次期「GT-R」はe-POWER搭載? 新型「オーラNISMO」登場で見えた日産の電動NISMO戦略

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「ノート」の上級モデル「オーラ」にNISMOを新設定

 2021年8月17日 12時前、日産が特設したYouTubeのライブ配信では「オールニューNISMOモデルアンベール」というタイトルが掲げられており、どのモデルにNISMOが設定されるのか、YouTubeのコメント欄でも「ノート」や「キックス」ではないかと発表前から盛り上がりを見せていました。

 今回、ノートの上級モデルである「オーラ」にNISMOが設定されたわけですが、ユーザーの声からも分かるように、オーラのNISMO化はユーザーはもとよりメディア関係者にとっても意外な話だったと思います。

モータースポーツの技術を注入した日産新型「ノート オーラNISMO」

【画像】新型オーラNISMOがカッコいい! 赤いアクセントがイケてるNISMOロードカー(29枚)

 日産としては、日本車メーカーとしては唯一無二の存在で、しかも欧州高級ブランドのエントリーモデルをライバル視するという商品戦略を打ってきたモデルがオーラです。

 それに、さらに価格の高いNISMOを設定するという発想は、まさに日産が事業再生を目指して推進している「NISSAN NEXT」を象徴するものだと感じます。

 また、今回のオンライン発表会で新型オーラNISMOの開発者の話を聞いていると、日産としてやっと「NISMOのこれから」に対する方向性が定まってきた印象がありました。

 NISMOは日産のモータースポーツ活動を中核として、アフターマーケット向けのチューニングパーツを企画販売する企業です。

 モータースポーツにおいて、国内ではスーパーGT、海外ではEVのフォーミュラeに日産ワークスとして参戦しています。

 ただし、フォーミュラeについては、2014年の開幕当初は世界的に大きな話題となりましたが、その後は徐々に日本でのメディア露出が減り、日産が参戦していることを実感しているユーザーがそれほど多くない印象があります。

 一方スーパーGTについても、日本を含めたグローバルで量産車のEVシフトが急激に進むなか、今後の車両規定をどうするべきかという岐路に立っている状況です。

 また、アフターマーケット市場については、日本では近年、スポーツカー路線からSUVやアウトドア路線へと需要が変化しています。

 こうした状況を踏まえて、日産としては「NISMOのこれから」を熟慮するなかで、新型オーラNISMOという形が具現化されたのだと思います。

 また、海外でのNISMOですが、主力は「GT-R」と「370Z(日本名:フェアレディZ)」で、アメリカ市場ではミッドサイズピックアップトラックの「フロンティア」向けなどのオフローダー仕様が人気商品となっています。

 しかし、そうした現行商品のなかでは「NISMOのこれから」を感じ取れるようなトレンドは見えてきませんでした。

次期「GT-R」はe-POWERを搭載する!?

 新型オーラNISMOの商品性で注目されるのは、やはり日産の電動パワートレイン「e-POWER」のチューニングです。

 日産は現在、ルノー日産三菱アライアンスのなかで、電動化において「リーフ」と「アリア」による中小型EVの基礎技術、エンジンを発電機として使うe-POWERについて、リーダーという位置付けとなっています。

次期GT-Rもe-POWER搭載か?(GT-R NISMO スペシャルエディション 2022年モデル)

 e-POWERについては、日本では2020年6月に発売されたキックスと同年12月にフルモデルチェンジしたノート(3代目)から新世代仕様を導入しており、また海外では新型「エクストレイル」に搭載される1.5リッターVCターボによるe-POWERが登場。

 e-POWER向けエンジンの大排気量化については、2021年春に日産がメディア向けにおこなったオンライン技術意見交換会のなかで明らかになっていました。

 その意見交換会でe-POWER開発者からは、「e-POWERのさらなる進化」を予期させるようなコメントもあったと記憶しています。

 こうした一連の日産の動きを踏まえると、「NISMOのこれから」の中核に「チューンドe-POWER」という存在が確立することは間違いないでしょう。

 そのなかで、やはり気になるのが次世代GT-Rの動向です。

 グローバルでの電動化シフトの潮流のなかで、GT-RのEV化が想定されていてもおかしくはないはずですが、高性能e-POWER化が現実的な落としどころではないでしょうか。

 e-POWERの未知なる可能性を示すためにも、新型オーラNISMOの登場は日産にとって大きな意義があると思います。