【詳細】他の写真はこちら

2020年の藍井エイルはシングル「I will…」のリリースがあった一方で、7月から開催されるツアーが新型コロナの影響により中止になるなど、世界の情勢やほかのアーティスト同様、予期せぬ停滞を強いられた。そんななか8月には無観客配信ライブ「藍井エイル LIVE TOUR 2020“I will…”〜have hope〜」を開催するなど、新しいスタイルを模索した1年でもあった。そのライブのBlu-rayがリリースになるタイミングで、無観客ライブについて、そして2020年について振り返ってもらった。

――8月16日開催された初の無観客配信ライブ<藍井エイル LIVE TOUR 2020“I will…” 〜have hope〜>のライブBlu-rayがリリースになりました。今年7月から開催予定だった全国ツアー<藍井エイル LIVE TOUR 2020“I will…”>が中止になり、急遽配信ライブを敢行したわけですが、改めて無観客というスタイルでのライブをやってみていかがでしたか?

藍井エイル 7月のツアーを回るかというのは本当にギリギリまで考えていたのですが残念ながら中止になって、無観客ライブ配信をしますとなったんですよね。当時は無観客配信というのをやっているアーティストさんもまだ少なくて、どういう感じになるのかがあまり想像がつかなくて。まずそれが難しかったです。

――たしかに当時は今ほど配信ライブというものも多くなく、そこでのノウハウというものがまだなかった。

藍井 そうですね。セットリストはライブがもしツアー回れるならという前提で組んでいたんですけど、仮にライブができてもお客さんは声を出したりジャンプしたりというのは禁止になってしまうだろうというのは想定していました。なのであまりコール&レスポンスができる曲が入れられないねっていう話は事前にあったんですよ。一応サブとしてアンコールに「INNOCENCE」を入れていて、あれはいつもサビの最後にみんなに歌ってもらうパートがあるんですけど、それができるかどうかわからない状態で。でも配信になったときに、無観客なら「歌って!」って言っても皆さんそれぞれお家で楽しんでもらえるものに変わるので、それで急遽「INNOCENCE」を入れたりとか、いろんな今回の変更をせざるを得ない状態にはなっていて、そういう意味でも難易度が高かったライブでした。

――実際のライブも目の前にお客さんがいない状態でのパフォーマンスとなりました。それについてはどうでしたか?

藍井 お客さんがいるライブだと目の前の人に届けるという意識が働くんですけど、今回はカメラしかない状態なので、テレビ収録っぽい感じでやればいいのか、ライブっぽい感じでやればいいのか難しくて。結局私は後者のほう、お客さんに届けるイメージにでやるということを選んだんですけど、それは今も正解なのかどうなのかというのは今もわからないですね。

――たしかにエイルさんもテレビ収録などもやってきただけに、どっちの選択肢も想定できますもんね。

藍井 そうそう、どっちでやったらいいかっていう。ただ、やると決めてから配信まであまり時間がなかったし、ここから色々と映像っぽく演出を変えましょうというのは正直頭になかったですね。



――そういう状況下でのライブではありましたが、実際に配信を観るといつものエイルさんというエネルギッシュなステージが印象的でした。特に「I will…」から始まる序盤のセットがすごく印象的で。

藍井 「I will…」ツアーなので「I will…」をどこに持っていくかというのはかなり重要でした。最後に持っていくべきなのか最初に持っていくべきか迷ったんですけど、最後だとちょっとしっとりしすぎる終わり方になってしまうかなと思って1曲目に入れたほうが形になるかなと思って。

――「I will…」が今年リリースされたからというのもありますが、ほかにも「月を追う真夜中」「流星」といった序盤の曲の、特にパワフルで前向きな歌詞というのが今聴くと特に刺さるというか。

藍井 私の曲は基本的に前向きな歌詞が多いんですけど、今回は目の前にお客さんがいないということで私も集中の先を歌詞にするということに決めたんですね。なのでもしかしたら聴こえ方が普段と違うのかもしれないですね。

――配信を観ている人も同様に、客席で盛り上がると普段とは異なる聴き方だけに、そうした歌詞に集中した聞き方になったのかもしれないですね。今回はほかにも「クロイウタ」など久々に披露する楽曲がありましたね。

