LiLiCo 撮影:源賀津己

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コロナ禍に直面した状況下で、エンターテイナーとして活躍するLiLiCoさんはどのように過ごしていたのか? アフター&ウィズコロナに向けて“re:START”エンタメ再始動にあたり必要な気持ちの在り方についてお聞きしました。

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今ある環境と状況をエンジョイすること

徐々にですが、ようやく映画館が再オープンし、最新映画の封切りも予定されるようになりました。皆さんもご存じのとおり、こんな事態は初めてのことですし、世界で同時に起きてしまったこと。

映画だけでなくエンタテインメント業界全体が仕事のあり方を見直す機会になりました。そこで、今回は私の生活、そして映画への向き合い方の変化をお話しします。

新作の紹介ができなくなったのは、この連載をはじめとする媒体での連載はもちろん、映画紹介コーナーを担当する『王様のブランチ』でもそうでした。

これも番組が始まって以来のことだったので、さまざまな工夫をして、少しでも皆さんがおうち時間を過ごすのに役立つ映画情報をお届けしました。

そのため、私も自宅からの放送や打ち合わせのために、照明や通信環境を整えて、今じゃ家で仕事するのが当たり前に。それが苦痛ではなく、むしろ快適に思えてきたほどです。

もちろん、飲食業をはじめ、人と接する仕事をしている方々が苦しい状況にあることは理解していますし、私も馴染みのお店などはできる限り応援をしています。が、

今回の新型コロナウイルスは、自分よりも他人に対する感染の危険性があるため、やむを得ず人に接しないといけない方以外は、外に出たい気持ちをグッとこらえないといけませんよね。

それが苦痛に感じる、ということをよく耳にしますが、今ある環境と状況をエンジョイすることで、わずかながらですが心を支える糧になると思っています。

本当に必要なものはなにか、それを考え直す機会に

こと日本の皆さんは、現状に不満を抱えるのは得意なんですが、どうしようもない状況でもなにか楽しむ、または他のことに目を向けるという想像力が足りないかな、と思ったりするんです。

私にとってこの期間は、自宅で仕事をする試運転になりましたし、夫と一緒にいる時間がこんなに長かったのも初めてで、なにも無駄はなかったと思っています。

ウイルスの収束後も続けられることがたくさん見つかった、すごい機会でした。なにせ、本当に毎日忙しくて、あちこち飛び回っていたときとそんなに変わらない忙しさでしたから。

こうして時間をもらえると、いろんなことを見つめ直す時間にあてられるんですよね。今まで、なにが必要でなにが必要なかったか、それを考え直すには充分な時間でした。

たとえば、夫との関係。この状況以前は、お互いに仕事で家を空けることが多く、一緒に過ごす時間はほとんどありませんでした。が、この不安な状況下で夫が一緒にいることで安らぎましたし、彼との会話もなにも気遣いが必要なくなりましたね。

だからといって、コロナの話題は絶対にしない。だって、その情報はなにもしなくてもどんどん入ってきてしまうし、あらためて話題にすると不安が募るだけ。

ブログでも絶対にその話題は持ち出さないようにしていました。それでもできること、話すことはたくさんあります。

映画の紹介もそうですね。新作を追い続けてきた20余年ですが、こうして新作がなくなってしまったとき、自分の観てきた作品がどれだけ蓄積しているか、試されたところがあります。

それに、『チョコレートドーナツ』や『歓びを歌にのせて』など、私が本当に好きなライフタイムベストを紹介する機会がめぐってくるなんて思ってもいなかったので、ありがたくも奇妙な気分でした。

新しい生きがいを見つける、そんなチャンスのときにいる

いずれにしても、日本でのこのパニックを見ていて感じたのは、想像力を養っていただきたいことです。日本の方はマニュアルが多すぎたり、なんでも決まり事に従いたがります。

でも、こういうときこそ、柔軟に、想像力を働かせて、より良い環境作りをするのがいいのではないでしょうか。

たとえば、お部屋の掃除ひとつとっても、ルーティンでやっていることからちょっと目をそらしてみると、今まで気づかなかったところにほこりがたまっていることが分かったり。

こうして個々の想像力を働かせるだけで、丁寧に生活するチャンスを得ることだってできるんです。このコーナーを読んでくださる方には、そういう“やわらか脳”を持ってほしいなと思っています。

新作の上映が始まって、あらためて映画の面白さ、ありがたさを感じる今。より“やわらか脳”を持って、たくさんの映画を楽しんでいただきたいですね。

そうすると、新しい発見もあるでしょうし、新たな生き甲斐を感じることだってできるかもしれない。私たちは今、そんなチャンスのときにいることに気づいていただけるとうれしいです。