アメリカ9.0g、フランス7.5gに対して日本は10.1g。1日当たりの塩分摂取量だ。塩分の多い食事は高血圧の要因で腎臓への負担も大きい。東京慈恵会医科大学附属病院栄養部係長で管理栄養士の赤石定典さんは「日本の食生活は塩やしょうゆなどの調味料が多い。しょうゆに比べマヨネーズの塩分量は8分の1、ケチャップは5分の1程度。調理法や下ごしらえ、食べ方を工夫するといい」という――。

※本稿は『プレジデントFamily2022春号』の一部を再編集したものです。

撮影=よねくらりょう

■マヨネーズの塩分量はしょうゆの8分の1

日本の食生活は総じて塩分が多いと指摘されています。1日当たりの塩分摂取量を諸外国と比べてみると、オーストラリアは6.2g、フランスは7.5gなのに対して日本は10.1g。ジャンクフード大国のアメリカでも9.0gと日本より抑えられているのです。

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、1日の食塩摂取量の目標値は男性7.5g未満、女性6.5g未満。WHO(世界保健機関)のガイドラインはさらに厳しく5.0g未満ですから、現在よりかなり抑えなければならない状況です。

では、なぜ日本人は塩分過多になっているのでしょう。原因の一つは調味料です。日本では料理の味付けにしょうゆをよく使いますが、小さじ1杯に含まれる塩分量は約1gと多い。

塩をそのままかけているのと大差ないのです。同じくみそも塩分が多く、煮物、おひたし、みそ汁などが食卓に並ぶとたちまち塩分量がアップしてしまいます。

一方、塩分が少ない調味料はマヨネーズとケチャップ。しょうゆに比べるとマヨネーズの塩分量は8分の1、ケチャップは5分の1程度。アメリカの塩分摂取量が日本より低いのは、調味料が違うからなのです。

調理法にも塩分過多の原因があります。和食はしょうゆやみそで調理中から味付けする料理が多いのに対し、欧米の料理は調理後に塩をふったりソースをかけたりと最後に味付けをします。好例はポトフ。玉ねぎやニンジンなど具材の旨味やハーブの香味がベースになり、塩は味の補強に加えるだけ。これに比べてみそ汁はみその風味を味わうので、塩分量は増えてしまうのです。

塩分の多い食事は高血圧の引き金になり、生活習慣病のリスクを高めます。腎臓への負担も大きく、まさに百害あって一利なし。運動量の多い子供のうちはさほど影響はありませんが、塩気の多い食事に慣れてしまうと大人になっても塩分が多い食生活を続けてしまいます。子供時代から塩分を抑えた食生活を習慣づけることが大切です。

「でも、減塩食って味気なさそう」と思うかもしれませんが、おいしく減塩するのが私のモットー。ちょっとした工夫で実践できるので、この機会に覚えてほしいと思います。

■「パスタゆでる際に塩を入れるのを省いてもいい」

たとえば、青菜のおひたしをつくるなら、ごまあえにチェンジ。塩分量はグンとひかえられます。魚料理は塩をせずにバターで焼いてムニエルに。有塩バターでも塩分量は10g当たり0.1gしかなく、まろやかな風味でおいしく食べられます。ハンバーグならしょうゆでなくケチャップでソースをつくる。エビやカキなどのフライはソースが定番ですが、塩分量はやはり高め。タルタルソースで食べると減塩になります。サラダのドレッシングを買うときは、和風味よりサウザンアイランドのようなクリーミータイプをチョイス。

塩は下ごしらえにもよく使いますが、ここでも塩分コントロールができます。きゅうりの酢の物は薄切りにして塩もみするより、きゅうりまるごとを少しの塩で板ずりしてしんなりさせます。これをすりこぎなどで叩くと塩分が減らせ、みずみずしさも味わえます。

パスタをゆでるときの塩は思い切って省いてOK。ソースを絡めてすぐ食べれば十分なおいしさです。逆にギョーザは下味をつけたほうがおいしいので、しょうゆや塩で下味をつけて、食べるときは酢とこしょうにつけるなどたれで調整しましょう。

写真=iStock.com/GI15702993
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/GI15702993

さらに食べ方でも減塩効果は高まります。ポイントは先に舌に塩味を伝えること。すると味にインパクトが出て少ない塩分でも十分です。すしなら、ひっくり返してネタの端にちょっとしょうゆをつけ、そこから舌の上に送り込むのがコツ。刺し身もしょうゆをつけた端から舌にのせるようにします。

『プレジデントFamily2022春号』

子供には「しょうゆをちょっとつけるのは大人の食べ方でかっこいいんだよ」と伝えましょう。

とんかつを食べるときはソースを直接かけず、小皿にソースを入れ、つけながら食べるとソースの量を抑えることができます。

調味料の種類や使い方で減塩できますが、もう一歩踏み込むと、漬物、干物、加工品や練り製品など「味をつけなくてもおいしいもの」には塩分が含まれています。食べすぎに気をつけましょう。

塩分を抑えた食習慣はお子さんのためであるのと同時に、親御さんの健康にも役立ちます。親子でおいしく減塩生活を始めましょう。

出典=赤石先生への取材を基に編集部作成

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赤石 定典(あかいし・さだのり)
東京慈恵会医科大学附属病院栄養部、管理栄養士
『慈恵大学病院のおいしい大麦レシピ』などの本やテレビで、食事で健康になる情報を発信している。
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(東京慈恵会医科大学附属病院栄養部、管理栄養士 赤石 定典 構成=上島寿子)