エルサレムの外に初めて築かれたユダヤ人埋葬地としてユネスコの世界遺産に登録されているイスラエルベート・シェアリムのネクロポリスから、「赤い文字で呪いのメッセージが記された1800年前の墓標」が発見されました。このメッセージは、埋葬者本人から墓を暴くものに対して向けられたものだとのことです。



Do not open: Odd 1,800-year-old grave marker for Jacob the Convert found in Galilee | The Times of Israel

https://www.timesofisrael.com/1800-year-old-grave-marker-for-jacob-the-convert-stumbled-upon-at-beit-shearim/

Archaeologists Discover Ancient Tomb Marker Cursing All Who Enter In Israel

https://www.vice.com/en/article/93a59y/archaeologists-discover-ancient-tomb-marker-cursing-all-who-enter-in-israel

ベート・シェアリム遺跡は2世紀に築かれたユダヤ人埋葬地であり、ギリシャ文字やヘブライ文字などさまざまな文字で記された墓標が300個近く発見されています。イスラエル考古学庁とハイファ大学は2022年6月1日、65年ぶりに新たな墓標を発見したと報告しました。

今回発見された墓標は約1800年前に作られ、死んだ時に60歳だった「ヤコブ」という人物のものであり、「ユダヤ教への改宗者」であることも記されていました。これは、ベート・シェアリム遺跡に改宗者が埋葬されていることを明白に示す初めての証拠だそうです。

また、墓標の文字はまるで血のように見える赤いインクで書かれており、ギリシャ文字で「この墓を開ける者は誰もが呪われる」という不気味なメッセージも記されていたとのこと。以下の写真が、実際にイスラエル考古学長が発表したヤコブの墓標です。



古代世界では個人が死ぬ前に墓標を作ることが珍しくなかったため、呪いのメッセージはヤコブ自身の言葉である可能性が高いとみられています。碑文の解読を担当したテルアビブ大学のJonathan Price教授は、メッセージが奇妙で冗長なギリシャ語で構成されていたことから、ヤコブが口で話した通りにメッセージが記された可能性があると述べています。

Price氏は、「彼は死ぬ前に墓を準備したに違いありませんが、彼が自分の手でメッセージを書いたかどうかは、私たちにはわかりません」とコメント。なお、文字の形は他の墓碑と比較してもかなり整っているとのこと。

呪いのメッセージが記されているヤコブの墓標ですが、発見された場所はヤコブが本来埋葬された場所ではなかったそうで、略奪者によって墓標が移動されてしまったとみられています。そのため、ヤコブ本人の遺体が見つかっておらず、ヤコブが一体どこからやってきてベート・シェアリム遺跡に埋葬されたのかも不明です。Price氏は、「彼がどこから来たのか、一体誰にわかるでしょう。彼の日記でも見つけない限り決してわかりません」と述べ、ヤコブの母語がギリシャ語だろうと推定できるのみだとしています。

ベート・シェアリム遺跡の発掘ディレクターを務めるハイファ大学のAdi Erlich教授は、改宗者であることを明示しているヤコブの墓標は、キリスト教が支配的になりつつあった時代にもユダヤ教への改宗が行われていたことを示す証拠だと指摘。「ユダヤ人による反乱が繰り返し失敗に終わってユダヤ教が衰退し、キリスト教が強化されて広まったにもかかわらず、ユダヤ教に入信することを選び堂々と宣言する人がいたことがわかります」と述べました。