3月18日に開幕する第94回選抜高校野球大会(センバツ)。新2年生にして高校通算50本以上もの本塁打を量産している佐々木麟太郎(花巻東)が大きな注目を集めているが、他にはどんな逸材が出場するかご存知だろうか。そこで、センバツで必見の10選手を厳選し、プレーの特徴と見どころを紹介していこう。


昨年夏の甲子園でも好投した京都国際のエース・森下瑠大

森下瑠大(京都国際/3年/投手/179センチ・76キロ/左投左打)

今大会の投手の目玉的存在。球持ちのいい投球フォームで、低めに生きたボールを投げられるのが最大の長所。カーブ、スライダー、カットボール、チェンジアップと変化球の精度は高校生とは思えず、コントロールもいい。高校2年秋時点での完成度は文句なしだ。昨秋時点で最速143キロだった球速が今春に140キロ台後半まで乗ってくれば、ドラフト1位候補に浮上する可能性がある。二枚看板を張る右腕の平野順大も好球質の本格派で、京都国際は大会2日目に長崎日大と初戦を迎える。
最速149キロを誇る市和歌山の米田天翼

米田天翼(市和歌山/3年/投手/174センチ・78キロ/右投右打)

左腕が森下なら、右腕は米田。身長174センチと上背はないものの、最速149キロのストレートは捕手のミットを激しく叩く球威がある。2年秋時点での球の強さに関しては、1学年上の小園健太(DeNA1位)の同時期をもしのぐ。タイプ的には小園というより畔柳亨丞(中京大中京→日本ハム5位)に近く、昨秋は左打者へのフォークに手応えを得た。近畿大会準々決勝の天理戦では流れをつかめず5失点で敗戦したが、能力の高さは間違いない。今大会は5日目に花巻東との好カードを戦う。


九州大会準優勝の立役者となった大島のエース・大野稼頭央

大野稼頭央(大島/3年/投手/175センチ・65キロ/左投左打)

奄美大島からセンバツ切符をつかみ取った離島のサウスポー。リズミカルな投球モーションで、マウンドでのシルエットは松井裕樹(楽天)と重なる。最速146キロの球速がクローズアップされるが、カーブ、スライダー、チェンジアップを駆使した緩急自在の投球センスこそ、この投手の真骨頂。味方の守備のミスにも動揺せず、淡々と次の打者を打ち取っていく。ボールに一段と球威がついてくれば、本人が目標とする高卒でのプロ入りが見えてくる。大島は大会5日目に強打の明秀学園日立と対戦する。


背番号14ながらエース格として神宮大会優勝に貢献した大阪桐蔭・前田悠伍

前田悠伍(大阪桐蔭/2年/投手/180センチ・77キロ/左投左打)

昨秋に初めてこの1年生左腕を見た時は、「向こう2年間は大阪桐蔭の天下は堅いだろう」と思うほど衝撃を受けた。指先にピチッとかかる好球質のストレート、守りやすいテンポのよさ、スライダー、カーブ、チェンジアップも自分の意のままに操り、再現性の高いフォームゆえコントロールも正確。さらにマウンドで崩れる気配を見せない勝負根性と、「勝てる投手」の要素をすべてコンプリートしている。ここへさらなる馬力が搭載されれば、難攻不落の存在になるだろう。大阪桐蔭のセンバツ初戦は大会6日目、好左腕・冨田遼弥を擁する鳴門との好カードだ。


超高校級の強肩を誇る九州国際大付の野田海人

野田海人(九州国際大付/3年/捕手/174センチ・75キロ/右投右打)

超高校級の"爆肩"を誇る捕手。本気で投げた二塁送球はモノが違い、昨年のドラフト1位・松川虎生(市和歌山→ロッテ)以上だろう。元楽天スカウト部長の楠城徹監督も、捕手としての資質を高く評価する。手薄な投手陣をカバーするため、試合終盤にマウンドに上がり140キロ台中盤の剛速球を披露する場面も。肉体的にたくましくなるにつれ、打撃のパンチ力も増している。九州国際大付は大会初日にクラーク記念国際と対戦。昨秋の明治神宮大会での再戦(昨秋は九州国際大付が5対1で勝利)となる。


