療ができます。歯茎の黒ずみにはメラノーマなどのまれな病気もあるので日頃から定期的に歯科検診をしてお口の中をチェックし、気になることは気軽に歯科医院で相談しましょう。

「歯茎が黒い」で考えられる病気と特徴

「歯茎が黒い」から医師が考えられる病気は10個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

歯科の病気

金属(メタルタトゥー)

歯周病

失活歯

皮膚科の病気

メラノーマ

色素性母斑(ホクロ)

メラニン沈着

内科の病気

ポイツジェガース症候群(Peutz-Jeghers症候群)

アジソン病(Addison病)

レックリングハウゼン病(von Recklinghausen病)

マッキューンオルブライト症候群(McCune-Albright症候群)

自然な色素であるメラニンのほか、金属や虫歯、歯周病など歯科に関係しているものが多く考えられます。タバコによって歯肉に着色が出る場合もあります。メラノーマなどの重大な病気やアジソン病などの体の病気が影響している可能性もあります。

「歯茎が黒い」と関連のある症状

「歯茎が黒い」と関連している、似ている症状は5個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

歯茎が痛い

歯の根元の歯茎が黒い

歯と歯茎の境目が黒い

歯茎が赤黒く腫れている

歯茎が黒くふくらんでいる

「歯茎が黒い」他に、これらの症状が見られる際は、歯周病、悪性黒色腫などの病気の存在が疑われます。
強い痛みを伴ったり発熱があるなどの場合には、早めに医療機関への受診を検討しましょう。

【参考文献】
・「歯と歯茎のトラブル」(公益社団法人 日本口腔外科学会)