「執刀医の誕生日」に手術を行うと患者の死亡率が高くなるという研究結果
カリフォルニア大学ロサンゼルス校の研究チームが、「外科医の誕生日に緊急手術を受けた高齢患者は、他の日に手術を受けた患者よりも30日死亡率(30日以内に亡くなる割合)が高くなる」と発表しました。研究チームは、外的要因が手術の結果に影響を与える可能性が示唆されているとしています。
Patient mortality after surgery on the surgeon’s birthday: observational study | The BMJ
Elderly patients 23% more likely to die if their emergency surgery takes place on the surgeon's birthday
https://www.psychnewsdaily.com/elderly-emergency-surgery-patients-23-more-likely-to-die-if-operation-takes-place-on-surgeons-birthday/
研究チームは、4万7849人の外科医がアメリカ国内の病院で行った98万876件の手術について調査しました。このうち、全体の0.2%に当たる2064件は、執刀日が担当外科医の誕生日当日だったそうです。なお、患者はすべて60歳〜99歳の高齢者で、手術はすべて心臓血管手術や大腿骨骨折手術、虫垂切除手術、小腸切除手術など、一般的な救急外科手術となっています。
分析の結果から、外科医が誕生日に行った手術の30日死亡率は6.9%で、一般的な30日死亡率である5.9%よりも高かったことが判明しました。研究チームによれば、誕生日以外に執刀した手術回数や誕生日と曜日の関係、患者の症状などを加味して分析しても、誕生日に行われた手術の30日死亡率は通常よりも有意に高いといえるそうです。
研究チームは、なぜ誕生日になると手術の30日死亡率が高くなるのかについて、「仕事の後の誕生日イベントに間に合うように手術を急いでしまうから」「誕生日関連の電話やメール、スタッフとの私語が増えて気が散るから」と予想しています。
また、調査対象となった外科医のうち、2144人は誕生日の前日に、2027人が誕生日の翌日に手術を行うようにスケジューリングしていたことがわかったとのこと。研究チームは「一部の外科医が、手術の予定日に誕生日を避けていたということは十分注目すべき事実です。これは、誕生日が外科医にとって手術への集中力をそぐ要素となるという私たちの仮定を裏付けるものです」と論じています。
研究チームは、今回の研究が高齢患者や一般的な救急外科手術に焦点を合わせているため、他のタイプの患者や手術の場合には適用されないと注意した上で、「今回の分析結果は、誕生日などの『手術への気が散る可能性があるイベント』を予定している外科医へのさらなるサポートにつながる可能性があります」と述べました。