新型コロナの影響で「職場のデスクで昼食をとること」がフランスで合法化される
1度に同じ場所で食事する人数が増えると、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が拡大する危険性が増加するため、専門家は「コロナ禍にレストランで食事をすることには大きなリスクが伴う」として、外食を控えるよう呼びかけています。フランスでは、食文化を尊重する観点から「職場での食事」が法律で禁止されていましたが、COVID-19対策の必要性を受けて、規制が一時的に緩和されることになりました。
https://www.thelocal.fr/20210203/france-to-legalise-eating-at-the-work-desk/
French workers can now eat lunch at their desks without breaking the law - CNN
https://edition.cnn.com/2021/02/15/business/france-workers-desk-lunch/index.html
フランスでは、昼食をとる休憩時間は「la pause déjeuner」と呼ばれ神聖な時間とされています。企業向けのグループウェアを手がけるソフトウェア開発会社のWrikeが実施した調査によると、昼休憩中の食事に少なくとも30分以上かけるフランス人労働者の割合は39%で、ドイツ人の36%、イギリス人の23%、アメリカ人の22%より高かったとのこと。この調査結果を取り上げたフランスの公共ニュースメディア・Franceinfoは「我々フランス人は、昼休みのチャンピオンです」とコメントしています。
昼食を神聖視する国民性を反映して、フランスでは長らく「労働者が職場で食事をとること」が法律で明示的に禁じられてきました。フランスの労働法にあたる「Code du travail(労働法典)」という法律のR4228-19条には、「労働者が業務に割り当てられた敷地内で食事をとることは禁止」と記載されています。
しかし、フランスでのCOVID-19の感染者数は増加傾向にあり、記事作成時点では平均で1日2万1000人以上の新規感染者が報告されているなど、依然として厳しい状況が続いています。また、レストランやカフェ、バーなどの飲食店は2020年10月末から閉鎖されているので、一部の職場では昼休みに職場を離れて食事に行くことも困難になってしまいました。
by Reuters Graphics
こうした状況を踏まえて、フランス政府は2021年2月15日に「雇用者は、必要な場合はR4228-19条の規定を破り、労働者が業務に割り当てられた敷地内で飲食できるようにしてもよい」とした政令を発表。2月15日から当面の間、職場での食事を合法化する措置に踏み切りました。
ただし、この政令はあくまで一時的なものに過ぎず、また労働法から禁止規定が削除されたわけでもないので、従業員数が50人未満の職場や、近隣もしくは敷地内に食事ができる場所がある企業では、引き続き職場で食事することが違法とのことです。
とはいえ、職場での食事を禁じた法律は元からそれほど厳格に順守されていなかったらしく、フランス政府の発表を取り上げたニュースメディアのThe Local Franceは「フランスでは年々、短時間でさっとランチを食べたりサンドイッチで手軽に済ませたりすることが一般的になってきているので、フランス人労働者の中にはオフィスでの食事を禁止する法律が実在することに驚く人もいたようです」と報告しました。