憲法改正めざす96歳の中曽根元首相「あと何年生きるか分からないが、この大きな仕事に参画したい」 - BLOGOS編集部
※この記事は2015年05月03日にBLOGOSで公開されたものです
日本国憲法の改正を目指す超党派の国会議員らで作る「新憲法制定議員同盟」は5月1日、東京・永田町の憲政記念館で「新しい憲法を制定する推進大会」を開催した。憲法改正に積極的な各政党の国会議員が登壇し、それぞれの意見を披露した。(取材・岸田浩和)「早期にわれわれの欲する憲法をつくっていきたい」
現在96歳の高齢ながら、いまも新憲法制定議員同盟の会長をつとめる中曽根康弘元首相も姿をみせ、次のような挨拶を述べ、憲法改正に向けた思いを口にした。「憲法改正に向けて、みなさまにご尽力いただき、本当に感謝しております。
私は戦後、国会議員になりましたが、そのときから憲法改正を心がけておりました。長い間、改正できず、日本の歴史に対して申し訳ないというのが、いまの心境でございます。国民のみなさまのお力を得て、できるだけ早期にわれわれの欲する憲法をつくっていきたいと、念願しています。
あと何年生きるか分かりませんが、ぜひ、みなさんと一緒に、この大きな仕事に参画させていただいて、責任を果たしていきたいと思っています。われわれが目指すところの憲法制定運動も、各方面からのご理解とご協力をいただき、着実に前進しており、感謝しております。
憲法に対する見解の相違はあっても、各党が自らの視野と考えに基づいて話し合う環境が整いつつあることは、大変な進展でございます。
とくに本年は、戦後70年という節目の年であります。憲法に対する議論が大いに盛り上がることを期待し、われわれも努力を続けたいと思っております。
私どもが求める新しい憲法とは、民族のあり方とともに、そこから生まれる歴史、伝統、文化といった国民共有の価値と、自由や平等という原理的価値を縦軸に置きながら、一方で、刻々と動く世界情勢と国内情勢を横軸にして、それらを吟味しつつ、根幹の思想をどう形づけ、方向づけていくかということにあります。すなわち、国の未来の姿を期待させ、国民がともに歩むべき道を示すものでなければならないと思います。
われわれは新憲法の制定を強く望んでおりますが、現憲法の果たしてきた役割と意義も大いに認めております。また、国民も、それを受け入れてきたのであります。
しかし、占領下で拙速につくられ、あまりにも抽象的な普遍的価値に偏りすぎ、日本独自の歴史と文化と伝統によって刻まれた美徳というべき価値の欠落がある。国家の基本法として、十全ならざるところがある。それをどう修正するかが、われわれの課題であると思います。国の基本である憲法の見直しについて、改めて国が求める理想とともに、現実への果敢な対応をしていかなければならないと思われます。
そのためにも、みなさんの大いなる議論とご努力によって世論を喚起し、新たな憲法制定の道を前進させてまいりたいと思うしだいです。みなさまに一層のご支援をよろしく申し上げ、わたしからのご挨拶としたいと思います」
「憲法改正の中身の議論がいよいよ国会で始まる」
これに続き、自民党を始めとする各党の議員が登壇し、それぞれの党の動きや考えを述べた。自民党の船田元・憲法改正推進本部長は、同党が先日発行した漫画『ほのぼの一家の憲法改正』を手に持ち登壇。「憲法というと、非常に堅いモノという印象がある。国民のみなさまに、憲法改正の必要性をご理解いただくためにも、このような冊子をつくらせていただいた」と述べ、同党の取り組みを紹介した。
また、衆議院憲法審査会において、すでに国民投票法の改正に着手した点に触れ「憲法改正についてのいわゆる環境整備は、ほぼできあがった」と発言。今後は「憲法改正の中身の議論が、いよいよ国会ではじまる」とし、「現憲法は、時間の流れと共に現実と乖離した部分がだいぶ出てきてしまったので、そういう問題については勇気を持って改正していきたい」と、自民党のスタンスを示した。
民主党からは、松原仁衆議院議員が登壇。憲法改正に関する3つのポイントをあげた。
1つ目として、現在の日本において、拉致問題の解決が非常に重要な事案であると説明。その上で「現憲法の前文は、拉致問題解決においてきわめて諒解できない部分がある」とし、これが憲法改正を推進する理由の一つであると語った。
2つ目として、尖閣諸島や、海底地下資源の領有にかかわる海上の国境、経済的排他水域などの問題をあげた。隣国との関係に応じ、「国民のナショナリズムが徐々に高まる形になったが、同様に憲法についても、変えられるべきだろう」と語った。
3つ目は、憲法における「アニマルスピリッツ」の必要性をあげた。松原議員によると「アニマルスピリッツ」とは、人間を奮い立たせる感情、意志決定の土台となるドラマのことで、米国によって短期間に作られた現憲法にはそれがないと指摘した。
この3つを踏まえ「憲法は作り替えられるべきである」といい、それが達成されたときに、日本人は大きなエネルギーと活力を得るのだと述べた。戦後のトラウマから脱却し、戦後70年の節目に、大きなうねりを起こしていくべきだと結んだ。
公明党からは、斉藤鉄夫幹事長代行が登壇した。同党のスタンスを「加憲」であると述べ、具体的な方針を説明した。
現憲法の「国民主権主義」「人権の尊重」「恒久平和主義」の三本の柱を守りながら「時代の変遷や環境の変化、新たに勝ち得た価値観を加えていくこと」が公明党の基本方針であるとした。具体例として「環境権」を取り上げ、公明党の環境権に対する考えが当初から変わっていないことと、改憲には多面的な議論が必要である点を強調した。
維新の会からは、小沢鋭仁憲法調査会長が挨拶を述べた。同党は、以前より一貫して憲法改正の推進を公約としてきた。憲法改正のための準備が整いつつあるとした上で、いよいよ改憲のプロセスから中身の議論に移行すべき時期が来たと話し、党内一丸となって闘うと宣言した。
次世代の党からは、平沼赳夫党首が登壇し、「保守の半数近くの人が、次のように誤解していると思います」と切り出した。平沼党首は、尖閣諸島で軍事的な衝突が起こったとを仮定し、「日米安全保障条約に基づいて、アメリカが助けに来てくれるというのは誤解ですよ」と話し、過去の歴史を根拠に「絶対にアメリカは助けに来ません」と断言した。
現憲法の前文は理想であっても実現しない絵空事であるとし、実際には「軍国主義にならずに、我らの安全と生存を、自らの力で担保していかなくてはならない」と述べ、具体的に憲法にそれらを織り込む改正が必要であると主張した。
各党の声明
・憲法記念日にあたって(党声明) - 自民党・【談話】憲法記念日にあたって - 民主党
・「憲法改正」を超えて復古的体制をめざす安倍政権 - 生活の党
・憲法施行記念日/初心生かし壊憲阻むことこそ - 日本共産党
・憲法記念日にあたって(声明) - 社民党
・【談話】憲法記念日を迎えて - 次世代の党
新聞各紙の社説
・安倍政権と憲法―上からの改憲をはね返す - 朝日新聞・憲法をどう論じる 国民が主導権を握ろう - 毎日新聞
・憲法記念日 まず改正テーマを絞り込もう - 読売新聞
・憲法施行68年 独立と繁栄守る改正論を 世論喚起し具体案作りを急げ - 産経新聞
・憲法のどこが不備かもっと説明せよ - 日本経済新聞