Jリーグは序盤5節を終了して、横浜F・マリノスと川崎フロンターレが1位と2位をともに勝ち点10、得失点差2で走っている。消化試合数にバラツキがあるとはいえ、3位柏レイソルとは勝ち点4の差がある。早くもマッチレースを予想させる展開だ。

 ご承知のように、昨季は川崎が横浜FMに勝ち点13差をつけて優勝した。途中、横浜FMが猛追し、シーズン後半に向けて一瞬、競った展開になったが、最終的には川崎が楽に逃げ切った。

 三笘薫、田中碧がシーズン半ばに欧州へ移籍した川崎は、戦力ダウンが懸念された。実際、横浜FMに差を詰められた原因にもなったわけだが、川崎が追撃をかわすことができた理由は、その前のシーズンから、鬼木監督が披露してきた5人の選手交代枠を最大限に活用する采配センスにあった。勝利と交代枠をフルに使う采配が相乗効果となり、次戦以降への可能性を広げる勝利を重ねることができた。

 森保一監督ではないが、目先の勝利を欲しさに特定の選手で戦おうとする監督が目に付く中、日本サッカー界においては進歩的な、称賛されるべき采配に映った。

 だが、今季の鬼木采配に過去2年のような鋭さ、前向きさはない。三笘、田中の後を追うように旗手怜央がセルティックへ移籍。その一方で、それを補うような満足な補強ができなかった。ジェジエウの合流も遅れている。そうした川崎の現状に、誰よりも鬼木監督が危機感を抱いている。強気になれずにいるように見える。

 試合も接戦続きだ。初戦のFC東京戦は1-0で何とか切り抜けたが、続く横浜FM戦は2-4の大敗。優勝を争うライバルに、攻撃力の違いを見せつけられたショッキングな敗戦だった。

 3戦目の鹿島アントラーズ戦には2-0で勝利したが、これも相手のミスに助けられたあまり喜べない勝利。4戦目の浦和戦も接戦となったが、こちらは何とか2-1で切り抜け、きっかけを掴んだかに見えた。しかし、直近のガンバ大阪戦は2-2。終了間際、小林悠の狡賢いプレーで辛うじて追いつき、敗戦を免れた格好だ。

 苦しい試合が続く川崎。現在の川崎には、過去2シーズンに見られたような余裕はない。あっぷあっぷの戦いが続く。

 だが、戦力的に苦しいのは横浜FMも同じだ。川崎以上かもしれない。柏レイソルと対戦した3戦目では、10番マルコス・ジュニオールが前半終了間際に怪我。センターバック(CB)畠中槙之輔も肉離れを押してプレーしたことが仇となり、相手FWドウグラスを反則で止める結果を招き退場。同じくCB岩田智輝もレッドカードで一発退場するなど、散々な目に遭い1-3で敗退した。開幕2試合目で川崎に4-2で勝利したものの、3戦目を終えて1勝1分け1敗と波に乗れずにいた。

 出場できない選手を多く抱えた4戦目のヴィッセル神戸戦は、横浜FMにとって鬼門だった。どんなメンバーを編成して臨むのか。ケヴィン・マスカット監督の采配が注目された。

 右ウイングの宮市亮は今季初先発だった。1トップ下に起用された西村拓真は、このポジションでプレーするのは初めてだったという。喜田拓也、渡辺皓太が故障で出場できない守備的MFには、初スタメンの20歳、藤田譲瑠チマとこの日がJ1デビュー戦の18歳、山根陸が並んだ。

 相手の神戸は昨季の3位チーム。ピッチに立った顔ぶれを見るや心配になったが、それは杞憂に終わった。結果は2-0。横浜FMの底力を見えられた試合といっても言い過ぎではない。

 似たような状況で戦った続く清水エスパルス戦も2-0で完勝。横浜FMと川崎は同勝ち点で並ぶが、現在の状況を楽観的に捉えていいのは横浜FMになる。理想のスタメンからほど遠い顔ぶれで戦いながら、首位を走る。余力を感じずにはいられない。