【ひとり勝ち確定?】なぜトヨタGRヤリスを皆、誉めるのか この時代に出てきたことに拍手 RSに試乗
キワモノ? いや王道! GRヤリスtext:Takuo Yoshida(吉田拓生)photo:Satoshi Kamimura(神村 聖)
先日、ランボルギーニやフェラーリやマクラーレン等々スーパーなクルマを試乗する機会があった。けれどその日、僕が個人的に最も乗ってみたかったのは、同業者が乗ってきていた小さなトヨタ車だった。
今年デビューしたあらゆるクルマの中で最も乗ってみたいクルマ、それがGRヤリスである。
理由なんてどうでもいいから、とにかく無性に乗ってみたいと思わせた。それも山道を全開で。
こんな気持ちになったのは「一度でいいからフェラーリに……」と思っていたワカゾーの頃以来かも。
GRヤリスはトヨタ・ヤリスをベースにしたホットハッチで、トヨタの特殊部隊というべきGAZOO RACINGが開発を担当している。
272psを発生する1.6Lの3気筒ターボエンジンをフロントに横置きし、駆動は4駆。前後のフェンダーは太いタイヤを収めるためダイナミックに拡幅されている。
GRヤリスは最近のトヨタ車としてはインコース高めの際どい所を突いている。
けれどそんなキワモノが先行予約から順調に売れ、乗ったことがある人ない人関係なく誉められまくっているのだから、もはやキワモノを名乗る資格はない。
一周回って王道なのかもしれないのだ。
ボディの作り込み、GT3 RS以上?
クルマのメディアではよく「写真で見るより〜」という表現が使われる。
だが夕暮れ迫る待ち合わせ場所にやってきた黒いGRヤリスは、写真で見たまんまの迫力を湛えていた。
トヨタGRヤリスRSのプラットフォームはトヨタおなじみのTNGAだが、その中身は素のヤリスとは別物。 神村 聖口を大きく開けた「激怒顔」と、それに呼応するように張り出したリアフェンダーがワイド&ローのスタイリングを強調している。
標準のトヨタ・ヤリスには5ドアしか設定がないが、GRヤリスは3ドアの専用ボディを与えられている。その理由はラリーカーのためのホモロゲーションモデルとして高いボディ剛性を確保したかったためである。
プラットフォームはトヨタおなじみのTNGAだが、その中身は素のヤリスとは別物。前半部分はヤリスをベースとしているが、後半は独立サスペンションやリアデフのために1クラス上の仕様となっており、結果として専用ボディとなっている。
GRブランドなので当然のようにスポット増し+構造用接着剤でガッチガチに固められているはず。
しかも黒いボディカラーだと気づきにくいがルーフはカーボン製だし、ドアやボンネット、そしてリアゲートはアルミが採用されている。
ボディの作り込みだけで言ったらポルシェGT3 RSより上? のヤリスなのである。
ついに試乗 至上体験のはずがアレ?
ホモロゲモデル、リッター170psの高出力、4駆(WRCで名をはせたGT-FOURだ!)、専用ボディとマッチョなタイヤ。
クルマ好きの感性を刺激しまくるGRヤリスをついにドライブする瞬間がやってきた! と興奮が最高潮に達したところで編集担当氏から「今回のグレードはRSですので」と一言(!)
トヨタGRヤリスRSのシャシー自体はトップモデルと一緒だが、パワートレインは1.5Lの自然吸気120ps+FF+CVT。 神村 聖エントリーグレードのRSは120psを発揮する1.5Lの自然吸気3気筒エンジンとCVTの組み合わせで、駆動方式はFFである。
一瞬呆気にとられたが、とはいえボディやアシ、そしてタイヤ等々は4駆モデルと同一だ。実際にボディ剛性の異常なまでの高さは、走りはじめてすぐに理解できた。
ステアリングまわりの精度、ハイスピード時の操舵の滑らかさも他の国産車では例えようがない。
圧倒的にシャシー優勢なRSなので、あらゆるコーナーに自信をもって突っ込める。
頭の中に 「良い物感」とか「凝縮感」といった表現が満ちていく。FFのRSも悪くない。
けれど試乗後は、この盤石のボディに272psのエンジンと、前後の駆動配分を変えられる4駆が組み込まれたらどんな化学変化が起きるのだろうか? という妄想が溢れて止まらなかった。
脳内悶々の初GRヤリス体験だった。
雨後の筍、GRヤリスひとり勝ち確定か
GRヤリスの登場に食指が動いた人は40代より上の人ではないかと察する。それも車歴にランエボやインプあたりが含まれるクルマ好き。
またはそれらの新車を買いそびれて中古車情報を読み漁り、「最近ランエボの値段が上がっちゃって」と嘆いているような人。
RSは265万円、最上級のRZハイパフォーマンスでも456万円 神村 聖GRヤリスが今という時代にウケる要素は数多ある。
「終の1台としてポルシェが欲しかったけど、こんなご時世だからヤリスにしておくわ」といえば家族のチェックをかいくぐれる可能性大だし、スペックから考えた車両価格もバーゲンという他ない。
今回試乗したRSは265万円だし、最上級のRZハイパフォーマンスでも456万円なのだ。
ラリー系ホモロゲ車を見渡してもランエボは2016年、スバルのWRX STIも先ごろ生産を終了している。
雨後の筍のようにタイミングよく出てきたGRヤリスにライバルはいないし、他と比べる必要もないくらい魅力的でもある。
しかもトヨタの元町工場でGRファクトリーの職人が組み上げるアナログにしてピュアなガソリン車は、おそらくこれが最後ではないか?
クルマ好きならば日本に生まれたことを感謝しつつ、免許を返納する日までGRヤリスでヤンチャに楽しむのが吉だ。
トヨタGRヤリスRSのスペック
価格:265万円
全長:3995mm
全幅:1805mm
全高:1455mm
最高速度:-
0-100km/h加速:-
燃費:18.2km/L(WLTCモード)
CO2排出量:128g/km
車両重量:1130kg
パワートレイン:直列3気筒1490cc
最高出力:120ps/6600rpm
最大トルク:14.8kg-m/4800-5200rpm
ギアボックス:CVT
駆動方式:FF
トヨタGRヤリスRS 神村 聖