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会社から貸与されたパソコンと携帯電話を紛失したことを理由に、年収を350万円も下げられたーー。そんな会社の処分に憤る相談が弁護士ドットコムに寄せられました。

相談者は、お酒を飲んだ帰りに電車内で居眠りをし、鞄を盗まれてしまいました。鞄の中には、会社から貸与されたパソコンと携帯電話、そして会社の鍵が入っていたそうです。

会社側は居眠りをした相談者に責任があるとして、相談者の年収を840万円から490万円まで下げる処分をしました。加えて、盗難にあったパソコンと携帯電話の代金として11万円を請求しているといいます。

相談者は悩んだ末に退職を決意しましたが、会社の処分に納得いかない様子です。

そもそも、会社貸与の物品を紛失したことを理由に従業員の給与を大幅に減額する処分をしたり、紛失した物品の弁償を求めたりすることは法的に問題ないのでしょうか。村松由紀子弁護士の解説をお届けします。

●減給できる額は法律で決められている

ーー会社側が相談者におこなった減給処分は法的に許されるのでしょうか。

今回のような大幅な減給処分は違法であり、紛失した物品全額の弁償請求は行き過ぎの可能性があります。

まず、減給処分のような懲戒処分をするためには、就業規則に懲戒規定が存在することが大前提です。

また、労働基準法91条は「就業規則で(中略)減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え(中略)てはならない」と定めています。

相談者の場合、1日の平均賃金は2万円あまりでしょうから、一回の減給処分で減給できる上限額は1万円あまりであり、今回の処分は違法です。

●弁償請求は正当?

ーー従業員に対する弁償請求については、いかがでしょうか。

法律で明確に制限する規定はありませんが、判例上は、損害の公平な分担という見地から、従業員への請求を制限すべきとされています。

負担割合は、従業員の業務内容、被害発生予防についての会社の配慮等によって決まります。会社の貸与物品の紛失については、会社がパソコンの社外持ち出しを許容していたかが1つのポイントとなります。

持ち出しが禁じられていた場合、飲酒後の居眠りによって紛失したことの過失は小さくないため、全額の賠償もあり得ます。一方、持ち出しが許容されていたのであれば、全額弁償は行き過ぎである可能性が高いでしょう。

(弁護士ドットコムライフ)

【取材協力弁護士】
村松 由紀子(むらまつ・ゆきこ)弁護士
弁護士法人クローバーの代表弁護士。同法人には、弁護士4名が在籍する他、社会保険労務士5名、行政書士1名が所属。企業法務を得意とする。その他、交通事故をはじめとする事故、相続等の個人の問題を幅広く扱う。
事務所名:弁護士法人クローバー
事務所URL:https://clover.lawyer/