『花束みたいな恋をした』より
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 現在公開中の菅田将暉&有村架純主演の映画『花束みたいな恋をした』で、菅田、有村が演じる20代のカップルの距離が縮まるきっかけとなるのが、小説、音楽、アニメ、映画などの驚くほど似た趣味。5年間を駆け抜ける2人の青春を彩るカルチャーの一部を振り返ってみた。

 本作は、東京・京王線の明大前駅で終電を逃し偶然に出会ったことから恋に落ちた大学生の山音麦(菅田)と八谷絹(有村)の5年間の悲喜こもごもを追うラブストーリー。ドラマ「東京ラブストーリー」「最高の離婚」などの人気脚本家・坂元裕二が、映画で初となるオリジナルラブストーリーを手掛け、有村主演の『映画 ビリギャル』や『罪の声』などの土井裕泰がメガホンをとった。

 麦と絹が、終電を逃したもう一組の男女と共に入ったカフェで目を輝かせたのが、店内に映画監督の押井守(本人が出演)がいたこと。もう一組の男女がはかばかしくない反応をする一方、麦は「神がいます!」と興奮し、絹も「押井守を認知していることは広く一般常識であるべきです」と同調。2人で入った居酒屋では偶然にも、お笑いコンビ・天竺鼠の同日のチケットを所有していることが発覚し、映画の半券をしおり代わりに使っているところまで同じ。

 居酒屋を出て入ったカラオケで二人が歌うのが、きのこ帝国「クロノスタシス」(5年後にはフレンズの「NIGHT TOWN」を歌う)。そのほか登場する楽曲に、GReeeeNの「キセキ」や SEKAI NO OWARI の「RPG」など。同棲を始めた2人の部屋の書棚には、宮沢賢治、阿佐田哲也、三浦しをん、朝井リョウ、荒木飛呂彦、手塚治虫、ほしよりこなどの小説や漫画が並ぶ。イラストレーター志望の麦が描く絵は、イラストレーターである朝野ペコの描き下ろし。なお、麦と絹の似顔絵は、タイ出身の漫画家ウィスット・ポンニミットが描き下ろした。

 麦の衣装には、衣装の立花文乃が「音楽や映画が好きな子たちは洋服にもそれらのテイストを取り入れている場合が多い」との理由からスチャダラパーやZAZEN BOYSのツアーTシャツなどを使用。リアルタイムで体験したカルチャーでなくとも古着などで入手しているというビハインドストーリーを考えて調達された。一方、絹の衣装は「定職についていないときでもファッションを意識している人にしたい」という有村の意見を反映し、カジュアルながらも清潔感のある着こなしに。ネイルもきちんと手入れされている。麦と絹が出会った日におそろいのコンバースの JACK PURCELL を履いていたところも、運命を感じさせる。

 そして、強烈なインパクトを残すのが、二人が出会った日、麦が自宅アパートで絹に見せるガスタンクの映像。これは、麦が訪れたガスタンクを趣味で撮影している、という設定でオリジナルで制作されたもの。ガスタンクが延々と映し出され、絹が退屈だったのか思わず眠ってしまうという微笑ましい場面が見られた。手掛けたのは、映画監督の坂西未郁。本作のメイキングカメラマンとしても参加しているほか、 Awesome City Club(オーサムシティクラブ)の書き下ろしによるインスパイアソング「勿忘」のPVでも監督を務めた。その他、登場する映像作品にアキ・カウリスマキ監督の映画『希望のかなた』(2017)、金山豊大監督の『正気の沙汰DAY NIGHT』(2014)など。

 本作は1月29日に全国350館で公開され、土日2日間で動員13万3,000人、興行収入1億9,100万円を記録。日本歴代興収1位の『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』を抑え、初登場首位を獲得する好スタートを切った。(編集部・石井百合子)