羽生結弦、世界選手権欠場なのに称賛 カナダ学生紙が掲載した理由「彼に恩義がある」
1880年創刊のカナダ学生紙、羽生結弦の記事を掲載
フィギュアスケートの世界選手権(フランス・モンペリエ)が開催されている中、出場予定のない羽生結弦(ANA)が脚光を浴びた。カナダ学生新聞が開幕前に記事を掲載。数々の名場面が生まれた北京五輪を振り返り、「芸術と技術の両面で特に際立っていた。フィギュアスケートの化身だ」などと記した。
「ユヅル・ハニュウの芸術性と技術の熟達」と題して20日に記事を掲載していたのは、カナダにあるトロント大学の学生紙「ザ・バーシティ」だった。1880年創刊のカナダ最古の学生新聞の一つ。1920年代から40年代にかけて3度カナダの首相を務めたウィリアム・ライアン・マッケンジー・キングが、同大学在学中に記事を執筆するなど歴史ある新聞だ。
羽生について執筆したのはバレリー・ヤオ記者。「“氷の王者”はフィギュアスケートの希望であり、その化身」と表現した。キャリアを振り返り、金メダルを獲得した2014年ソチ五輪と18年平昌五輪について「ソチが当時19歳にとって殊勲の勝利だったとすれば、4年後の平昌は氷の王者の地位を確立するものだった」と説明した。
羽生は北京五輪で、国際スケート連盟公認大会で史上初の4回転アクセルに認定されるなど注目を集めた。4位でメダルには届かなかったものの、ヤオ記者は「芸術と技術の両面で特に際立っていた」と評価。フリーの「天と地と」の演技について「ハニュウ自身のキャリアにも通じるところの多い日本の古代の武将、ケンシン・ウエスギのストーリーを優雅に演じた」と指摘し、こう続けた。
「ウエスギのように、ハニュウは若年でリーダーとなった。両者ともに計り知れない困難に直面しながら戦い続け、成熟していった。ハニュウは五輪の演技を通じ、彼自身の成人となるストーリーを語ったのだ」
世界選手権欠場、なぜ記事を掲載したのか「思い出さずにはいられない」
「天と地と」は上杉謙信が主役のNHK大河ドラマを基にしたフリー演目。ヤオ記者は、羽生の献身性に最も感銘を受けたとし、「彼はフィギュアスケートを単なる競技としてだけでなく、芸術として捉えている」と持論を展開。「彼は得点を伸ばすために難しいジャンプを追加するのではない。むしろ、困難なテクニックの他にプログラム全体のバランスと優雅さの表現に努めている」と強調した。
羽生は怪我により、フランスで開催中の世界選手権を欠場。なぜ、同紙はあえてこのタイミングで記事を掲載したのか。想いを溢れさせた様子でつづられた。
「北京2022が幕を閉じ、私は先月に目撃した印象的な瞬間を思い出さずにはいられない。フィギュアスケートに最も魅了された」「その中でも私にとっては一人のスケーターが芸術と技術の両面で特に際立っていた。フィギュアスケートの化身だった。私だけでなく、フィギュアスケート界と国際オリンピック委員会は、ユヅル・ハニュウが競技にもたらした衝撃と変化に対して恩義がある」
羽生の高い芸術性に心奪われた様子のヤオ記者は、「彼のようなアスリートがもっと必要だ。我々は素晴らしい技術のためだけではなく、インスピレーションや人間の寛容さを見つけるために競技を見ているのだ」とつづっている。勝った、負けただけではない、羽生の魅力に心を掴まれたようだ。
(THE ANSWER編集部)