コロナウイルス流行を機に、これまでの「暮らしの常識」を見直す人が増えています。
80年代から暮らしの工夫をつづり、すっきりとした生活を実践してきたエッセイスト・石黒智子さん。石黒さんの暮らしには、これからの生活様式に取り入れられそうなヒントがたくさんつまっていました。

人間関係も、持ち物も、余計なもの、無駄なことを「おしまい」に。暮らしをもっと心地よく




エッセイストの石黒智子さん

無駄なこと、余計なことを「おしまいにする」ことで、部屋も気持ちもすっきり軽くなれるという石黒さん。

「私にとって『やめる』は、また始める可能性を含みますが、『おしまいにする』は、完全に終わりにするという意味。好きだったことでも、体力的にしんどくなったら、『もう十分に楽しんだから』と、すっきりおしまいにします」

「おしまいにしたこと」のひとつが、義理のおつき合い。気が乗らないときは、無理せず断ります。

「人づき合いは減りましたが、気のおけない人と会うだけで十分です」

些細なことでも、不便やストレスを感じたら、その都度見直している石黒さん。

「抱えていい悩みは2つまで。『収納が使いにくい』など、ちょっとしたことでも、3つを超えたら1つ解決します。別の方法を試したり、一度やめてみると、すんなり解決することもありますよ」

石黒智子さんがやめてよかったこと



●来客用の食器はもたない


来客の多い石黒さんのお宅ですが、来客用の食器はもたず、普段使いの器でおもてなし。
「白の洋食器は、どんな料理にも合うので重宝。種類を少なくする分、枚数は多めにそろえます」

●立派な花器はなくていい


ビーカーや欠けたマグカップなども花器の代わりに。
「いちばん右は、IKEAの全粒粉ミックスの袋。内側にビニール袋を入れ、その中に土を敷いています。水が漏れなければ、なんでも花器になるんです」

●義理のつき合いはおしまいにする


気のすすまない集まりには無理に顔を出さず、欠席に。
「話がかみ合わない相手と話しても、お互いに気をつかって疲れるだけ。誘われたら、『先約があるから』とお断りします」

●人と会う約束は1週間前。お店の予約はしない


天候の悪い日に出かけたくないから、予定を決めるのは週間天気予報が出たあとに。
「当日雨になったり、体調がすぐれなければドタキャンできるよう、お店の予約もしません」

●アクセサリーは元の形にこだわらない


形見分けでもらったけれど、デザインが好みじゃない…というネックレスは、ほどいてつくり変えます。
「どんなにものがよくても、使わないともったいない。元の形にこだわるのはやめました」


バラにしたパーツは素材ごとに容器に分け、フタつきの木箱に収納。留め具も残しておき、再利用します。

●お土産はわざわざ用意しない


部屋のエアプランツや庭に咲いた花を、来客用のお土産に。
「入れものも、家にあったあきビンやあき缶を活用。わざわざ買ったものではないので、受け取る側も気がラクです」

●“こうやって使うべき”にとらわれない


ミシンのボビンや排水口の受け皿を壁のフックにしたり、台所用のツールバーをカーテンレールにしたり。


「専用のものを買う前に、家にあるもので代用できないかを考えます」

<撮影/大森忠明 取材・文/ESSE編集部>

●教えてくれた人
【石黒智子さん】


神奈川県在住。1980年から雑誌や新聞で暮らしを楽しむエッセー、コラムを執筆。自身のホームページで日用品の使い方や日々の暮らしを綴つづるほか、台所道具の商品開発も手がける。著書に『探さない収納
』(PHP研究所刊)など