※この記事は2017年05月05日にBLOGOSで公開されたものです



「子どもの日」の今日、親子水入らずの休日を楽しんでいる方々も多いことでしょう。「子どもの安全」について日々考え、研究している私にとっても、今日は特別な思いを抱く日です。

つい先日も千葉県でにわかに信じがたいような不幸な事件が起きました。親としては何としても守りたい子どもの命。でも、小学校に入学すると毎日の登校や習い事など、子どもが1人で行動する時間が増えていく一方で、心配が尽きません。だからといってただ漠然と心配するだけでは子どもの身は守れません。親子で一緒に日常のリスクを把握し、対策を練る。具体的な行動をとることが大切です。拙著『子どもの防犯マニュアル』で紹介したノウハウの中から、いくつかのポイントを紹介したいと思います。

1.子どもが1人で行動する環境を知る

子どもが事件や事故に巻き込まれる可能性が高いのは、子どもが1人で行動している時間帯です。例えば、毎日歩く通学路。お父さんお母さん、どんな道か知っていますか?

「知っていますよ。すぐ近くですから」

たしかに道自体はご存知でしょう。しかし、“子どもにとっての危険の芽をチェックする”という気持ちで、通学路を隈なく見たことはありますか?

子どもは好奇心の塊で、大人が思いもしない行動をとるものです。狭い隙間があったら隠れたくなり、窓のように空いている穴があるとのぞき込みたくなる生き物なのです。

これは発達心理学における「自らの成長発達のために、必要不可欠な考えや行動を起こさせる諸衝動」であり、子ども自身もなぜそういう行動を起こしたくなるのか説明がつかないものだそうです。つまり、明らかに危険と思われる対象にも、自ら近づいてしまうのが子ども。「ひょっとしたらこういう行動をするかもしれない」という考えに立って、あらかじめ注意を促しておくことが大切です。

おすすめは親子で一緒に通学路を実際に歩いてみること。「危ないところ探しゲーム」のように遊び感覚を取り入れてやってみましょう。通学路の要注意スポットを描き込んだオリジナルの絵地図を作ってみるのも効果的です。

いざという時に逃げ込むことができるコンビニや交番、「子ども110番」の家の場所などもチェックしておきましょう。

2.不審者に遭遇した時の対処を教えておく

不審者というのは必ずしも「不審」な恰好をしていると限りません。「おじさんは、お母さんの友だちだよ」「子犬が生まれたから見に来ない?」といった優しい言葉に騙されないよう、「知らない人についていってはいけない」という教えは徹底するのはもちろん、仮に知り合いであっても「どんな人にもついて行ってはいけない」と教えましょう。

もちろん「車に乗るように誘われても絶対に乗らない」ことは徹底しましょう。子どもが躊躇なく断れるように、「もし相手の人が怒っても、あとでお父さんお母さんが謝りにいってあげるから心配しないでいい」と付け加えてあげてください。

もしも無理やり連れていかれそうになったら、すぐに逃げること。その時に「いざという時には重い物は捨てていい」と教えてください。子どもの足で逃げ切る可能性を高めるためには、身軽なほうが有利です。「ランドセルだって落として逃げていいんだよ。」と伝えておきましょう

また、連れ去ろうとする相手が車に乗っている場合は、「車の進行方向と逆方向に逃げる」ことも確認を。同じ方向に逃げればすぐに追いつかれてしまいますが、逆方向であれば車がUターンをするあいだ時間稼ぎができます。こういった具体的な行動のシミュレーションが、いざという時に非常に効いてくるのです。

3.子どもと情報共有しやすい関係性をつくる

子どもの安全を守るには、日常的に情報共有できる関係性を子どもとつくっておくことも大切です。通学路の環境にしても日々変わっていくものなので「最近、変な車がよく止まっている」「交差点の角で工事が始まって見通しが悪くなった」といった情報を親も把握しておくことで、危険の芽を察知することができます。

日ごろから「今日なんか変わったことなかった?」「今日は誰と帰ってきたの?」と子どもの行動に関心を向ける声掛けをしておきましょう。何かあった時になって突然「気をつけないとダメでしょう!」と叱ったって、子どもは「普段なんも言わないくせになんだよ」と反発するだけです。

子どもから聞き取る情報の中にはヒヤリとするものもあるかもしれません。「寄り道しようとしたら道に穴が空いてて滑っちゃった」と言われたら思わず「なんで寄り道したの!」と叱りたくなりますね。

でも、「なんで」と問い詰められても、子どもはうまく説明できません。「寄り道しちゃったんだね。今回は滑っただけだったからよかったけど、深い穴や用水路に落ちたら上がれなくて危なかったよね。だからちゃんと決めた道を歩くようにしようね」というふうに、やってしまったことは受け入れつつも、その行動が危険につながることをしっかりと伝えましょう。

4.地域で子どもを守る

ある都市部のマンション内で「挨拶をしてはいけない」というルールが決まったことが話題になりました。そのルールを主張した親によると「うちの子には『知らない人に声をかけられても応対しないように』と教えているので、挨拶をされると子どもは戸惑います」という理由だったようです。

これは一つの方策かもしれませんが、私はこの考え方には賛同できません。やはり子どもを守る目は多い方がよいと考えています。お互いに顔を知っている関係性であれば、何かあった時に頼り合うことができるからです。

子どもの同級生の親同士で連絡を取り合ったり、同じマンション、同じ町内でつながりをつくったりすると、それが防犯にとても役立ちます。私も町内会の役職を引き受けてみましたが、地域の情報がどんどん集まってきて参考になりました。

町内会や自治会にいきなり入ることに抵抗がある人は、もっとハードルを下げて、地域の公園などで開催される小さなお祭りに家族で参加してみてはいかがでしょう。有名な神社の大きなお祭りではなく、町内で開かれている「子ども神輿」に子どもを連れて行くだけでも、子どもの顔を知ってもらえるので、いざというときに役立つのです。

舟生岳夫(ふにゅう・たけお)
セコム株式会社 IS研究所 リスクマネジメントグループ主務研究員
キッズデザイン協議会理事/防犯設備士

子どもを狙う犯罪が多発する社会状況の中で、自らも2児の父として、子どもを守るための調査・研究に日々取り組んでいる。各種防犯セミナーの講師をはじめ、学校や施設のセキュリティポリシー策定コンサルティングなどを実施。
『子どもの防犯マニュアル』(日経BP社)
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「子どもの安全ブログ」
https://www.secom.co.jp/kodomo/

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