5Gのエリアが広がる? 期待される5Gミリ波リピーターが開発中

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日本でも国内の主要な通信キャリアが第5世代の移動通信システム「5G」の商用サービスを開始した。

・NTTドコモは3月25日
・KDDIおよび沖縄セルラーは3月26日
・ソフトバンクは3月27日
大手3キャリアは、ほぼ揃い踏みで5Gのサービスをはじめた。
それから半年ほど遅れた9月30日には、楽天モバイルも5Gサービスを開始した。

いずれの通信キャリアもサービス開始当初のエリアは、ごく限られた場所のみで、さらにひとつひとつのカバーエリアがまるでWi-Fiスポットのように「点」だった。
これには経験豊富なIT関連のジャーナリストや記者たちも、さすがに驚きをみせていた。

例えば、NTTドコモが当初からホームページ上で公開していた「5G通信利用可能施設・スポット一覧」では、「ドコモショップ 店舗内」「山王パークタワー 27Fエントランス」といった具合だ。
つまり街中を歩いていても5Gを使えず、特定の場所に行かなければ5Gを体験できないのだ。

半年以上経過した現在、利用可能エリアは着実に増えており、NTTドコモはホームページ上でサービスエリアマップの公開も開始した。
しかし、まだ東京23区内ですら5Gの利用エリアはかなり狭いのが現状だ。


ドコモのHPで公開されているエリアマップ。赤色の5Gエリアはほぼ見て取れない



同じくドコモのHPで公開されている「5G通信利用可能施設・スポット一覧」。全国展開はされているが各所ともスポットレベル


5Gはなぜこんなにもエリアが狭いのか?
もちろん基地局の数が少ないという整備上の問題なのだが、それとはほかに5Gが利用する電波にも大きな要因がある。

「総務省 電波利用ホームページ」の「周波数帯ごとの主な用途と電波の特徴」というページを見てみると、周波数帯のそれぞれの特徴が確認できる。

電波は、人の目では見えないため理解しにくい。
そのため電波の特徴を表現する際、
「直進性」
「障害物を回り込む」
「遠くまで届く」
こういった表現が使われることがあり、見たり聞いたりしたこともあるだろう。

電波の特性は、基本的に、
周波数が低いほど遠くへ飛ぶが情報の伝送量が小さい
逆に、
周波数が高いほど近距離しか飛ばないが情報の伝送量が大きくなる

どちらの特性も一長一短があるのだが、
現在の携帯電話やスマートフォン通信は、情報の伝送量が大きくなっているため、伝達量の多い電波を利用する必要がある。必然的に、遠くに飛ぶ電波よりも、近くまでしか飛ばない電波が使われるということになる。

この基本的な考え方を理解しておけば、
高い周波数帯の電波を使う必要があるということが理解できるだろう。

ちなみに、5Gにおける各社の周波数帯割り当ては以下の通り。
・NTTドコモ…3.5GHz帯および4.5GHz帯(Sub6)、28GHz帯(ミリ波)
・KDDI・沖縄セルラー…3.5GHz帯(Sub6)、28GHz帯(ミリ波)
・ソフトバンク…3.5GHz帯(Sub6)、28GHz帯(ミリ波)
・楽天モバイル….3.5GHz帯(Sub6)、28GHz帯(ミリ波)

Sub6(サブシックス)とは、6GHz帯以下の周波数帯を指す。
ミリ波とは、30GHz〜300GHz帯のことを指す。
正確には28GHz帯はマイクロ波(3GHz〜30GHz帯)となるが、ミリ波に近いことからミリ波として扱われている。

かつてソフトバンクは、700MHz帯〜900MHz帯のことを「プラチナバンド」と呼び、3Gサービスにおいて同社が1.5GHz帯と2.1GHz帯の割り当てしかないことに対して不公平だと総務省に要望をだした。
のちに900MHz帯が割り当てられ、その周波数帯でサービスを開始した際は「プラチナバンド」でのサービスであることを強くアピールした。

それほどまでに、電波の特性というのは無線通信において重要な影響を与えている。
5Gで使われるSub6やミリ波も同様だ。

また、これまでの常識では、ひとつの基地局でカバーできる範囲は数百m〜数kmだった。
それがミリ波となると、数十m程度しかカバーできないという。

つまり、これまでのように高いビルの屋上に基地局を設置すれば広いエリアをカバーできる。
このような方法が使えない、電波が地上にあるスマートフォンまで届かないことを意味する。
基地局は、これまでよりも低い位置、たくさんのアンテナ、中継機の設置が必要になるということだ。


そこでエレコム子会社のDXアンテナは、こうしたニーズにいち早く応える「5Gミリ波リピーター」を開発している。

DXアンテナは、10月28日から30日の期間に幕張メッセ(千葉・千葉市)で開催された「第11回 Japan IT Week 秋」で、5Gミリ波リピーターを参考出展した。


5Gミリ波リピーターの特徴



5Gミリ波リピーターの仕様


説明員によると、
現状では大手通信キャリア向けというわけでなく、ローカル5Gでの利用を想定したものだという。
国内では、4.5GHz帯(Sub6)および28GHz帯(ミリ波)もローカル5G用に割り当てられており、このうちの減衰が大きいミリ波の特性を補うための中継機であり増幅器でもある。

ローカル5Gとは地域や企業などが主体となって特定の場所で5Gネットワークを構築、運用することをいう。例えば、工場内や倉庫内あるいはそういった建物を含む敷地内で5Gを活用したネットワークを構築する場合だ。

減衰が激しいミリ波を屋外の基地局から屋内まで飛ばしたいときに、この5Gミリ波リピーターが、中継機の役割を果たすのだ。
単に中継するだけでなく、電波を増幅させることもできるという。


本体は片手で持てる程度の大きさで下の台は専用クレードル


本体を充電しながら使える専用のクレードルも用意されている。
本体のサイズは約181mm(高さ)×181(幅)×50mm(奥行)となっており、片手で持てる程度のサイズ感だ。

もちろんローカル5G専用というわけではない。
現在は開発段階でもあり、あくまで用途は想定レベルだが、大手通信キャリア向けにも供給することは可能だろう。

こうした中継機や増幅器は今後5Gが普及するにつれ必須になるかもしれない。家庭内でも屋外からの微弱なミリ波をしっかりと屋内に届けるため、部屋に置いておくことになるかもしれない。

コロナ禍でミリ波のエリア構築が遅れている今、5Gミリ波向けのリピーターは開発が進められていることは、5G環境にとって追い風となるだろう。

今後、様々なメーカーから中継機や増幅器が登場することも十分に期待できそうだ。

総務省 電波利用ホームページ|周波数割当て|周波数帯ごとの主な用途と電波の特徴


執筆:S-MAX編集部 2106bpm