スマホ料金20GBプランは、どう選ぶ? 各社の新料金プランの特徴と選び方

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●MNO各社の20GBプランが3月より一斉スタート!
移動体通信事業者(MNO)各社による、データ通信容量20GBの低料金プランがいよいよ始まります。
・NTTドコモの「ahamo」(アハモ)は3月26日より。
・KDDIの「povo」(ポヴォ)は3月23日より。
・ソフトバンクの「LINEMO」(ラインモ)は3月17日より。

そして他社の20GBプランの料金水準でデータ通信容量無制限を武器に、
楽天モバイルも「Rakuten UN-LIMIT VI」(ラクテン・アンリミット・シックス)を4月1日より開始予定です。


最も早く勝負を仕掛けるソフトバンク



楽天モバイルは最後発となるが、圧倒的な低価格とデータ通信無制限を武器にシェア獲得を狙う


2020年10月頃より始まったMNOによる通信料金値下げ合戦は、各社が料金プランを出すたびに、さらにお得な料金プランや条件を提示するという激しい戦いとなりました。
その結果、各社ともに限界と思えるほどの低価格とサービス内容で、ある程度横一線に並びました。
しかしながら、消費者としてはどれを選ぶべきか選択に迷っている方も多いと思います。

そこで、各社の料金プランのメリットやデメリットを分かりやすくまとめてみました。


●まずは各社共通のポイントをおさらい
はじめに、楽天モバイルを除く各社の料金プランに共通するポイントを列記します。

・データ通信量 20GB
・通信量超過時の通信速度は最大1Mbps
・オンライン契約専用
・キャリアメールなし
・メインブランドと同じ通信品質

以上の点は、ahamo、povo、LINEMOの3プランともに共通しています。
各社のメインブランドと同じ通信品質(回線品質)である点は、仮想移動体通信事業者(MVNO)との差別化要因でもあり、大きなメリットです。

最も注意が必要なのは
・オンライン契約専用
・キャリアメールなし
この2点です。

ケータイショップ(キャリアショップ)では、それぞれの料金プランの宣伝や案内は行っていますが、契約手続き自体は行なえません。
あくまでもウェブサイトでの契約手続きが前提となっており、携帯電話契約やSIM交換に関する若干の知識が必要になります。

また、現在別の料金プランでキャリアメールを利用している場合は、
20GBプランに移行するとキャリアメールが使えなくなり、不便や問題が起こる場合もあります。
例えば、キャリアメールアドレスをオンラインショップなどの登録用メールアドレスとして設定している場合、オンラインショッピングができなくなったり、ウェブサイトにログインできなくなる可能性があります。

もし20GBプランへの移行を検討している場合は、各種ネットサービスなどを確認して、キャリアメールからGmailなどのフリーメールへ、利用者設定を変更しておきましょう。


若い世代ほどキャリアメールの利用率は低く、各社がコスト削減のために非対応としたのも頷ける



●最もオーソドックス、海外利用に強みがある「ahamo」
NTTドコモのahamoは、20GBプランの料金戦争を仕掛けた最初のプランであるだけに、そのサービス内容や料金も非常にオーソドックスです。
月額料金は2,700円で、5分以内国内通話無料が付いているのが特徴です。
通話もデータ通信もそれなりに使うという人に丁度良いプランです。

月額料金は、当初2,980円としていました。
しかし、他社の動向や価格競争力維持の点から急遽2,700円へ、さらなる値下げが行われました。
KDDIやソフトバンクの月額2,480円には並びませんでしたが、4月からの税込価格表示の義務化に合わせ、税込みでも月額2,970円と3,000円以下に抑え、お得感を出してきたかたちです。

ahamoの面白い特徴は、20GBのデータ通信量の中であれば、海外82の国々・地域で追加料金なしにデータ通信を行えることです。
海外で15日を超えて利用する場合のみ通信速度が制限されますが、SIM交換やスマートフォン本体の再起動なども不要なので、とても手軽に利用できます。

現在はコロナ禍であるために海外旅行や海外出張はほとんどありませんが、仕事や趣味で海外によく行く人であれば、ahamoは非常にメリットの多いプランとなります。

また、ahamoはNTTドコモの家族割にあたる「ファミリー割引」対象の料金プランである点も見逃せません。
Ahamo自体は割引されませんが、家族のファミリー割引には人数として計算されるため、ahamoにプラン変更しても家族のファミリー割引が減額されるといった心配がありません。

