Mac StudioとStudio Display、そのスゴさは性能だけじゃない(本田雅一)
Mac StudioとStudio Displayのコンビネーションを試した。すでに掲載されている記事を見ると、その多くは性能に注目しているようだ。
筆者が試したのはMac Studioの中でもM1 Ultraの最上位、20CPU、64GPUを搭載、128GBメモリに4TBのSSDと、これ以上ないほどの高性能を誇るモデルである。
M1 Ultraのワットあたり性能は凄まじいが……
性能面ではCPUが見事にM1 Maxの2倍、GPUに関しては1.75倍前後のスコアを出しており、ある意味予想通りの結果と言える。
ひとつのパッケージに封入されたSoCとしては驚くべきパフォーマンスだが、それがMac miniを縦方向に数センチ伸ばしただけで実現しているところが最も大きな驚きだろう。M1 Ultraが勝負を挑んでいるのは、どれも電力消費を気にせずに性能を追求したチップばかりだ。
消費電力あたりのパフォーマンスを重視したM1アーキテクチャの拡大版だけに、2倍の性能を得るために4倍の電力が必要といった無駄が起きることもない。最大動作周波数はM1からM1 Ultraまで変わらないのだから、それも当然といったところだろうか。そのため負荷をかけても冷却ファンがけたたましく回り始めることもない。
全コアのCPU利用率を100%に張り付かせ、GPUの利用率も75%以上という状態を作って15分以上使っていた時でさえ、本体はほんのりと暖かくなるだけ。冷却ファンは回ってはいるものの、耳を近づけなければ回転していることを確認できないほどだった。
一方でMac Studioはパフォーマンスの絶対値で勝負する製品ではない。M1 Max、M1 Ultraという高パフォーマンスを高い電力効率で実現したプロセッサの良さ活かすため、コンパクトな筐体に収めたクリエイター向けのコンピュータと言えるだろう。絶対的なパフォーマンスに焦点を当てた製品ではない。
しかし、視点を変えて製品全体を俯瞰してみると、また別の景色も見えてくる。
これだけのチップを開発し、実際に製品に搭載していること自体がスゴいのだが、実際に使い始めてみると別の点にスゴみを感じた。それはディスプレイをセパレートにした従来のコンピュータにはなかった、ディスプレイとMacのシステムとしての統合がなされていることだ。そして、セパレート型にも関わらず、まるで一体型のような体験を届けてくれる理由のほとんど全てはStudio Display側に集中している。
このように考えると、実は今回のStudioコンビの中でも、Macの選び方に大きな影響を与えているのはStudio Displayであることが理解できるはずだ。Mac Studioは必要な性能、メモリやSSDの容量など要件を満たせるかどうかが選ぶ上でのポイントになるが、その前に考えるべきなのは"Studio Displayに何を組み合わせるか"ということ。
禅問答のようだが、スタート地点を変えてみるとMac選びのポイントがすっきりしてくる。
どのMacと組みわせても"最新Mac"の体験が得られるStudio Display
Studio Displayには、MacBook ProやiPad Proなどが搭載するさまざまな要素が盛り込まれている。高画質なカメラ、高音質なマイクロフォンとスピーカー、それに色温度の最適化を行うTrue Toneやリファレンスモード、バックライトの明るさを自動調整することすら、ことごとくiMacやMacBook Proと同じような振る舞いをしてくれる。
すでに24インチiMacで実現していたワイヤレスキーボードを通じたTouch IDが可能になっていたことも併せると、ノート型、ディスプレイ一体型デスクトップ、そしてセパレート型と、あらゆる組み合わせで体験の質が統一されることになる。
体験してみればわかることだが、Studio Displayは5K解像度の大型ディスプレイでありながら、全面ガラスから液晶パネル面までを完全に接着したフルラミネーション構造で高画質。Display-P3対応の広色域で、色調整もiPad ProやMacBook Proと同等レベルに追い込まれている。最大輝度は600nitsとHDR向けディスプレイには及ばないが、コントラストも高くダークルームでの映像評価に使うのでなければ、ほとんど表示に不満はない。
さらに出色なのが内蔵マイクロフォンとスピーカーだ。中でもスピーカーの音質は素直で定位感が良く、空間オーディオの再現性が高いことに感心した。低域の再生能力が高いとはいえないため、映画などの映像作品を楽しむ際にはサブウーファーが欲しくなるが、ポピュラー音楽を楽しむには十分で、中途半端な外付けスピーカーは必要ない。
その設定やコントロールはmacOS側から行い、Studio DisplayのファームウェアもMacからとなるため、Mac以外との組み合わせは諦めた方がいいが、接続相手がMacならば、それがどんなMacであれ(5Kディスプレイに対応しているなら)その体験レベルを最新のMacと同等に引き上げてくれる。
Studio Displayがデスクトップ環境の構築指針を変える
話がすっかりStudio Display中心になってしまった。
もしあなたがM1 UltraやM1 Maxを必要としていて大画面での作業を求めているなら、Mac StudioとStudio Displayの組み合わせが最適だ。しかしそうではない読者の方がおそらくは多いだろう。
M1で十分、そしてデスクトップでしかMacを使わないのであれば、M1搭載Mac miniを選ぶのがいい。あるいは外に持ち出しても使いたいならMacBook Airがいいだろうか。いや、まだ次の世代まではIntel搭載機を使い続けるという人もいるに違いない。
どんな状況であれ、27インチの高品位なディスプレイにMacを接続してデスクトップで作業をしたいのであれば、Studio DisplayがどんなMacとでもベストなパートナーになってくれるだろう。
その際に最も高パフォーマンスなMacを選びたいならば、Mac Studioを同時に購入すればいい。このディスプレイは、デスクトップ型、ノート型を問わず、Macを購入する際の指針に大きな影響与える存在だ。