まるでルンバ。アイロボットのプログラミングロボ「Root」国内発売

家の中の障害物を避けて動く掃除ロボットの代表格「ルンバ」。そのルンバをミニサイズにしたかのようなユニークなプログラミングロボットが日本にやってきました!

その名は「Root」。ルンバで知られるアイロボットが30年間蓄積したロボティクス技術が注ぎ込まれている教育用プログラミングロボットです。すでに北米で販売されており、学校や家庭などで楽しまれています。日本では2月19日に発売されます。

▲アイロボットジャパンから、2月19日に発売されるプログラミングロボット「Root」。直販(アイロボットストア)価格は2万9800円(税込)

最大の特徴は、掃除機能は当然ないものの、バンパーや段差センサー、カラーセンサー、光センサーなどを内蔵し、無料の専用アプリ「iRobot Coding」を使いプログラミングし、移動や回転のほか、音や光の演出ができること。さらに極めれば人工知能を学ばせるといった、高度なプログラミングも可能です。

自走型のロボットなので掃除こそできませんが、床を動き回る様子はさながらミニンバといったところ。2つの光センサー部分がかわいらしい目になっていて、なんだか表情豊かに見えます。

▲Rootの前面と背面。プログラミングによって色を変えられるLEDやセンサーなどが搭載されています。LEDを光らせたり、音を鳴らすことも可能です

底面にはマグネットを備え、黒板やホワイトボード上を垂直走行したり、中央部に付属ペンを挿すと絵を描けるほか、音楽を奏でられるのも特徴です。プログラミングは、パソコンであればブラウザ、Android/iOSのタブレットにも対応し、端末を問わず使えるのも魅力です。  

▲同梱されている専用のペンを中心に挿し込み、好きな文字や絵を描かせることもできます

専用アプリの「iRobot Codong」には、レベルに合わせた3つのモードが用意されています。具体的な内容は次の通りです。

レベル1は小さな子供でも使える、グラフィカルなブロックで、ブロックに書かれたイラストを見てプログラムしていくことが可能です。

レベル2は、ブロックとテキストを合わせた形で、レベル3の本格的なテキストでのプログラミングにつないでいきます。

レベル3で使われているのは、iOSアプリの開発で使われているSwift。段階的にプログラミングを学んでいくことができ、小学校に限らず幅広く活用できる印象です。

▲3つのレベルが用意された専用アプリ「iRobot Codong」

日本の小学校に1000台を無償提供

1月19日に行われたメディア向けの発表会で、アイロボットはこのRootで日本の教育市場に参入することを発表しました。もともとアイロボットは2009年からSTEMプログラムに携わってきた実績があり、日本でも2018年からルンバを使ったプログラミング体験会を行っています。

発表会冒頭には、ルンバの生みの親であり、アイロボットCEOでもあるコリン・アングル氏がビデオレターで登場し、「Rootで世界中の子どもたちの無限の好奇心を引き出したい。日本の子どもたちにも、モノが出来上がっていく仕組みをワクワクしながら学んでほしい。そしてプログラミングに興味をもったら、エンジニアとして一緒に未来のロボットを開発してほしいと本気で思っている」と熱く語りました。

さらに、コリン氏は発表会の最後にアメリカのマサチューセッツ州からオンラインで参加し、質疑応答に対応しました。「Rootを使ってどのように遊んでみたいですか」とお聞きしてみたところ、「とても気に入っている遊び方は、Rootをプレイヤーのようにして、自分の書いた設定のなかで遊ばせること」と楽しそうに答えてくれました。

▲Rootを使った「Robot Education」という新しい教育プログラムが誕生

アイロボットは教育への本気度として、まず日本全国の小学校へ1000台のRoot無償提供を行う「みんなでRoot!プロジェクト」を発売に先駆けてスタートさせました。1校あたり最大6台のRootを無償提供し、あわせて授業ですぐに使える指導略案やワークシートも提供します。先着順とのことなので、この記事をご覧になっている教育関係者の方はぜひ申し込んでみてください!