デメリットは、前述の通り他社よりわずかに料金が高い点です。
povoやLINEMOは月額2,480円と220円ほど安い上に、ahamoよりもサービス内容で充実している点がいくつかあります。

例えば現在すでにドコモを契約している人であれば、貯まっているポイントなどを無駄にしないためにも、そのままahamoを契約するのが良いかもしれません。
しかしながら、現在KDDI(au)やソフトバンクで契約している場合、敢えてMNPなどでドコモに乗り換えてまでahamoを契約するほどのメリットは小さいと考えられます。


細かな契約条件や付帯サービスがなく、とてもシンプルなのがahamoの特徴だ



●トッピングが面白い、自分好みにサービスを選べる「povo」
Povoは月額2,480円でahamoよりも220円安く、無料通話やデータ通信無制限などのオプションサービスを「トッピング」として自由に選択できる点が最大の特徴です。

このトッピングオプションは現在のところ、
・5分以内通話かけ放題:月額500円
・データ使い放題 24時間:24時間200円
・通話かけ放題:月額1,500円
・データ追加 1GB:1GB 500円
これら4つが用意されています。

例えば、1回で数GBを消費する映画やゲームを何度もダウンロードすれば、あっという間に20GBのデータ通信量を使い切ってしまいます。
そんな時こそ200円のデータ使い放題 24時間をピンポイントに購入すれば、20GBを消費せずに思う存分映画やゲームを楽しめます。

さらに、今後ユーザーの要望を取り入れながらトッピングオプションを増やしていくことを明言しているため、
データ通信の使いどころを見極めつつ、自分の使い方に合わせてオプション(トッピング)を選べる人にぴったりなサービスとなっています。

また、ahamoと同じように家族割適用対象プランである点はメリットです。
auブランドでの家族割にあたる「家族割プラス」の対象としてカウントされるため、povoの契約者自身は割引されませんが、家族の割引には適用されます。
これにより、ahamoと同じようにプラン変更をしても家族が不利益を被ることがないため、気軽にプラン変更が行えます。

注意点としては、基本となる月額2,480円には通話無料サービスが一切ない点です。

通話無料関連のサービスはすべてトッピングオプションとなっているため、
例えば5分以内通話かけ放題を付けるとahamoより若干割高になります。
基本料金の金額のみで安くなったと安易に考えず、自分の使い方で安くなるのか、それとも他社のサービスを選んだほうが安くなるのかを、しっかりと吟味する必要があります。

また、5Gサービスへの対応が今夏まで遅れる点も若干のデメリットです。
ahamoやLINEMOはサービス開始時より5G通信に対応しますが、povoは今夏(具体的な時期は未定)となっています。
期間的には数ヶ月の差ではありますが、いち早く最先端のサービスを受けたいという人は留意しておく必要がありそうです。


5G対応スマートフォンと対応エリアも増えてきた今、夏まで使えないのは少し寂しい



●LINEギガフリーが最大の魅力!「LINEMO」
LINEMOはpovoと同じく月額2,480円で、ahamoより220円安いのが特徴の1つです。
5分間通話無料となる月額500円の「通話準定額オプション」や、制限なく通話無料が可能な月額1,500円の「通話定額オプション」が用意される点も、povoと酷似しています。

しかしながら、LINEMOの最大の特徴は「LINEギガフリー」にあります。
これは、LINEでのトークや音声通話、ビデオ通話で利用したデータ通信量をカウントしない「カウントフリー」サービスで、利用可能データ量である20GBに含まれません。

頻繁にLINEサービスを利用する人であれば、LINEMOが最もお得な料金プランかもしれません。

また、「通話準定額」および「通話定額」オプションが1年間月額500円引きとなる、
「通話オプション割引キャンペーン」も実施されます。
このキャンペーンを利用すれば、プラン利用開始から1年間は、ahamoよりも安い月額2,480円で5分間国内通話無料が利用できることになります。

デメリットは、家族割の適用対象外である点です。
ahamoやpovoは家族割対象プランとしてカウントされ、家族が契約している料金プランの割引に適用されましたが、
LINEMOではそれがないため、例えばソフトバンクの家族割にあたる「新みんな家族割」が適用されているプランから変更した場合、家族の割引率が下がる可能性があります。

