※この記事は2010年11月23日にBLOGOSで公開されたものです

【第五条の二　携帯電話端末等の推奨】の新設

　この条文は、インターネットが利用できる端末の中で、「青少年がインターネットを利用して青少年の健全な育成を阻害するおそれがある情報を得ることがないよう必要な配慮を行っている」ものに対して、年齢に応じて知事が推奨する、というものです。

　旧改正案は「携帯電話端末又はPHS端末（以下携帯電話端末等という。）」と表記していたが、新改正案では、「携帯電話端末若しくはPHS端末（以下携帯電話端末等という。）又は携帯電話端末等において利用可能な機能で」としている。これは、携帯電話やPHSだけでなく、ゲーム機やスマートフォン、IP フォンなどを想定したものではないかと思われる。

【第三章の四　インターネット利用環境の整備】

　この章では、インターネットの利用環境の整備、つまり、いわゆる「有害情報」を青少年が閲覧しないようにするための整備についてのものだ。しかし、この章を今のタイミングで改正しようとするのはどうか。

　現在、総務省内で「青少年インターネットWG」が設置され、「青少年インターネット利用環境整備法」、いわゆる「青少年ネット規制法」の見直し議論が行われているところだ。そのため、都単独で何かを整備することにそれほど意味があるとは思えない。

　【第十八の七　インターネット利用に係る事業者の責務】
　青少年有害情報フィルタリングソフトウェアを開発する事業者及び青少年有害環境フィルタリングサービスを提供する事業者は、青少年のインターネットの理よ言うにより青少年の売春、犯罪の被害、いじめ等の様々な問題が生じている実態を踏まえ、その開発する青少年有害環境フィルタリングソフトウェア又はその提供する青少年有害環境フィルタリングサービスの性能及び利便性の向上を図るようにしなければらない。

　この条文は、旧改正案の「自己若しくは他人の尊厳を傷つけ、違法若しくは有害な行為を行い、又は犯罪若しくは被害」という文言よりも、より具体的な「青少年の売春、犯罪の被害、いじめ等の様々な問題」と列挙している。しかし、こうした問題は、フィルタリングされた中でも行われている。列挙された問題を防ぐことは、フィルタリングの問題というよりも、サイト監視や利用教育、リテラシーの向上、人権教育の問題もである。フィルタリングの項目にあることの意味は何か？

【第十八条の七の二　青少年有害情報の閲覧防止措置】

　現行法・青少年インターネット環境整備法では、青少年がインターネットを利用する場合は、フィルタリングをすることが原則となっている。しかし、保護者の同意があれば、青少年がインターネットを利用する時、フィルタリングを解除できることになっている。

　この原則に対して、この改正案では、「適切に監督するその他の東京都規則で定める正当な理由その他の事項を記載した書面」を事業者に提出することになっている。これは、埼玉県などの条例でも取り入れられていることだ。何をもって「正当な理由」とするのかは「東京都規則」で別途定めることになっている。しかし、保護者の意向を重視する現行法からすれば、都がその理由に関与することは、行き過ぎた保護主義になりはしないか。他県の条例でも同じ条項があるとはいえ、どんな論点があったのか。その洗い出しは必要なはずである。

【第十八条の八　保護者等の責務】

　旧改正案では

　行政機関は、その業務を通じて、青少年がインターネットを利用して自己若しくは他人の尊厳を傷つけ、違法若しくは有害な行為をし、又は犯罪若しくは被害を誘発したと認めたときは、これを知事に通報することができる。

　という行政機関による通報制度があったが、これを削除した。インターネットの過大な保護主義を撤回したことになる。

　３では、「都は、青少年がインターネットを利用して違法な行為をし、自己若しくは他人に対して有害な行為をした場合におけるその保護者に対し、必要に応じ、再発防止に資する情報の提供その他の支援を行うように努めるものとする」としている。これは旧改正案では「指導又は助言」としていたが、表現を緩めたことになる。

　インターネットの項目も、批判された点を相当に都側が譲歩したのではないかと思われる。これも、児童ポルノの項目と同様に、漫画規制を押し進めるための取引ではないか、と思われる。