2021年3月6日、次のような写真付きのツイートが投稿され、話題となっている。

写真は、動物園の展示室のようだ。そこには、こんな案内が出ている。「さむいのでハリネズミの展示はおやすみしてます...」。それに続くのが、こんな言葉だ。

「ハリネズミのかわりによく似たブラシを展示しています」

たしかに、その左隣りには、ブラシのような物体が置かれている。ツイッターユーザーの「ぽ」(@popoyo_py)さんが「ブラシ見てきた」とつぶやきつつ投稿したこの写真には、なんと30万件を超える「いいね」が付けられ、いまもなお拡散中だ(3月9日夕現在)。

ツイッターには、こんな声が寄せられている。

「ブラシーボ効果と名付けよう」
「2度見したwww」
「これ考えた人天才ですねww SNS受け半端ないっす!」
「観に来た人には申し訳無いですけど、張り紙の作者 ユーモアあるわ」
「だいたい合ってるのでヨシ!!」
「逆に行きたい」

ユーザー絶賛中! といった状態である。

このなんともユーモラスな案内は、いったいなぜ登場したのか?

Jタウンネット記者は、投稿者の「ぽ」さんと、愛知県豊田市の鞍ヶ池(くらがいけ)公園の飼育員に話を聞いた。

馬をブラッシングしながら、ふと思いついた


「ぽ」(@popoyo_py)さんのツイートより

愛知県在住の投稿者「ぽ」さんによると、撮影した日は、3月6日(土)だったという。鞍ヶ池公園には、「産前にデートで行ったり、今回のように子どもを連れて行ったりとお世話になっています」と、「ぽ」さんは語る。

ブラシを見た状況を尋ねると、こう答えた。

「トンネル内手前の窓にいたモルモットをかわいく思いつつ、1歳の娘を抱えながら、次は何かなー? と進んで行ったら、あの光景が広がっていたのです。
ホワイトボードの内容と佇むブラシに、トンネルの出口で待っていた夫と笑いました」

ただただ、笑うしかなかったようだ。

ところで「鞍ヶ池公園」の魅力は何ですか? と聞いてみた。

「広大な敷地、無料の動物園(そして心温まる展示)、アスレチック、池、たくさんの駐車場、休憩にちょうどいい電車の車両展示等です」

無料というのも魅力だが、なんだかとても癒やされる公園のようだ。

Jタウンネット記者は、「鞍ヶ池公園」にも、電話で取材した。


これは本物のハリネズミ(豊田市鞍ヶ池公園公式facebookページより)

豊田市の市街地東部にある「鞍ヶ池公園」は、かんがい池「鞍ヶ池」を中心に、動物園や観光牧場、子供向け遊戯施設などが点在する、見事な美しい緑に包まれた「自然に憩うファミリーパーク」だという。一帯は、愛知高原国定公園にも指定されている。

動物園には約40種類の生物が展示されており、8人の飼育員が担当している。あのユーモラスな案内も、担当飼育員独自の自由な発想で書かれたものだという。

ハリネズミ担当の飼育員、伊藤貴博さんの話を聞いた。

「ハリネズミは寒さに弱い動物で、冬場はヒーターによる暖房も難しい、ということで展示が難しくなりました。
私は、馬、ヤギ、羊なども担当しています。あるとき馬をブラッシングしながら、このブラシとアレがよく似ていることに、ふと気が付いたのです。質感が実に似ていました。
そこで、12月下旬から、ブラシを置くことにしたのです」

天候次第ではあるが、4月中旬頃から、本物のハリネズミを登場させる予定だ。ただし、ハリネズミは夜行性のため、昼間はほとんど巣穴の中で寝ていることが多いという。

夕方のエサの時間になると、巣穴から出てきてエサを食べ始めるそうだ。

夕方まで待てない方のために、ブラシをそのまま置いておく手もありそうだ。

ハリネズミがブラシと対面する決定的瞬間も、見てみたい気がする。