「沖縄か日本かどっちかを選べ」といったら、文句なしに沖縄を選ぶ~佐藤優氏、鳥越俊太郎氏が沖縄県民大会でスピーチ - BLOGOS編集部
※この記事は2015年05月19日にBLOGOSで公開されたものです
5月17日、那覇市において辺野古基地に反対する大規模な集会が開かれた。集会には翁長知事に加えて、佐藤優氏や鳥越俊太郎氏といった著名人も出席し、スピーチを行った。佐藤氏と鳥越氏のスピーチの内容を書き起こしでお伝えする。 琉球新報によるアーカイブ映像(Ustream)
佐藤優氏「沖縄アイデンティティー」の確立を一番恐れているのは中央政界
(※56分頃からの発言)
この数年間で私のアイデンティティーは変化した。もともと外務省の官僚やってるでしょ。国家意識が強かったんです。ただルーツは沖縄だから「沖縄系日本人」だと思っていたんだけど、今は違うんです。「日本系沖縄人」なんです。
どういうことか。「沖縄か日本かどっちかを選べ」といったら、文句なしに沖縄を選ぶということです。みんなこの場に何人集まったかということを気にしているんでしょ。僕は、あんまり気にならないんです。むしろ、ニライカナイとかオボツカグラとか、あそこから祖霊がたくさん来ているから、カウントができないぐらいの無限の数のウチナンチュのマブイが集まってるんだと。
沖縄は過去の沖縄人のものであり、現在の沖縄人のものであり、そして未来の沖縄人のものであります。今ままで我々がイデオロギー、保守と革新とか、経営者とか労働組合とか、地域とか、こういったことを難しく考えすぎた。そのために、「沖縄人だ」という感覚よりも、個別利益を優先しちゃった。
それがつけ込む隙になったんですね。ただ、翁長知事が誕生してから変わりましたよ。そうすると、この「沖縄アイデンティティー」の確立を一番恐れているのが、東京の中央政界です。あの人たちはですね、人間性にはいろいろ問題がありますけれども悪知恵だけは働きますからね。
外務省というのは、フォーク、ナイフに蝶ネクタイみたいな感じでやってますけどね、腹黒いですからね。私自身がいたからよくわかっています。それだから、「県外移設」に向けて、ある時期まで一生懸命頑張っていた前知事公室長を一年早く退室させて、外務省参与にして辺野古移設への知恵をなんとか吸い取れないかと。こういうような卑劣なことをやります。
でも、前公室長、あなたもウチナンチュだから、絶対に誘惑にのらないでね。あの人たちを助けないでください。
それから後、現場で対峙している警察官、防衛局の職員、海上保安庁の職員、ガードマンにもウチナンチュいるでしょ?なんで沖縄県出身者が沖縄人と対立しなきゃなんないんですか。それを解決するのは簡単ですよ。辺野古の新基地作るのやめれば、この対立すぐ終わる。それだから、警察庁や海上保安庁や防衛局やガードマンの人たちも、この不毛な仕事から解放してあげましょう。
我らが翁長知事は、沖縄県の知事であるだけでなく、沖縄県外の私たち日本にいるような在外の沖縄人、あるいはペルーやアメリカやボリビアや世界各国にいる沖縄人の代表でもあるわけなんです。
今、日本の陸地の0.6%しかない沖縄に74%の米軍基地がある。これは差別以外の何物でもありません。しかしですね、差別が構造化している場合、差別者は自分が差別しているということを認識していないんですね。逆に沖縄がわがままを言うように見えるんですよ。
99対1、圧倒的大多数、大民族である日本人にはわかりにくい。ただ、今まで差別って言われると我々は頭低くしてたでしょ。そんなこと言われるとみじめになると。実力をつけて跳ね返すんだと思ったと。逆なんです。差別についてキチンと語らないと、この構造は変わらない。そして、我々は今や差別について語られるほど強くなったんですから。
ひとつ例を出しましょう。辺野古基金です。私も共同代表を務めさせていただいています。プライス勧告のとき、みんなお金欲しかった。でも、土地売らなかったでしょ。今は、辺野古を阻止する。そのためのお金を集めようと言ったら、2億円以上のお金を集められるほど、沖縄は力がついているんです。
我々は既に勝っているんです。あとは、どういう風にして勝っていくか。自己決定権を確立して、民主主義を強化して、自由を強化する。
あと、「おもろさうし」を一回読みましょう。読みにくいけどね。沖縄の危機が来たとき、沖縄人に危機が来たときは、セジという特別の力が下りてくる。そして、必ず危機を切り抜けているんです。今も我々にセジがついている。
どうもありがとうございました。
※編集部注
・ニライカナイ、オボツカグラ:どちらも琉球神道における異界の概念。
・ウチナンチュのマブイ:沖縄県民の魂
・「おもろさうし」:沖縄に伝わる歌謡集
