〈食べログ3.5以下のうまい店〉真夜中の無国籍バーで食べるエスニックカレー

2022年3月5日 19時0分

食べログマガジン

みんなの感想は？

おいしいもの好きのあの人に「食べログ3.5以下のうまい店」を教えてもらう本企画。仙台で深夜にカレーが食べたくなったら？これまで4,000軒以上のカレーを食べ歩いたカレー細胞（松宏彰）さんお墨付きの、カレーがうまいバーにご案内。

〈食べログ3.5以下のうまい店〉

巷では「おいしい店は食べログ3.5以上」なんて噂がまことしやかに流れているようだが、ちょっと待ったー！食べログ3.5以上の店は全体の3%。つまり97%は3.5以下だ。

食べログは口コミを独自の方法で集計して採点されるため、口コミ数が少なかったり、新しくオープンしたお店だったりすると「本当はおいしいのに点数は3.5に満たない」ことが十分あり得るのだ。点数が上がってしまうと予約が取りにくくなることもあるので、むしろ食通こそ「3.5以下のうまい店」に注目し、今のうちにと楽しんでいるらしい。

そこで、グルメなあの人にお願いして、本当は教えたくない、とっておきの「3.5以下のうまい店」を紹介する本企画。今回の推薦人は、国内外で4,000軒以上のカレーを食べ歩いた“カレーキュレーター”のカレー細胞（松宏彰）さん。松さんが注目する最新カレータウン・仙台で、エスニックカレーの聖地を取材した。

教えてくれる人

カレー細胞（松宏彰）
兵庫・神戸生まれ。国内だけでなくインドから東南アジア、アフリカ南端、南米の砂漠まで4,000軒以上を食べ歩き、Web、雑誌、TVなど各メディアでカレー文化を発信し続ける。年2回、カレーにまつわるカルチャーを西武池袋本店に集結させる「東京カレーカルチャー」など、イベントプロデュースも多数。TBS「マツコの知らない世界」ではドライカレーを担当。Japanese Curry Awards選考委員。食べログアカウント：ropefish

夜な夜なカレーマニアが集う「Bar Ritikuku」

仙台出張にかこつけて、松さんが朝昼晩とカレーを食べまくっていた時のこと。夜中でもカレーを食べられる場所を求めてたどり着いたのが「Bar Ritikuku（バーリチクク）」。バーでカレー？食べログをチェックしてみると、点数は3.34だが、確かにレビュアーも絶賛するカレーの人気店らしい。

場所はネオンきらめく夜の街、国分町の雑居ビルの中。店内は喫煙可能につき、未成年者の入店はお断りとのこと。外から店内はのぞけず、大人でも決して入りやすいとは言えない店構えだけれど、カレー好きなら勇気を出して、その扉を開けてみたい。

※点数は2022年2月時点のものです。

扉を開けた先には、スパイスの香りと異国情緒が漂う空間

ここは、スリランカからインド、東南アジア、南米、アフリカまで、さまざまな国のグルメに出合える無国籍バー。旅が好きで、旅を通して世界の食文化に魅せられた店主の渡邉純さんが、2010年に始めた店だ。

渡邉さんの料理の師匠は、旅先で出会った人たち。あえて観光客が行かないエリアに赴き、飛び込みでレストランの厨房を見学させてもらったり、仲良くなった人の家に招いてもらったりと、世界中を旅しながらディープに料理を探求してきた。そうしてアウトプットされたメニューは、日本では珍しいものも多く、食通や旅好きを魅了してやまない。

各国から仕入れた香辛料や調味料とともに、渡邉さんの旅の思い出も料理の良きスパイスに

「その国の歴史や文化に触れられるのが食の魅力」と話す渡邉さん。なかでもカレーは、地域性が色濃く表れている料理だと思う。

同店では、カレーだけでも常時7種類以上。スリランカ、インド、タイ、エチオピアと、これだけのエスニックカレーが揃う店は、なかなかない。地域によって食材や調理法、盛り付け方はさまざま。それをすべて、カウンター越しの小さなキッチンでこしらえているなんて。

カレー細胞（松宏彰）さん
「ちょっとおいしいカレーを用意しているバー」くらいの予測値で伺ったら、メニューを見てたまげました。え？これをバーで、深夜まで？こんな店、仙台はおろか東京にもありません。

深夜バーのフード概念を覆す本気の一皿

混ぜて食べる「スリランカ式カリープレート」

松さんのイチオシは、店の一番人気でもある「スリランカ式カリープレート」。バスマティライスを囲むように、スパイシーで濃厚なチキンカレーと酸味を感じるマグロカレー、そして、10種類もの副菜がどっさり！一皿でいろいろ味わえて、混ぜるごとに味の化学反応を楽しめるのがスリランカカレーの醍醐味だ。

カレー細胞（松宏彰）さん
最近はスリランカ料理も広まり、「混ぜて食べる」が浸透してきたようです。けれどまずは、一品ずつ味わってみましょう。それぞれの味をインプットしたら、あとは混ぜてOK。これが、おいしさを脳に届ける順序です。

副菜は旬の野菜や豆、小魚をスパイスと一緒に煮たり、炒めたり、漬け込んだり。それぞれ混ざり合った時の調和を考えて作られているから、どう混ぜても不思議と馴染む。その奥深さを味わいながら、自分好みの味に混ぜよう。辛さレベルは中辛で、オーダー時に辛さ増しも可能。

カレー細胞（松宏彰）さん
副菜もちゃんと手が込んでいて、スリランカ料理の味の決め手となる「モルディブフィッシュ」がふんだんに用いられています。深夜バーのフードの概念を覆す一皿ですよ。

モルディブフィッシュとは、マグロやカツオを乾燥させたスリランカの食材。かつお節に似ていることから、日本人に馴染みやすい味でもある。自家製のスリランカ式ミックススパイス「トゥナパハ」（写真奥）にも含まれ、チキンカレーや副菜に使用。木の実を乾燥させた「ゴラカ」（手前）は、マグロカレーの臭み消しと酸味付けに。