3年間でメジャー4勝のケプカのスイングを井上透が解説(撮影:GettyImages)

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ついに再開された米国男子ツアー。ツアー7勝のうち4勝がメジャーというブルックス・ケプカ(米国)に注目してみよう。ここ3年の四大メジャーにおいては、11回の出場(2018年のマスターズを欠場)で予選落ちなし。優勝4回、2位2回、4位1回、6位1回と驚異的な強さを誇る。それゆえに、「メジャー以外はやる気がない」といわれることも。身長183センチ、体重93キロのマッチョ体型で、300ヤードを軽々と超えてくる“メジャー男”のスイングを、最先端の理論に精通しているプロコーチの井上透氏が解説する。
ケプカの正面から見たアドレスのワイドスタンスはドラコン選手みたいです。本当にデカく見える。ワイドスタンスですが大きな体重移動を目的とはしていません。バックスイングであまり頭が動いていないところから見ても、体重移動よりも安定感を目的としていると思われます。
そして、コンパクトなトップのポジションから強烈な切り返しによって得たエネルギーを、インパクトで左ヒザを伸ばし左肩を上げることによって爆発させる。まさに強くぶっ叩くスイングです。
ケプカのように最近の選手はインパクトで左ヒジが曲がっていることがあります。これはアマチュアゴルファーが引っかけるのを嫌って左ヒジが抜ける『チキンウィング』とはまったく質が違うもの。逆にフェースを閉めるために左ヒジが曲がるんです。
それはどういうことか。ケプカは右手を下からフックに握っているんですけど、左手は横から薄め(スクエア)に握っているので、かなり大きな手首の掌屈動作が入ります。バックスイング初期を見ても、左手の甲を地面に向けるように上げてフェースを閉じている。トップでは左手の甲はほぼ真上を向いています。この左手首を手のヒラ側に折る掌屈動作と連動して左ヒジは曲がりやすくなるのです。左ヒジを曲げずに、これだけ掌屈させるのは難しいですから。
トミー・フリートウッドのように左手をかぶせてフックに握っていれば、手首を曲げなくてもフェースを閉められるので、掌屈動作は必要ありません。ケプカがこのグリップで真っすぐ打つために身に付けた技ですね。それに、引き手として左ヒジが多少曲がっているほうがクラブを引っ張りやすいということもあるでしょう。この左腕があるからこそ、メジャーのような大きな舞台でも強く叩くことができるのです。
■解説・井上透
1973年生まれ。神奈川県出身。1997年からツアープロコーチとしてのキャリアをスタート。中嶋常幸、佐藤信人、米山剛などのコーチを務めた。現在は成田美寿々や穴井詩らを指導している。東京大学ゴルフ部監督としての顔も持つ。
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