那須川天心

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 6月19日、キックボクシング『RISE』フェザー級王者・那須川天心と、『K-1』スーパーフェザー級王者・武尊の対戦が実現する。これまで所属団体が異なる、また双方のルールが異なることなどからマッチメイクされなかった両王者による、格闘技ファンが待ち望んだ“世紀の一戦”なのだがーー。

【写真】「頼む」テレビ放送を懇願する天心、放送中止を簡素に伝えたフジテレビ

 試合会場の東京ドームに設置される、リングに最も近いSRS席が10万円のプレミア価格が物語るように、テレビ放送でも高視聴率が期待された『THE MATCH 2022』。ところが、放送権を獲得していたフジテレビが5月31日、土壇場で中継の見送りを発表したのだった。

 すると即座に自身のツイッターに《お金の為じゃねえんだよ 未来の為にやってんだよ 子供達はどうすんだよ》と、怒りと悔しさをぶちまけた天心。続けてインスタグラムで、自身も“格闘技のテレビ放送を見て人生が変わった”などと力説しては、

《目先のお金なんてちっぽけだし 俺はお金の力には負けたく無い この試合は沢山の子供達、未来のある人達、より多くの人に観てもらいたい それには地上波しか方法は無い》

 あらためてお金のためではなく、子どもたちに観てほしい、そして格闘技に興味を持ってほしいという未来につなぐための試合であると強調してみせた。

「たとえ地上波放送がなくとも2人の試合を観たい、また全ての試合を観たい格闘技ファンは、もとより“ペイパービュー”方式で完全生中継されるネットテレビ『ABEMA』を視聴するでしょう。ただ、天心選手が言うように、地上波で“無料”放送することで新規視聴者層の開拓や、それこそ子どもに興味を持たせる狙いがあるのでしょう。

 とはいえ、“お金の力には負けたく無い”などと、まるでフジテレビさんが放映料をケチって撤退したような言われ方ですが、それこそお金だけの問題ではなく、主催側に抱いている不信感も一因だと思います」(広告代理店営業スタッフ、以下同)

フジが放映権を放したのは2度目

 『週刊ポスト』5月20日号が報じた【天心vs武尊の仕掛け人RIZIN代表・榊原信行氏「反社交際音声」流出トラブル】なる記事。『THE MATCH 2022』実行委員で、格闘技団体『RIZIN』の代表を務める榊原信行氏と、反社会的勢力とのつながりを疑惑として指摘したものだ。

 当の榊原氏は疑惑を払拭すべく、同誌のインタビューに応じて記事に反論するも、フジにとって納得のいく答えとは見なされなかったのかもしれない。

「かつてフジは“ドル箱”とされた、同じく榊原氏が主宰を務めていた人気格闘技大会『PRIDE』の放映権を手放したことがありました。その時も同様に関係者の“黒い疑惑”を報じられてのことで、今回のことで2回目なのです。

『THE MATCH 2022』放送後に新たな疑惑が浮上しないとも限りませんし、テレビ局のコンプライアンス違反の取り締まりが強化さている現状では、たとえ疑惑でも蔑ろにはできないということ」

 もちろん、日頃から真面目にトレーニングを積み重ね、真摯に試合に臨もうとしている選手に罪はなく、それは天心と武尊とて同じ。ところが、「“子どものため”とは嘘偽りない本心なのでしょうが、必ずしも額面通りに受け止められていないのも現実」。

 というのも、彼の発言が大きな反響を呼び、SNSをはじめとしたネット上で多くの賞賛の声が上がる一方で、

《できれば格闘技は子供達には見せたくないけど、、、って思うおじさんは、もう古いのかな?》
《たぶん真剣に発言してるのだと思うけど、大半の親は子供に殴り合いを見せたくないと考えていると思うんだけど》
《子供の未来って言うが、 子供の未来の為に、「暴力を見せたくない」って親が沢山いるのが世の中》

 その子どもたちに格闘技を「見せたくない」とする、親世代と思われるユーザーも。ルールありきのスポーツであることは間違いないが、興味がない、共感を持てない視聴者にとって格闘技は時に「殴り合い」「暴力」に映り、テレビで子どもに見せるのは悪影響につながると捉えているようだ。

試合を見て「え、喧嘩じゃん」

 実際に、テレビで子どもと一緒に格闘技を視聴したら、「見たくない」と拒否反応を示されたケースも。小学校に通う男児の父親である40代男性は、テレビ放送されていれば観戦するというライトユーザー。

「きっかけは天心選手です。息子は『逃走中』(フジテレビ系)が大好きで、出演していた天心選手のアクロバティックな身のこなしや素早さに“かっこいい!”とすっかりファンになり、他の番組で見かけた際も“天心出てる!”とヒーローに映ったのだと思います。後で空手教室に通う友達から格闘家であることを教わったみたいで」

 そんな折に、テレビで見ていた大晦日の『RIZN』に天心が登場し、そこで初めて子どもと観戦することに。リング登場時こそ「天心、かっこいい!」と楽しげだったというが、次第に表情が変わり……。

「いざ、試合が始まると“え、喧嘩じゃん”と(苦笑)。普段、“友達と喧嘩してはダメ”と口すっぱく教えているだけに、“喧嘩じゃなくてスポーツ”と説明しても納得してもらえませんでした。

 他の試合のハイライトシーンが流れた時も、身体にタトゥーが入った選手を見て“この人、怖い人?”、KOシーンには“うわっ、痛そ〜”“死んじゃった?”と。さすがに格闘技は早かったのか、“もう、見ない”とショックを受けたようで。妻にも“なんで、そんなの見せるの!?”と怒られました(苦笑)」(同・40代男性)

 それ以来、すっかり天心から心が離れてしまったのか、元旦放送の『逃走中』で逃走成功したユーチューバー・ヒカキンが男児のヒーローになったようだ。

「子ども」を大義名分にした?

 時に血が舞う激しい打撃戦に加えて締め技で失神する場合もあったりと、選手にとって命懸けの試合がファンの心を掴む格闘技。さらに外国人選手や、一部の日本人選手でも身体中にタトゥーが入っている選手もいることで、いくら天心が華麗なテクニックを駆使したスマートな試合運びをしても、子どもにしてみれば“怖い”イメージばかりが残るのも無理はないということか。

「言葉足らずな表現が反感を買ったとも考えられます」と、天心に批判の声が向けられた背景を慮る。

「インスタグラムに綴った文面も全て読めば、天心選手の真意もわかります。ですが、ネットニュースで《子供達はどうすんだよ》というツイート部分だけを見てしまうと、“すべての子どもが試合を待ち望んでいるんだ”と、まるで“子どもを大義名分”にして反論しているような印象を持たれかねません。

 彼自身、格闘技界の未来を真剣に考えていて、それこそ子ども向けのテレビ番組に出演するのも“格闘技に興味を持ってほしいから”でしょう。ならば、それ以前に榊原さんも含めて一体となって疑惑が浮上するような体質を正す。そして、子どもにテレビ観戦を勧めるのならば、選手もタトゥーを含めて健全な環境を整えていく必要が……」

 格闘技にもコンプライアンスが求められそうな時代。この“無理難題”に天心はどう応えるか。