藍井 これ、普通のツアーだったらこのセットリストを組まないんですよ。

――階段に座って歌う「クロイウタ」がまた素晴らしく、以前のダークさからはまた違う印象がボーカルから感じられました。

藍井 やっぱり昔と歌い方が変わっているのもありますよね。あと、自ら座って歌うことを選んだんですけど、座って歌うのが結構難しくて、そもそもお客さんがいないほうが緊張するので、手とか震えちゃって(笑)。



――2012年のアルバム『Prayer』から「CRIMSON EYES」を披露されましたが、これも久々ですよね。

藍井 かなり久しぶりです。「星が降るユメ」を入れることは決まっていたので、その前に対比として「CRIMSON EYES」を対比として入れたいのはあったんですよ。

――『Fate』シリーズのサーヴァントへのトリビュートアルバムである『Prayer』から「CRIMSON EYES」を選んで、「星が降るユメ」に繋げるのはのはファンにとしてもニヤリとする構成ですよね。そのあとの「青の世界」もそうですが、昔の楽曲を今の歌唱で聴けるのは興味深いですね。

藍井 セットリストを作ったときに曲をプレイリストにして流して聴いていたんですけど、「CRIMSON EYES」なんて今と声が全然違っていて、「あ〜恥ずかしい!」って思わず飛ばしちゃいました(笑)。でも昔の曲でも特にアルバム曲ってあまり最近やってなかったりするので、そういう歌えていなかった曲にもアプローチできるようなライブを今後できたらいいなって思いましたね。

――バンドメンバーとのやりとりに変化はありましたか?

藍井 ライブのリハーサルのときも1時間に1回換気をしなくちゃいけないとか、マイクを渡すときも消毒したものを手袋して渡してもらったりとか、元々すごく徹底していた時期だったんですね。なのでバンドメンバーともあまり近寄るのも空気的にどうなのかなっていうのもありましたし、みんなマスクをして気を使ってもらっているなかで私がグイグイいっちゃうとまた気を使わせちゃうかなっていうのもあったので。

――逆に言えばそういう状況でもしっかりバンドと息が合うのは、長年の付き合いだからこそですよね。

藍井 そうですね! 音楽で一体感を作るという点では無駄な会話がなくても一気にグッと1つになれる感じもあったので、長年一緒にやってきてよかったなあって思いましたね。

――そうした演奏の一方で、MCのほうはどうでしたか?

藍井 めちゃくちゃ難しいです! まず「カメラどこ見ればいいの?」っていう感じで。そもそもMCって聞いてくれる人がいるから話せるじゃないですか。もうなんか……すごく拙いMCしちゃったなって(笑)。

――たしかにちょっと初々しいMCでこれもまたレアだなと(笑)。

藍井 ツアーがなくなったから、MCも何を話せばいいんだろうって。ツアーだったらどこどこ行ったよとかあそこのご飯が美味しかったよとか、あそこ行ってみたいんだよねって話ができるんですけど、それができないので本当に難しい……。やっぱり人がいてこそだと思いますね。お客さんがいることで勇気ももらえていたし、「やるぜ」っていう気持ちに火をつけてもらっていたんだなって改めて実感しました。

――あと本編ラストの「シリウス」や先ほど話があった「INNOCENCE」では、観客に歌ってもらう恒例のシーンがありました。いつも通りエイルさんが観客に向かって「歌って!」とマイクを向けるんですが、不思議と違和感なく、観客の歓声が聴こえるような気がして。

藍井 そうですよね。あそこはもう思いっきりできました。画面の向こうでみんなが歌っているのを想像しながら、普段お客さんがいるという状況と変わらない感じでできて、私自身もノリノリでやらせていただきました。



――改めてそうした特殊な形でのライブもあった2020年はどんな年でしたか?

