「エール」17話 近江アナが「あさイチ」で名推理。裕一と音が「竹取物語」でつながった

写真拡大 (全5枚)

第4週「君はるか」17回〈4月21日 (火) 放送 演出・松園武大 脚本・吉田照幸〉



4月7日に緊急事態宣言が出てから2週間。以後、本放送は逆L字で新型コロナウイルスに関する情報が流れ続けている。これだけ毎日L字で番組が囲まれていることも珍しい。地震や大雨のときに出るものだけれど、多くて数日である。

ドラマを見ていても気分が沈みがちな昨今だが、「エール」17回は、5分、5分、5分と短く場面を区切ったサザエさん方式(?)でテンポよく見せた。しかもラストは、裕一のコンテスト受賞で、明るい光が。


お見合い

「私は男の後ろを歩くつもりはないから。結婚したとしても私は一緒に歩きたい」

音(二階堂ふみ)は姉・吟(松井玲奈)のために見合いをしたが、野島夏彦(坂口涼太郎)が「男に三歩下がって尽くすのが大和撫子」といけすかない男尊女卑観を語ったため、胸ぐらにつかみかかって破談にしてしまう。

言ってることはいかにもいやな感じだが、言い方が本当にやな感じで可笑しかった。「ちはやふる」のヒョロ君を代表とするいけすかないキャラをやらせたらいま、坂口涼太郎が日本一だと思う。

母・光子(薬師丸ひろ子)はかつて、見合い相手に食ってかかったときに「もらい手おるよ、ここに」と言ってひょっこり現れた人物が、父・安隆(光石研)だったと言って音を慰める。モノクロの回想で光石研が出てきたから嬉しかった。

メガネをかけた文学少女・梅(森七菜)は芥川龍之介の言葉を引いて「運命は偶然よりも必然である。運命は性格の中にあるという言葉は、決して等閑に生まれたものではない」(運命は偶然に見えるけど、実際は生き方から生まれる)と賢そうな言い方で語っていたとき、夏彦の兄・春彦(長田成哉)が訪ねて来て、音に交際を申し込む。春彦目当てだった吟はあてが外れて泣き崩れる。

「嫌〜〜〜〜」

この「嫌〜〜〜〜」という絶叫と背後で音が固まっている画がコント仕立て。こういう見せ方には好き嫌いがあるだろうなあと思うが、普通にお話が進んでも……と思って工夫しているのだろうと想像する。

ここまで5分。
次は、裕一(窪田正孝)のターン。


会議

鉄男(中村蒼)に勧められ、国際作曲コンテストに応募することにしたが、裕一はちっとも曲が浮かばない。
こっちも「なんでだ〜〜〜全然降ってこな〜〜い」と絶叫。

心配した、支店長の落合吾郎(相島一之)、行員の鈴木廉平(松尾諭)、松坂寛太(望月歩)、事務員の菊池昌子(堀内敬子)のおもしろカルテットは鉄男も呼んで作戦会議。でも3時間、とりとめない無為なおしゃべりが続くだけ。気分転換に月を見ようと外に出る。

「いまはとて
天の羽衣着る折ぞ
君をあはれと
おもひしりぬる」

さすが鉄男(土曜日の日村がこう言いそう)、「竹取物語」の歌を諳んじる。と、裕一は「竹取物語」をモチーフに、歌のないオペラ(交響曲)を思いつく。なぜか裕一は音楽に別れを告げる儀式にしようと考えて、来る日も来る日も作曲に励む。
そして一ヶ月後、完成。

ここまで10分。再び、音のターン。

求婚

春彦が熱心にやってきて、跪いて指輪を差し出すが、結婚する気はないとつれなくする音。
裕一が交響曲「竹取物語」を作曲しはじめたとき、音はかぐや姫のように、興味のない男性から求婚される。
そもそも、音は子供のとき「竹取物語」を演じている。

「あさイチ」で近江アナがこの関係を指摘して、華丸大吉に「名探偵〜」と褒められていた。だったら全国の視聴者はたいてい名探偵であろう。

ともあれ。梅が言う「運命は偶然に見えるけど、実際は生き方から生まれる」がここにかかってくる。裕一と音の「竹取物語」のシンクロは偶然ではなく、互いの生き方が引き合わせたものだということである。

音は、子供のときから、当たり前に結婚するものだと思われている女性の生き方に疑問を思っていた。「竹取物語」のかぐや姫もたくさんの人からの求婚をすべて断って月に帰ってしまうのである。音の女性と結婚に対する考えは大人になったいまもその気持ちは変わらない。

光子が本当は歌劇団で踊りたかったが人生に折り合いをつけたと聞いた音は、「幸せ捨てても夢をとる」と言う。
それがきっと、裕一との運命になっていくのだろう。

女はさっさと結婚して男に尽くせば幸せという考えに反抗するのは、朝ドラにはよくあることであり、応援されるパターンでもある。結果的に夏彦がいやなやつだったが、写真で「コレ?」と見下すような言い方をするのは良くないと思ったが、写真の夏彦のポーズは誰が見たっていい感じはしないから仕方ない。

弟はヘンだけど、兄はすごく良さそうな人。吟の想いはこのまま砕けて終わるんだろうか。ちなみに、男性側に季節名がつくのは珍しい。たいてい女性名に季節名がつくことが朝ドラでは多いので。


メガネっ娘は人気が出る

梅役の森七菜はいま注目の若手俳優。岩井俊二監督の映画「ラストレター」でも重要な役を演じていた。大ヒットしたアニメーション映画「天気の子」ではヒロインの声をやっていて、梅の子役・新津ちせは「天気の子」の監督の娘なので、これも必然という運命であろうか。

さて。朝ドラでメガネっ娘は人気が出る。「あさが来た」の吉岡里帆、「ひよっこ」の松本穂香。その流れでのメガネっ娘属性を付加しての朝ドラ参戦と思うが、鼻がしっかりしていてそれがメガネで強調されるから、メガネなくても良かった気もしないでない。

しかも森は、劇画チックにメガネっ娘を演じていない。芥川の一節とその意味を語る口調が、大人びていて、本当に文学を読み込んできて、理屈っぽくもあり、想像力もある人物という印象を受けた。まわりがガヤガヤと劇画調ななかで、異色な末妹という感じ。このままそうであってほしい。とすると、メガネで少し劇画調にしたほうが馴染むという配慮かもしれない。いずれにしても、森七菜に期待する。
(文/木俣冬、タイトルイラスト/おうか)

(これまでの木俣冬の朝ドラレビューはこちらから)


番組情報

連続テレビ小説「エール」 
◯NHK総合 月〜土 朝8時〜、再放送 午後0時45分〜
◯BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜、再放送 午後11時〜
◯土曜は一週間の振り返り

原案:林宏司
脚本:清水友佳子 嶋田うれ葉 吉田照幸
演出:吉田照幸ほか
音楽:瀬川英二
キャスト: 窪田正孝 二階堂ふみ 唐沢寿明 菊池桃子 ほか
語り: 津田健次郎
主題歌:GReeeeN「星影のエール」
制作統括:土屋勝裕 尾崎裕和