家族ぐるみでソフトバンクを契約をしている場合、プラン変更の前に家族の通信料金がどの程度上がるのか調べておくことをオススメします。


LINEギガフリーが魅力的なLINEMOだが、家族でソフトバンクを契約している人は割引率の低下に要注意


そのほか、通話オプション割引キャンペーンによって料金体系のシンプルさが失われている点も要注意です。

各社の20GBプランは「シンプルかつ低廉なプラン」の設定を前提とした総務省からの指導や要請から生まれたものですが、
キャンペーン終了とともに料金が上がる今回の施策はそのシンプルさが損なわれるものであり、ユーザーの混乱を再び招きかねません。

LINEMOを契約しこのキャンペーンを適用する際は、適用期間やキャンペーン終了後の金額などをしっかりと確認することを心がけましょう。


シンプルさが特徴の1つだったはずの20GBプランだが、期間限定割引の導入はあまり良い流れではない



●1GBまで無料! しかしエリアに若干不安がある「Rakuten UN-LIMIT VI」
最後に楽天モバイルのRakuten UN-LIMIT VIです。
こちらは他社と若干毛色が変わり、1GB 0円からの従量制プランとなっています。

その従量料金の月額内訳は、
・1GBまで:0円(無料)※ 1回線目のみ。2回線目からは、0〜3GBまで月額980円
・3GBまで:980円
・20GBまで:1,980円
・20GB以上(無制限):2,980円
このようになっています。

1GBまで無料というのが衝撃ですが、これは1回線目のみという条件が付いており、複数回線を契約して1GB未満でSIM(契約回線)を使い回すといった使い方はできないように制限されています。

しかしながら、それを差し引いても他社と同じ20GBで比較した場合、500円〜720円も安い点は見逃せません。
さらに大容量の利用でも2,980円しかかからない点は大きなメリットです。

無料通話オプションなどがない代わりに、楽天の専用アプリ「Rakuten Link」を使えば国内通話が完全無料となるなど、サービス面でも充実しています。


Rakuten Linkとは、通話だけでなくグループチャットやニュースの閲覧、各種決済など、様々な機能を持ったポータルアプリのこと



このように料金面では圧倒的に優れているRakuten UN-LIMIT VIですが、デメリットとしてはエリア問題があります。

楽天モバイルはMNO事業へ新規参入してからまだ1年未満で、アンテナ基地局の整備を計画前倒しで行っている最中です。

今夏には人口カバー率96%を目指すとして急ピッチで整備を進めていますが、
取得している電波の周波数帯が少ない上に、屋内浸透性や回折性に優れた周波数帯である「プラチナバンド」を持っていないことから、地図上でのエリア表記よりも実際の電波強度がさらに低くなる場合も考えられます。

また、楽天モバイルは自社の通信網がないエリアをKDDIの通信網によって補うローミングを行っています。このローミングエリアにおいてはデータ通信無制限時に1Mbpsへ速度が制限されてしまいます。
この場合、他社の20GBプランと事実上ほとんど同じ条件となることから、料金的なメリットもあまりなくなります。

Rakuten UN-LIMIT VIが料金的に優れたプランである点は間違いありませんが、
その低い料金を過信せず、
・自分が普段使う場所が楽天回線のエリアとなっているか
・エリア内でも屋内まで電波が十分届いているか
この2点をしっかりと確認しておく必要はあるでしょう。


料金の安さに惑わされず、自分の使い方や使う場所に合っているかしっかり確認を



●プラン変更前に自分の使い方をもう一度確認しよう
MNO各社の20GBプランおよび楽天モバイルの料金プランは似ているようでありながら、いずれにもハッキリとしたメリットとデメリットがあります。

・海外出張が多いのにNTTドコモ「ahamo」を選択しなかった
・いつもLINEで長時間通話しているのにソフトバンク「LINEMO」を選択しなかった
・月に数回映画やゲームをダウンロードしているのにKDDI「povo」選択しなかった
・楽天の通信エリア外なのに楽天「Rakuten UN-LIMIT VI」を選択した
このような選択をすれば大損です。

プラン変更を行う前に、自分の使い方や家族の契約内容をしっかりと確認し、
より安く、より賢く料金プランを選択してください。


執筆 秋吉 健