※この記事は2021年07月23日にBLOGOSで公開されたものです

放送作家として、世間で流行っていることはいち早くキャッチしなければいけません。しかしメディアの多様化で予想しないところでブームが巻き起こるのが当たり前の時代に。今回は放送作家でなくても知らなくてはヤバいレベルに達した韓国のボーイズグループ・BTSについて調べてみました。

なんでも調べる放送作家の大竹です。

放送作家という職業柄、流行には敏感でなければいけません。会議の時、プロデューサーやディレクターの「今、流行ってるアレなんだっけ?」に対して、Google検索よりも早く「○○です」と答えることができると、心の中で小さなガッツポーズ。アイデアを発言できなくても、会議に参加した雰囲気も出ますね。

しかし、インターネットの台頭でメディアが多様化した今、すべての流行をいち早くキャッチすることは至難の業。そこで音楽、スポーツ、お笑い、漫画など得意ジャンルを絞って専門知識を身に付けるのが定石となっています。

ところがたまに自分の専門ジャンルでなくても知ってなきゃマズいというエンタメ発の社会現象が生まれます。去年の『鬼滅の刃』などが典型ですが、昨今私が個人的に感じているのは、すでに世界的な人気となっている韓国生まれのボーイズグループBTSです。

正直にいいます。BTSについて知っていることは「防弾少年団という名前で活動していた」「世界的な人気グループ」「『Dynamite』って名曲だよね」の3つだけ。

何人グループかも知らないし、当然個人名も知りません。でも、それは僕だけではないはずです!そこでこのコラムでは、私が調べたBTS初心者が通ぶれる小ネタをご紹介します。

AMラジオにBTSがゲスト出演でスタッフパニック!

2017年12月17日にツイートされた1枚の写真。まだBTSが防弾少年団という名前で活動していた時代に、彼らはラジオ番組にゲスト出演しています。2013年に韓国でデビューしたBTS。2017年時点でも大人気でしたが、普段音楽を聞かない人がBTSの曲を鼻歌で口ずさむほどの社会現象にはなっていなかったように思います。

データを調べてみました。2017年のBTSはシングル『MIC Drop/DNA/Crystal Snow』がシングル年間ランキング13位、アルバム『LOVE YOURSELF 承‘Her’』がアルバム年間ランキング48位。いずれもオリコンが発表しているものです。

さらに、音楽ライブ情報サービス「LiveFans」が、独自調査・集計による2017年の年間推定観客動員ランキングを発表していました。BTSは24位で、15公演で推定動員数が34万6300人。もちろん日本における公演数が多いほうが有利なランキングになっています。

そうした中で、AMラジオに出演していたという恐るべき事実!せめてFMだろ!と思いましたが、この番組の制作チームの先見の明が優れていたわけです。

たまたまこの局の関係者にこの時の話を聞いたことがあります。当時、ラジオスタッフも「防弾少年団?あー、なんか人気らしいよね」くらいの認識だったそうです。収録当日、防弾少年団は2台の高級ミニバン・アルファードで現場に登場。

ラジオ局はテレビ局と違い、膨大な駐車スペースなどありません。(TBSラジオは、テレビ局と同じ社屋のため駐車場が広いですが)そんなところに、アルファード2台でメンバーが現れたので、さあ大変。「なんか人気らしいよね」の認識だったスタッフは、すでに超大物外タレアーティストだった防弾少年団のすごさを肌で感じ、うっとりしていたとか。

当時をよく知るARMYなら「えっ、なんでAMラジオに!?」と驚いていたことでしょう。私が流行のアンテナを立てていなかっただけで、耳の早い人は4年前にのちのブレイクを予見していたわけです。

さらっと使いましたが、BTSのファンは『ARMY』といいます。韓国は徴兵制の国だからARMYと思った私は大馬鹿野郎です。ARMYは、Adorable Representative M.C for Youth(若者を代表する魅力的なMC)の頭文字から来ているとか。

既存のポップスとは一線を画すBTSの曲の短さ

BTSのオフィシャルYouTubeチャンネルを見たところ、驚きの事実が。ほとんどの曲が約3分しかありません。私は音楽の専門家ではないですが、いわゆるポップスと呼ばれる音楽は4~5分ほどあるでしょう。BTSは圧倒的に短い。

3分といえば、パンクやメロコアといったジャンルに多くみられる曲の長さ。(個人的にパンクやメロコアが好きでよく聞いている経験からですが…)ただもう少し深堀りしていくと、ビートルズも曲が短いです。なぜそんなことを知っているかというと、昔担当していたラジオ番組でビートルズの楽曲しかかけないビートルズリクエストというコーナーがあり、毎朝ビートルズを聞いていたからです。どんな経験も無駄になることはないですね。

ビートルズのヒット曲をいくつかピックアップしてみましょう。

『Yesterday』2分05秒
『Love Me Do』2分21秒
『Help!』2分18秒
『A Hard Day’s Night』2分33秒
『Hey Jude』7分11秒

3分どころか2分台が多いという事実。とおもいきや『Hey Jude』は7分オーバーとめちゃくちゃ自由!ビートルズ全盛期の時代はこれが当たり前だったのか、詳しい分析は専門の方がされていると思うので、ここでは調べませんが、BTSもビートルズには及ばないものの、曲が短いという共通点があります。

BTSについては、インターネットで音楽を聞くのが当たり前となり曲の長さに制限がなくなったことも大きいのではないでしょうか。

『Dynamite』に続いてリリースされたニューシングル『Butter』。前作に続いて、英語詞の楽曲ですが、こんな一節があります。

「スームス・ライク・バター、ライク・クリミナル・アンダーカバー」(Smooth like butter/Like a criminal undercover)

歌詞にある「スムース」と「クリミナル」を繋ぐと、マイケルジャクソンの名曲『Smooth criminal』になります。調べると彼らは、2018年6月13日のデビュー5周年記念「BTS PROM PARTY」でマイケルジャクソンのカバーダンスを披露しています。

BTSとマイケルジャクソンの関係性は他にもありますが、これくらいにしまして。ビートルズやマイケルジャクソンといった世界的アーティストの要素がBTSにあることは間違いなさそうです。

『防弾少年団』に込められたメッセージ

BTSの外枠がぼんやり見えてきたところで、あらためて基礎情報を確認しましょう。BTSは、RM、SUGA、JIN、J―HOPE、JIMIN、V、JUNG KOOKの7人グループ。

元々のグループ名『防弾少年団』を聞いた時、「防弾」という軍事的なワードから「徴兵制のある韓国だから防弾?」とボーイズグループらしからぬ名称を不思議に思いました。

調べたところ『防弾少年団』には、「10代、20代に向けられる抑圧や偏見を止め、自身たちの音楽を守りぬく」という思いが込められているとか。徴兵制とか言っていた自分が恥ずかしくなるほどちゃんとした理由。『BTS』も、防弾少年団の韓国語表記をローマ字で表した「Bangtan Sonyeondan」に由来しています。メッセージ性がとても強いグループなんですね。

「BTS」という表記を前面に押し出してからの活躍はご存知の通り。韓国を飛び出し、アジアを飛び出し、欧米でも高い評価を得ています。

そもそも韓国のアーティストは最初から国内市場だけで終わらせない戦略を取っています。韓国の人口を考えれば、国内市場ではなく海外市場を視野に入れて売り出したほうが稼げるのは当然。2019年時点の韓国の人口は5171万人で日本(1億2630万人)の半分以下ですから、市場規模も日本には及ばないということなのでしょうね。

おおたけまさよし
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