【訃報】画像ファイルフォーマット「GIF」生みの親スティーブ・ウィルハイト氏死去
特定の色を透明にする背景の透過表示や、複数の画像を1つのファイルに収めてのアニメーション表示、ファイルの読み込みが進むにつれて画像を表示する「インターレース表示」といった機能を備えた画像ファイルフォーマットとして知られる「GIF」の設計に携わったコンピューター科学者のスティーブ・ウィルハイト氏が、2022年3月14日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のため亡くなりました。74歳でした。
https://www.megiefuneralhome.com/obituaries/Stephen-E.-Wilhite?obId=24311617
Stephen Wilhite, creator of the GIF, has died - The Verge
https://www.theverge.com/2022/3/23/22992066/stephen-wilhite-gif-creator-dies
Steve Wilhite, the inventor of the GIF, dies aged 74 after COVID-19 battle - ABC News
https://www.abc.net.au/news/2022-03-24/steve-wilhite-man-behind-the-gif-dies-covid-19/100935486
ウィルハイト氏は1948年3月3日生まれ。
アメリカ最大のパソコン通信会社だったCompuServeに所属していたウィルハイト氏は、CompuServeで使用されていたメインフレーム・DECsystem-10のコンパイラとランタイムシステムの作成チームをまとめていました。当時の成果物としては、FortranとBASICのコンパイラとランタイムシステム、BLISSをサポートするライブラリ「BTOOLS」が知られています。
その後、データ圧縮アルゴリズムにLZWを採用することで、見た目の品質を落とすことなくファイルサイズを縮小する画像ファイルフォーマット「GIF」を開発。GIFは低速通信環境でもファイルサイズの大きな画像を素早く表示できるということ、そしてファイルフォーマットの著作権はCompuServeが所有しつつも利用はライセンスフリーとしたことで、広く普及しました。
しかしGIFはのちに、LZWを採用したことによる特許問題が発生します。LZWはテリー・ウェルチ氏らによって開発されたアルゴリズムで、取得された特許は電子機器メーカー・スペリーが保有しました。1986年、コンピューター企業のバローズがスペリーに敵対的買収を仕掛けて合併し、ユニシスが誕生しました。ユニシスはLZWの特許を100社以上にライセンスし、アメリカだけでなく日本、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、カナダでも特許を取得しました。
CompuServe側はLZWのライセンスに気づかず、ユニシス側もGIFにアルゴリズムが使われていることがわかってもライセンス料を取らない方針だったそうですが、1993年、GIFが普及するとライセンス料を請求。1994年にライセンスに関して合意がなされたものの、ユーザーは強く反発し、1995年に新たな画像ファイルフォーマットとして「PNG」が誕生。しかしPNGでは完全にGIFの置き換えはできなかったことから、「LZW圧縮を含まないGIF」も開発されました。LZWの特許はアメリカでは2003年、日本では2004年に失効していますが、その間にPCや通信環境の変化があったこともあり、GIFが使用される頻度は大きく減少しています。
なお、「GIF」という名称は「読みがジフなのかギフなのかわからない」と日本でも海外でも突っ込まれていますが、ウィルハイト氏自身は2013年のウェビー賞授賞式で「ジフと発音します、ギフではありません」と表明しています。
It's Pronounced 'Jif' not 'Gif' - YouTube