強肩強打の捕手としてチームを支える大阪桐蔭・松尾汐恩

松尾汐恩(大阪桐蔭/3年/捕手/178センチ・76キロ/右投右打)

強肩強打の捕手。ショート経験者らしく、フットワークを使える機能的なスローイングが光る。西谷浩一監督から捕手としての細やかな機微を学んだ今春は、扇の要としてさらにレベルアップした姿を見たい。大阪桐蔭の主軸らしく自分の間合いでボールを呼び込めて、瞬発的なスイングで仕留める打撃もハイレベル。昨秋は死球を受けた影響で足を痛めながら、全力疾走で走り抜ける熱さも見せた。センバツ初戦では、冨田(鳴門)との対戦が楽しみだ。


佐々木麟太郎に匹敵する強打を誇る花巻東の田代旭

田代旭(花巻東/3年/捕手/180センチ・79キロ/右投左打)

全身をフルに使って振りきる、アクションの大きなスイングが魅力の左打者。昨夏の新チーム結成以降の本塁打量産ペースは、1学年下の怪童・佐々木麟太郎をも上回る。昨冬に慢性的な痛みを抱えていた右肩を手術。スローイングに強さが出てくれば、ドラフト指名も見えてくる強打の捕手だ。今春はともに手術明けの佐々木とともに早くも好調をアピールしているが、センバツ初戦での剛球右腕・米田(市和歌山)との対決が大きな試金石になる。


今大会大注目のスラッガー、花巻東の佐々木麟太郎

佐々木麟太郎(花巻東/2年/内野手/183センチ・117キロ/右投左打)

高校1年生にして、金属バットを振ることが相手チームにとって危険と思えるほど。スタンドインするためのスイングを肌感覚で知っているスラッガーだ。胸郭出口症候群による手のしびれに悩まされ、昨年12月に両肩を手術。療養を経て2月下旬からバットを振り始めたばかりだが、練習試合では早くも本塁打を量産している。とはいえ、センバツ初戦の相手は大会屈指の速球派である米田(市和歌山)。初戦を突破したとしても、大島や大阪桐蔭など好投手を擁するチームと同ブロックという逆境が立ちはだかる。期待は青天井に広がるが、あくまで調整不足を考慮したうえで見守りたい。


堂々とした体格から快打を連発する広陵の2年生スラッガー・真鍋慧

真鍋慧(広陵/2年/内野手/189センチ・89キロ/右投左打)

大型スラッガーの卵。柔らかさと強さが共存したスイングで、打球の初速スピードが違う。中井哲之監督も「ここまで飛ばせるのは丸子達也(JR東日本)以来で、真鍋のほうが広範囲に本塁打を打てて、足も速い」と高く評価する。佐々木(花巻東)や佐倉侠史朗(九州国際大付)とともに、新2年生の大物大砲としてしのぎを削っていくことになるだろう。一塁守備もミットさばきが柔らかく、今後は一塁以外での守備も見てみたい素養の持ち主だ。広陵は大会2日目に敦賀気比と対戦する。


京葉ボーイズ時代はスーパー中学生として名を馳せた大阪桐蔭・海老根優大

海老根優大(大阪桐蔭/3年/外野手/182センチ・86キロ/右投右打)

目覚めの時が近づく大器。千葉・京葉ボーイズでは侍ジャパンU−15代表に選ばれ、本塁打を量産。将来を嘱望された「スーパー中学生」だったが、大阪桐蔭では名門の高い壁に阻まれた。だが、昨秋からレギュラーをつかむと爆発的なインパクトの打撃とセンターからの強肩で台頭。パワー、体格、ポテンシャルは世代屈指だけに、バットの芯でとらえる確率が上がってくればセンバツで脚光を浴びるだろう。