藍井 自分が生まれて、生きてきてこんな事態に出会うとは思っていなかったです。みんなそうでしょうけど思ってもなかったですね。いろんなことを変えさせられたし、考え直させられた1年でしたし、多くのアーティストさんも苦労されていると思います。自分もツアーを回りたいと思っていたけどできない状況になってしまって、そもそもやるということを自分の意思で決めつけていいのかとか考えましたし。

――それぐらい深刻な事態でしたし、色々考える時期でもありましたよね。

藍井 ただ、その間にもまた歌と深く向き合える時間も作れたので、去年に比べて今年は歌に力を入れることができたなと思っていますし、それを来年に繋げることができたらなって思います。時間もあったので、歌っているときに何が歌いにくいかとかもボイトレの先生に相談しつつ、トレーニングすることはできたので。

――ここ最近では自分の歌い方というものと向き合い、より進化させていくトレーニングもしていますが、今年はさらにしっかりと向き合うことができたと。

藍井 あとは「エイルの子守唄」というカバー動画にも重永さんと挑戦できましたし、それも今年の自粛というのがなければできなかった試みなのかなって。あとは久しぶりにゲーム実況もできたし、違うコミュニケーションの撮り方というのもファンの人とできたかなって思います。



――そうした2020年を経て、2021年にエイルさんが見据えているものはなんでしょうか?

藍井 ツアーは回りたいですね。来年も回れないとなったらどうしようっていうのもありますよねえ。今年は急にいろんなことが変わってしまいましたが、来年はそれに対応できるような形でツアーを回れたらなって思います。仮に準備していたのができなくなったことで、急な事態に備えてやっていくことでよりいいものや皆さんが楽しんでもらえるものを作っていけるのかなって。

――まさに2021年型の活動の仕方というものですよね。

藍井 藍井エイルとしても今後何かをやるときに備えておくというか。今年の4月に比べて少し予測ができるようになっているじゃないですか。当時は混乱がさらに混乱を呼んでみんなが対応に追われるという感じでしたけど、2021年はもう少し先手先手で考えていければいいなと思います。

――ライブという面でのあらたな試みというのもみられそうですが、ソングライティングの面で変化はありそうですか?

藍井 今までは一緒に歌ったりコール&レスポンスの入った曲がありましたけど、今後ライブだとそれがちょっと難しいものになるので、今後それに代わるものになるのはクラップになのかなって。

――「“I will…”have hope」でも最後に「レイニーデイ」をやっていましたが、エイルさんの楽曲には「閃光前夜」などクラップで参加できる曲が多いですしね。

藍井 それができれば楽しいと思いますし、制作自体も変えられていくような気がします。今まで歌ってもらうところを想定して制作していたのが、それができない前提で制作をしていかなくてはならないので、コール&レスポンスという意味合いが変わってくるのかなと。あとは、サイリュームも強い味方だと思うんですよ。ワンコーラスは「赤!」って言ったらみんな赤にして、「青!」って言ったら青にしてもらったり、そういうペンライトでも私たちは繋がることができると思うので、そういうふうにライブの楽しみ方も考え直していかないといけないかなって思います。基本的に私はライブと楽曲制作はリンクしているので、そこをうまく繋げられるような制作をしていかなくちゃいけないなって思います。

――やはり見据える先にはライブ、そしてファンとの交流ですね。

藍井 とにかくみんなに会いたい。2020年ではオンラインで関わり合うこともできたけど、2021年は実際に会っていきたいなって思います。



INTERVIEW & TEXT BY 澄川龍一

●リリース情報

LIVE Blu-ray

「藍井エイルLIVE TOUR 2020 “I will…” 〜have hope〜」

発売中

【通常盤(Blu-ray)】



価格:¥6,000+税

【ファンクラブ限定盤((Blu-ray+LIVE CD+PHOTOBOOK+フェイスガード】



価格:¥9,000+税

01. I will…

02. 月を追う真夜中

03. 流星

04. アカツキ

05. GENESIS

06. クロイウタ

07. CRIMSON EYES

08. 星が降るユメ

09. 青の世界

10. Raspberry Moon

11. シンシアの光

12. IGNITE

13. シリウス

14. INNOCENCE

15. レイニーデイ

関連リンク



藍井エイル 公式サイト藍井エイル 公式Twitter藍井エイル 公式YouTube