鳥越俊太郎氏「辺野古周辺で100万人の大集会を!」
(※1時間9分頃からの発言)
鳥越俊太郎:会場にお集まりの皆さん。今日は本当に多いですね。何万人ぐらいいるでしょうか。3万人ぐらいですかね。皆さんに改めて今日は県外からのメッセージというのは、私一人ではありませんけれど、県外でも日本全国で「辺野古新基地」という声は満ち満ちています。それは、各新聞社の世論調査を見ても明らかに「辺野古基地反対」の声の方が、50%を上回っています。したがって、そういう県外の皆さんの気持ちも込め、改めてここに立ちたる皆さんにですね、満腔の意を表明した「辺野古新基地反対!」。そして、「安倍政権には屈しない」。このメッセージを改めて、皆様方と共に確認をしたいという風に思います。
ご存知のように安倍政権というのは、特定秘密保護法、そして集団的自衛権、安保法制、原発再稼働、どれをとっても国民の過半数が反対していることをゴリゴリとやろうとしているんです。つまり、それはどういうことかというと、今安倍政権は民意をまったく顧みない。民意を無視して自分たちの政策を進める「独裁政権」なんです。
これは与太話と思って聞いていただきたいですけど、日本の街のどこかではですね、安倍政権のことを「アベドルフ政権」と言うんです。これ意味わかります?ドイツのアドルフ・ヒットラー。ワイマール憲法で多数派を取り、ワイマール憲法というのはとてもいい憲法だ。しかし、そこで多数派を取った後は独裁政権となってドシドシと戦争政策に進んでいった、あのドイツの政権。それとなぞらえてアベ・アドルフ政権、「アベドルフ政権」というのが日本の今の政権の実態なんだ。なぜならば、みんな民意を無視して、独裁を行っているからです。このことを皆さん、今一度よく考えてみてください。
その中の重要な一つとして辺野古基地の建設という問題があるんです。彼らは皆さん方のこれだけ多くの硬い反対の決意、心の表明を含めて、安倍政権はですね、本当はどこかで恐れているのかもしれませんが、表面的には一顧だにしていない。
それは先日、翁長知事と安倍総理大臣、菅官房長官、中谷防衛大臣等々の会見でも明らかに、そういう感じが見て取れました。そういうことですから、これは生半可なことでは、独裁政権を打倒すということはなかなかできない。しかし、それをやらねば、おそらく辺野古の基地は作られます。
そのためにもですね、沖縄だけではなくて、実はこういう集会は東京でも、北海道でも、九州でも行われることを私は望んでいます。私の若干、個人的な話をさせていただきたいのですが、私は九州の生まれです。終戦の時、5歳でした。沖縄戦が3月から6月まで行われました。
そして、その後米軍はオリンピック作戦と称して、九州上陸作戦を持っていました。もし、沖縄戦が、あの3か月の長きにわたる、沖縄の住民の方々を巻き込んだ抵抗がなければ、もっと早く沖縄戦が終結して、米軍が九州に上陸をしております。宮崎と鹿児島方面から上陸する作戦はちゃんとたてられていました。
もし米軍が、九州上陸作戦を敢行した暁にはですね、ちょうど大分から福岡に移行する幹線道路の横に私の家がありました。したがって、もし米軍が九州上陸作戦を敢行していたならば、おそらく私は今ここにいないでしょう。
おそらく沖縄に続いて九州も焦土と化すしていた。しかし、沖縄は住民の人も巻き込んで、住民の人も立ち上がって、米軍に抵抗をさせられたという方が早いですけれども、しかしそのおかげでずいぶん米軍の作戦は遅れたわけですね。
その結果、私たち九州の人間は生き残ったわけです。そういう意味では、私は戦後ずっと沖縄の人たちに対しては申し訳ないなと。沖縄の犠牲の上で私たちがあるんだということを常に感じ続けてまいりました。
したがって、今回、辺野古基金の話が来た時も、一も二もなく共同代表ということにさせていただきました。その縁で今日はここに立っております。
おそらく辺野古基金が1億何千万か既に基金が集まっていると、先程ご紹介あったとおりですけれども、私は辺野古基金はおそらく目標100億!そして、本当は飛行機の都合さえつけばですよ、キャンプ・シュワブのあそこの辺野古周り、100万人の大集会、これぐらいの強い気持ちで目標を掲げて、この辺野古基地を造らせない。ということを国民の意志をですね、はっきりと強く、断固たる意志を示さない限り「アベドルフ政権」は、そう簡単に引き下がらない。それが私の実感です。
したがって、戦いはもうすでに始まっていますけれど、この県民大集会は、新たな第一歩として、「絶対に辺野古に基地は作らせない」そういう新たな戦いになることを、私はここで改めて皆さんと共に確認をして、私の話は終わらせていただきます。
ありがとうございました。