新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染経路の1つに接触感染があるといわれています。特に現代人が常に手で触って操作するスマートフォンは重大な感染源になり得るため、スマートフォンのディスプレイを定期的に掃除することが非常に重要。そんなスマートフォンのディスプレイの消毒について、マサチューセッツ工科大学(MIT)の材料工学および工学教授であるロバート・マクファーレン氏が解説しています。

3Q: Robert Macfarlane on cleaning your smartphone screen | MIT News

http://news.mit.edu/2020/robert-macfarlane-cleaning-smartphone-0413

携帯電話など何かの表面に触れるたびに、手についた物質の一定量が触った表面に移動します。また、手で触れた表面の素材も、ある程度手につきます。そのため、スマートフォンのメーカーは化学的に強く他の物質を吸着しない材料でディスプレイをコーティングすることで、表面に残る残留物の量を最小限に抑えているとマクファーレン教授は説明しています。

COVID-19の感染拡大を確実に防ぐためには、病原体の付着そのものを防げるような抗菌コーティングの開発が待たれます。マクファーレン教授によれば、そのようなコーティングの開発は材料工学の分野で特に活発的に研究が行われているとのこと。



しかし、スマートフォンのディスプレイには、映像がくっきり見えるための「透明性」、タッチしていない時に反応しないための「電気抵抗性」、タッチした時に反応するための「導電性」、ぐっと触ったり汚れたりしても壊れない「耐久性」、拭き取るだけで簡単に掃除できる「扱いやすさ」など、さまざまな特性が求められます。仮に抗菌性をもたせるためにディスプレイに新しいコーティングを施しても、それによって何か別の特性が失われてしまう可能性があるため、開発難度は指数関数的に上がってしまいます。そのため、スマートフォンを清潔に使うためには、適度に清掃する必要があります。

スマートフォンのディスプレイは、一般的にフッ素樹脂かフルオロカーボンなどの撥油(はつゆ)性コーティングが施されています。例えば、指で触ることでディスプレイに残留する汚れの大部分は油脂であり、ディスプレイの表面に撥油性のコーティングを施すことで、油脂の残留量を最小限に抑えることが可能になります。

マクファーレン教授によれば、撥油性コーティングは消毒用アルコールで除去される可能性は低いものの、高濃度のアルコールに長時間さらされるとコーティングの均一性が失われてしまう可能性があるそうです。コーティングの均一性が失われると残留物が付着しやすくなってしまい、見やすさやタッチ感度など、ディスプレイの光学的・機械的特性に影響を与える可能性があるとのこと。つまり、手指の消毒などに使う高濃度の消毒液をそのままディスプレイの清掃に使うのは避けた方がよいというのが、マクファーレン教授の主張です。



マクファーレン教授は「スマートフォンのディスプレイを清掃するときは、消毒用アルコールを水である程度希釈してから使うべき」としています。また、「スマートフォンのディスプレイに施されている撥油性コーティングは微生物の付着をある程度は防いでいますが、COVID-19のパンデミックを考慮した場合、十分に微生物による汚染を防いでいるとはいえません」と語りました。

なお、セキュリティ企業のカスペルスキーによれば、「撥油性コーティングに最も影響が少ない消毒液はイソプロピルアルコールで、濃度は70〜80%が最適」「ウォッカやウイスキーなど、飲料用エタノールは撥油性コーティングを痛めてしまう可能性があるので使うべきではない」とのことでした

スマートフォンの消毒:新型コロナウイルスを取り除くために | カスペルスキー公式ブログ

https://blog.kaspersky.co.jp/smartphone-physical-cleaning/28025/