すでに全国の小学校でRootのパイロット授業が行われています。「Rootによって子どもたちから発想が引き出された」例として、クリスマス前にはRootのLEDを赤と緑に光らせてジングルベルを鳴らしながらくるくる回らせたり、ほかのグループと一緒に2台を組み合わせたりするといったアイデアも出たそうです。これからもRootが全国の学校や家庭で活用されれば、もっといろいろな使い方や、学びで活用する授業例なども増えていきそうです。

▲ICT活用などの教育コンサルタントを行っている為田裕行氏が、Rootエデュケーショナルインストラクターに就任。忙しい先生のために、Rootを活用した授業略案を学校に提供します

Rootエデュケーショナルインストラクターを務める為田氏は、「人の役に立つ実用的なロボットとして未来を感じさせる」、「プログラミング教育の第一歩としての敷居の低さ」「いろいろな授業に組み込める拡張性の高さ」、「ルンバやコリン氏という、テクノロジーで問題解決するロールモデルが存在する」ことなどを、Rootの良さとして紹介しました。

小学3年生が「Root」を使ったプログラミングに挑戦

発表会の最後には、私立淑徳小学校の3年生がRootを使ったプログラミング授業の様子が動画で紹介されました。

授業の最初に先生が「アイロボットを知ってる人」と聞いたところ、約8割の子どもが知っていると答えていました。「テレビで見た」「家でルンバを使っている」など、身近なものとして感じているようです。

授業では、2人に1台のRootとiPadが用意され、レベル1の簡単なプログラミングを体験しました。先生はあえて最低限しか教えず、子どもたちが実際にさわって試してどのような動きをするのかの経験をさせていました。

▲背面に磁石がついているので、黒板にもピタリとつきます。先生のプログラミング通りにRootが動くと、子どもたちから「すごい!」といった声があがりました
▲Rootを一定の距離分進めて90度横を向くというプログラムを複数つくり、見事、机の上を一周させている子どもたちもいました

ひととおり試したあとは、おもしろいプログラムをつくった子たちが前に出て発表しました。Rootは背面に磁石がついているので、教室のホワイトボードや黒板にくっつき、そのまま動きます。先生が実際の動きを簡単に見せることができる点も、とても教育用として向いていると感じました。

さらに、Rootでつくったプログラムは専用サーバーにクラウド保存することも可能。その際に「パスワード」が表示されるので、そのパスワードを使えば簡単に他の人と自分のプログラムをシェアする、あるいは学校で作っていたプログラムの続きを自宅でするといったことも可能です。アプリでは画面上でRootの動きも再現できるので、自宅でもプログラムを組んで画面上のバーチャルRootを動かせるというわけです。

▲Rootのプログラミング画面。つくったプログラムは、右側のシミュレーターの画面で確認できます。障害物を置いたりできるので、「ルンバ」のような動きを実際にプログラミングさせることも可能です

今回紹介された授業では、子どもたちがあまり悩むことなく、「これやってみたい!」とどんどん自分からプログラミングを試していた姿が印象的でした。生まれたときからスマホが当たり前にある子どもたちにとって、プログラミングは敷居の高いものではありません。ましてや、Rootというかわいいミニルンバが自分がプログラムしたとおり動くとあっては、夢中になるのも当たり前です。  

ちなみにこの「Root」は、個人でも購入できます。お掃除こそできませんが、子どもにも親しみやすいファーストロボットとして、家庭でプログラミングに取り組むのにもおすすめです!

Rootをきっかけに、より多くの子どもたちがロボットに親しみ、プログラミングの楽しさやつくる喜びを知ってもらえたら……と思います。もしかしたら、Rootで育った子どもたちの中から、新しいロボットの開発者が生まれるかもしれません。

 

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