抽象的で曖昧な内容の特許を武器に他社を特許侵害で訴え、賠償金やライセンス料を巻き上げる「パテント・トロール」に遭遇したアメリカの学習向け電子機器販売店・SparkFunが、裁判でパテント・トロールを撃退したことで得られた教訓をまとめました。

A Patent Troll Backs Off - News - SparkFun Electronics

https://www.sparkfun.com/news/3970

SparkFunの創業者であるNathan Seidle氏は2021年7月に、Altair Logixという企業から特許侵害訴訟を起こされました。この訴訟でAltair Logixは、SparkFunが2017年まで販売していたpcDuinoという基板の技術が自社の特許を侵害していると主張していましたが、SparkFunによるとそれらの特許は業界で当たり前に使われている技術に別の名前をつけて登録したものに過ぎなかったとのこと。具体的にどのような訴えだったのかは、以下の記事を読むとよく分かります。

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この特許侵害の訴えに対し、SparkFunが受けて立った結果、最終的にAltair Logix側に訴訟を取り下げさせることに成功したとのこと。そこで、この結果から得られた教訓を、Seidle氏は以下の3つにまとめました。

◆教訓1:パテント・トロールの問題に詳しい弁護士を自分で見つけること

SparkFunは当初、訴訟についてSparkFunに情報提供してくれた弁護士に推薦された弁護士事務所を訪れました。しかし、この弁護士事務所はSparkFunの案件を扱うのに不向きだったとのこと。そこで、Seidle氏が電子フロンティア財団(EEF)に相談をしたところ、EEFは知的財産訴訟に詳しい弁護士のレイチェル・ラムキン氏を紹介してくれました。



ラムキン氏と協議した結果、SparkFunの案件はまさにラムキン氏の得意分野だということが分かったので、Seidle氏は改めてラムキン氏に弁護を依頼することができました。とはいえ、弁護士を立てるのに手間取ってしまったのは事実なので、Seidle氏は「日常的な問題を解決するのが得意な地元の弁護士が特許訴訟も解決してくれると期待する前に、もっと下調べをするべきでした」と述べました。

◆教訓2:妥協して和解金を支払わないこと

今回、SparkFunを訴えたAltair Logixは、SparkFunのほかにASUSやCaterpillar、Texas Instrumentsなど名だたる大企業を相手に訴えを起こしたことがあるとのこと。こうした企業は資金力があるので、少額の和解金ならすぐに支払うことができますが、そうするとパテント・トロールが次の標的を見つけるための資金源になってしまいます。そこでSeidle氏は、パテント・トロールの標的になった企業に対して、和解金を支払う予算を徹底抗戦に使うよう呼びかけました。



◆教訓3:自分でも裁判の文書を入手して勉強すること

今回の訴訟に臨むにあたり、Seidle氏は裁判資料の電子版を公開している公共サービスのPublic Access to Court Electronic Recordsに登録をして訴訟に関する文書を入手し、今回の案件を担当する裁判官の考え方や姿勢を研究したとのこと。この経験から、Seidle氏は「弁護士経由でしか資料を入手できないという決まりはありません。1ページあたり0.1ドル(約10円)程度の手数料を払って文書を自分で入手し、時間とお金を節約しましょう」と話しました。

また、Seidle氏は末尾で「他の人がパテント・トロールに訴えられないことを願っていますが、もし訴えられたらまず深呼吸をして、自分が無力ではないことを思い起こしてください。誰もがこれを実践して団結すれば、パテント・トロールは消えていくはずです」と呼びかけました。