なぜ報道で「自動車」でなく「ポルシェ」「マセラティ」と報じられる? かつては車名「プリウス」も! なぜ表現に偏りあるのか

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輸入車にはブランド名が報じられやすい傾向が

 クルマに関する事件や事故の報道を見ると、ブランド名や車種名の表現に一定の傾向があることがわかります。
 
 最近でも連日のように輸入車のブランド名が報じられていますが、そこにはどんな基準があるのでしょうか。

なぜ事故報道では「ポルシェ」「マセラティ」などブランド名が報じられる? 国産車ではかつて「プリウス」という車名で報じられたことも…(画像はイメージ)

 2022年6月14日には、宮城県内の幼稚園の門へ、運転を誤ったと見られるポルシェ「911」が突っ込んだという報道がありましたが、この事故を報じた大手マスメディアは911という車種名まで報じてはいないようです。

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 翌15日には、千葉県内で盗難されたマセラティ「ギブリ」が東京都内で暴走し歩道へと突っ込んだという事件が大きく報じられています。

 この事件でも報じた大手マスメディアのほぼすべてが「マセラティ」というブランド名を見出しに用いている一方で、「ギブリ」という車種名まで報じている例は皆無です。

 いずれにせよ、ポルシェだから運転を誤ったもしくは、マセラティだから盗難あるいは暴走したという事実はなく、マセラティやポルシェの愛好家や関係者からすれば、望まない形でその名が知れ渡ってしまうことになってしまったといえるでしょう。

 一方、これらの事故・事件の数日前となる6月13日に、静岡県沼津市では盗難車に乗っていた男女2人が、パトカーや一般車に衝突しながら逃走するという事件がありました。

 この盗難車はトヨタ「ランドクルーザープラド(150系)」と見られますが、この事件を報じた大手マスメディアのなかに「ランドクルーザー」あるいは「ランクル」「プラド」の文字を見出しに掲げた例は見つかりません。

 このように輸入車はブランド名が全面に報じられるのに対し、国産車では単に「クルマ」や「自動車」と表現されることが一般的です。

 ただし、数年前までは国産車でも具体的なブランド名や車種名が挙げられるケースも見られました。

 例えば、2019年4月に起こった池袋の暴走事故では、被告が暴走の原因をクルマの不具合によるものであるという主張をしたことから、被告が運転していたトヨタ「プリウス」の名が大々的に報じられることになりました。

 また当時は高齢者による「踏み間違い事故」の報道も多く、報道される多くはプリウスが映っていたこともあり一部では「プリウスミサイル」と揶揄されます。

 しかし、実際にプリウス自体に問題があったというよりは、そもそもの販売台数が多いことや、幅広い世代(とくに年配層に支持されていた)という要因が大きかったようです。

 このようにクルマに関する事件や事故の報道を見ると、ブランド名や車種名の表現に一定の傾向があることがわかります。

 全体の傾向としては、輸入車はブランド名で表現されるか、もしくは「高級輸入車」や「高級スポーツカー」などという高価な輸入車であることを強調したような表現が用いられることが多いようです。

 一方の国産車では、クルマそのものが事件や事故の根幹に関わるようなものでない限り、現在はブランドや車種名が報じられるケースはそれほど多くはありません。

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 個々のケースについては、各報道機関の姿勢があるためここで詳しく触れることはしませんが、全国の新聞社や通信社、放送局によって構成された「日本新聞協会」が2022年3月に発表した「実名報道に関する考え方」という声明は、この件を理解する助けになるのではないかと考えます。

 これは、事件や事故の被害者となった人を実名で報道することの意義についての考え方をまとめたものです。

 そこでは「名前は、犠牲者への共感を生み、事件を他人事と思わせず、再発防止に向けた制度の改善などの議論を促す力になると考えており、そうした例も数多くあります」と述べられています。

 あくまでもこれは人物名に関した記載ですが、名という部分では共通するべき点もあります。

 そうしたなかで、前述の例のようにブランド名を報じるケースと報じないケースがあることも事実です。

 この点については、「報道機関は、実名で報じることを絶対視しているわけではありません」としていながらも、最終的には「実名で報じるかどうかの判断は、報道する側が責任をもっておこなうことです」と述べられており、要するに報道機関ごとの姿勢にゆだねるということのようです。