道路脇で「カチカチ…」する人は日給3万円? 廃止傾向の交通量調査員は何してる?

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交通量調査員の廃止の理由とは?

 街中で、道路脇に設置した椅子に座って、カウンターで人やクルマの流れを調査する人を見かけることがあります。
 
 これは、交通量調査と呼ばれるものですが、国土交通省は2021年の秋から人手による調査を廃止することを発表しました。

道路脇でカチカチするだけ? 交通量調査員の仕事とは?

 国として大々的におこなわれているのは、「道路交通センサス」と呼ばれる全国道路・街路交通情勢調査です。

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 この調査は5年おきに、道路の計画や建設、維持修繕そのほか管理の基礎資料を得ることを目的におこなわれています。

 道路交通センサスには、「自動車起終点調査(OD調査)」と「一般交通量調査」の2種類の調査があります。

 一般交通量調査はさらに3種類に分類されており、車線数や車道幅員、交差点などの設置状況を調査する「道路状況調査」、特定の区間での交通量を調査する「交通量調査」、道路を走行するクルマの平均速度を調査する「旅行速度調査」が存在。

 街中で見かけるのは、一般交通量調査のうちの「交通量調査」であることが一般的です。

 道路交通センサスでの調査は、2020年に実施が予定されていましたが、新型コロナウイルスの影響で1年遅れの2021年秋に調査がおこなわれました。

 その一方で、国土交通省は2021年秋から人手による調査員を廃止することを公表していますが、これにはどういった理由があるのでしょうか。

 国土交通省の道路企画課の担当者は以下のように話します。

「今後は技術の進展や効率化をしていく必要があり、技術の活用としてAI観測を導入することになりました。

 機械を用いて観測をおこなうことで、5年に1度ではなく常時カウントもできるようになるのは利点かと思います」

 すでに今秋から人手観測を廃止し、CCTVカメラを導入したAI観測がおこなわれています。

 国土交通省が発表している「CCTVカメラ(AI解析)の精度に関する報告」の資料では、常設されている通過するクルマの台数を数えるシステムであるトラフィックカウンターと比較した際にも、車種区分の細分化や二輪車・歩行者への対応といった高度化の可能性が検討されています。

 一方で、今後の課題について前出の担当者は「昼間に比べて、夜や天候が悪い際はカメラの精度が悪くなってしまうので、今後精度向上についての取り組みを検討していく予定です」と話しています。

 今後、CCTVカメラの精度向上の取り組みがなされることで、よりAI観測による交通量調査の普及が拡大していくといえます。

日給3万円も貰える! 交通量調査って具体的にどんな仕事?

 そもそも交通量調査は、具体的にどういった調査がおこなわれているのでしょうか。

 国土交通省が公表している「一般交通量調査について」の資料によると、この道路交通センサスでの交通量調査では、調査対象路線を交通量調査単位区間に分割し、そのうち選定した区間において、この地点を通過する交通量の調査がおこなわれています。

 実際には、秋季の平日に、方向別、2車種別(小型車・大型車別)、12時間交通量または24時間交通量の調査し、自動車に加えて二輪車、歩行者の計測もおこないます。

 観測時間帯も決められており、12時間観測では午前7時から午後7時、24時間観測では午前7時から翌日午前7時、または0時から翌0時と定められています。

 観測方法は、基本的には機械観測で、このほか人手による観測に加え、簡易型のトラフィックカウンターを設置しての観測もあるようです。

 国土交通省などによる観測については調査員が廃止されているものの、自治体でおこなっている観測では人手による観測を継続している都道府県もあり、現在でもいくつか求人サイトで募集がおこなわれています。

 ある求人サイトの募集ページを見てみると、仕事内容には「クルマの数を数える仕事」と記載されており、勤務時間は7時から翌日7時の実働16時間程度と記載されて、日給は3万円となっています。

 ほかの求人ページでは、勤務時間が7時から19時の12時間、6時から20時の14時間、6時から翌6時の24時間から選ぶことができ、12時間では1万3000円、14時間では1万6000円、24時間では2万6000円です。

 備考欄には、「各交代・休憩あり」との記載も見られますが、交通量調査は観測時間が長い分拘束される時間も長いともいえます。

 一方で、特別資格が必要なく短期単発な仕事であることから、経験したことがある人や、手軽に働きやすいという人もいるかもしれません。

交通調査員は腕章を付けていることがある

 こうした交通量調査は、国の統計調査以外にもおこなわれることはあるのでしょうか。

 実際に交通量調査などをおこなう株式会社フィールドテクノシステムの担当者は以下のように話しています。

「基本的には、国や自治体・民間から依頼を受けておこなっています。

 人の流れや道路情勢を調べるための統計を取るのはもちろん、新しい道路を作る際の周辺の影響について調査する際にも交通量調査をおこないます。

 また、マンションや大きい店舗を建てる際や、工事の規制、片側通行を実施する際にも事前に調査をすることがあります」

※ ※ ※

 現在では、自治体なども含め人手による交通量調査がおこなわれている場所はいくつも存在します。

 しかし、今後AI観測の精度が向上することで、こうした道路でのカウンターを使っての調査員も徐々に見られなくなっていくかもしれません。