学生に「選ばれる企業」への改革を! プログラミング教材を提供する「Progate」が考える日本企業の現在と未来

みなさんはプログラミングと聞いて何を思い浮かべるでしょうか。
昨今は小中学校でもプログラミング教育が始まり、企業内でもITスキルの高い人材を求める声が高くなっています。
そのような世相に後押しされるように、現在注目を集めている企業があります。
学校や企業向けのプログラミング教材を提供している「Progate」(プロゲート)です。
2014年にオンラインプログラミング学習サービスを提供する企業として設立され、現在は世界100カ国以上、累計導入数250万以上を誇るまでに成長しています。
プログラミングスキルを持つ人材を育てることに注力し続けてきた同社ですが、その事業の背景には日本の未来や成長への強い危機感がありました。
Progateが考える日本の未来とは何か。
日本の企業や教育がこれからの社会で持続的に成長していくために必要なこととは何か。
Progate・宮林卓也COOへのインタビューとともに、日本企業が抱える課題や日本の未来について考えます。

プログラミングの視点から見る日本の未来への課題とは
●経営者の無理解をどう変えていくのか
2022年2月、MMD研究所より2つのアンケート調査が公開されました。
企業におけるデジタルスキルの習熟やその必要性への関心を調べたもので、Progateが行ったものです。
調査では経営者層と従業員(一般社員)との間にデジタルスキルへの関心や危機感の温度差が見られ、企業内でのデジタルスキル格差が数値となって現れました。
とくに顕著だったのは経営者層によるデジタルスキルへの関心の低さです。
・自社にはデジタルスキルに関する課題はない
・デジタルスキルの研修を導入する必要はない
・そもそもデジタルスキルとは何かがよく分からない
このような経営者が非常に多く存在することを示すデータとなりました。
この点について、宮林卓也氏は危機感をあらわにします。
宮林卓也氏
「儲かっている部分からデジタル人材への投資をしていかなければいけないのに、それをしていません」
「“無理解”と言うとネガティブになってしまいますが、今順調だからと経営に危機感を持っていないのです」
宮林卓也氏が最も危機感を感じているのは企業内のデジタルスキル格差やデジタル人材の不足そのものではありません。
それらに起因する「若者に選ばれない会社」が増えていくことです。

和やかな笑顔でインタビューに答える宮林卓也COO
●学生に選ばれない企業とならないために
「デジタル人材から選ばれる環境になっていないのです」
「学生たちが選びたくない会社になってしまっています」
宮林卓也氏は終始笑顔でインタビューに答えながらも、日本や企業の未来に話が及ぶと真剣な眼差しでそう語りました。
多くの企業が、現在の業績や経営状態に大きな問題がない限りはデジタル人材の登用や育成、さらにDX(デジタル・トランスフォーメーション)への投資を積極的に行うことは稀です。
しかしながら、そういったデジタル人材の育成やDXへの積極的な投資を行わない企業に未来はないと断言します。
宮林卓也氏
「プログラミングを学んでいる学生たちが就職活動を行う時期に入った時、何を基準に企業を選ぶでしょうか。恐らく自分のデジタルスキルを生かせる企業はどこだろうと探すでしょう」
「その時、社内にデジタルスキルやデジタル人材への理解のない企業や育成プログラムのない企業は自ずと選ばれなくなります。新卒の若者から魅力のない企業だと思われてしまいます」
「必要なのは『理解』です。このままでは5年後・10年後に取り返しがつかなくなります」

企業経営者に現状と未来をどう「理解」してもらうのかに悩む
日本のみならず、現在の世界の社会基盤はありとあらゆる方向からデジタル化され、プログラミングを始めとした技術によって動いています。
日本の教育課程においてもプログラミング教育やGIGAスクール構想が始まり、いよいよ学生時代からデジタルスキルへの適応力を高めるプログラムがスタートしました。
プログラミング教育は、プログラミング技術のみを教えるためのものではありません。
論理的思考力を養い、問題解決への道を生み出す力を身につけるための教育と言い換えても過言ではありません。
そういった論理的思考力を鍛えた学生が増えるほどに、デジタルスキルへの理解のない企業は淘汰されていくことになります。

Progateのマスコットキャラクター「にんじゃわんこ」くん
●人や企業を変えるのは技術ではなく人である
先のアンケート調査では、デジタルスキルに「興味がある」という会社員が7割近くもいる一方で、
「勉強はしていない」という人もまた7割近くにのぼるというデータがあります。
つまり、会社員の3人に1人は「興味はあるけど勉強するのは面倒」と感じていることになります。

人々の意識改革に必要なものは何か
こういった社内の課題についても、宮林卓也氏は「必ず解決できる」と自信を持って語ります。
宮林卓也氏
「機会の提供があれば学ぶ意識のある人は必ずいます。企業が用意すべきはその機会です」
「社員の7割が覚え始めればマジョリティとなります。そうなれば興味のなかった人も否応なしに勉強しなければいけない空気になります」
「そういった同調性のようなものは、日本人は良くも悪くも得意でしょう」
「世の中の大半の人々は正しく習慣化していけると信じています」
「そして何より、それが次代を担う学生への信頼や安心感に繋がります」
勉強したくない、という空気を無理矢理変えていくのではなく、
「みんながやっているのだから私もやろう」
という流れにしていくことこそが重要だと語ります。
そういった自然な流れや習慣を作り出すためにも、やはり経営者の理解は必須です。
プログラミングという、一見無機質な最先端教育を扱いながらも、その思いや根底に流れる未来観は非常に明確かつしたたかで、
人の心理を上手く利用して社会を変えていこうという野心的な印象さえ受けました。
そういった地道な理解へのアプローチと人々が納得しやすい自然な流れを作ることこそ、
遅々として進まない日本企業のデジタル化と、未来のデジタル人材が希望を持って就職できる企業へ改革していく近道なのかもしれません。
執筆 秋吉 健