リーチ マイケルが語るW杯後。体重減もトップリーグ優勝の思いは増した
ラグビーワールドカップの影響で昨シーズンの約2倍の観客数を記録しているトップリーグ(TL)。その盛り上がりに「トップリーグは日本代表を生で見られるチャンスです!」とアピールして貢献しているのが、いまや「日本ラグビーの顔」となった東芝ブレイブルーパスのFL(フランカー)/No.8(ナンバーエイト)リーチ マイケルだ。
今年も東芝の軸としてチームを引っ張るリーチ マイケル
ワールドカップ終了後はテレビ出演やCM撮影など、忙しい日々が続いたという。40日ほど故郷のニュージーランド・クライストチャーチに戻ったものの、述べ240日にもわたる日本代表の活動からトップリーグの開幕に気持ちをすぐ切り替えることは難しかった。
そこでリーチは、思い切った行動に出る。
「街で声をかけられることも増えたし、どこに行ってもワールドカップの話が続いたので、またゼロから始めないとトップリーグへ(気持ちの)切り替えができないと思った。ワールドカップのことを目の前から一度外すために、日本代表ジャージーを大事な人に渡したりして、ゼロからやり直すようにした」
現在31歳のリーチは、トップリーグ開幕に向けて肉体改造にも取り組んだという。
「肉を食べないようにして、ちょっと身体を絞った。肉を食べると、どうしてもお米を食べたくなり、どんどん大きくなってしまう。この1年間は魚だけを食べてやっていきたい」
ワールドカップ時に113kgだったリーチの体重は、ニュージーランドでのオフ期間に105kgまで落ちた。日本に戻ってきてトレーニングを始めたことで109kgまで増えたが、このまま肉を断って体重をキープしたいと語る。
そしてもうひとつ、リーチが今シーズン、東芝ブレイブルーパスでがんばらないといけない理由があるという。
今シーズンから、東芝のHC(ヘッドコーチ)にトッド・ブラッカダーが就任した。ニュージーランド代表でLO(ロック)やFLとして活躍したブラッカダーは、リーチの地元クライストチャーチに本拠地を置くクルセイダーズにも在籍し、チームをスーパーラグビー優勝に導いた名選手だった。
「僕は小学生で、クルセイダーズの初優勝時のパレードに初めていった時、彼がキャプテンだった」
リーチは懐かしそうに当時を振り返り、次は東芝で一緒に優勝したいという強い思いがある。
一方、ブラッカダーHCもリーチに全幅の信頼を置いている。練習試合に出ていなかったリーチを開幕戦で80分起用した理由を聞くと、新指揮官はこう答えた。
「ワールドカップ後の(リーチの)疲れは、メンタル的にも肉体的にも見られました。それでも彼が東芝に戻ってきた時に意欲を見せて、(試合でも)ハードワークでエナジーを与えてくれた。リーチのような経験豊富な選手はメンタルのタフネスを見せてくれる」
東芝に戻ると、リーチは日本代表キャプテンという重圧からも解放されたという。開幕戦では拓殖大出身のルーキーFL/LOシオネ・ラベマイに積極的に声をかける姿も目立っていた。
「日本代表ではHO(フッカー)堀江(翔太/パナソニック)さんが僕の裏にいてくれたので、頼りになった。日本代表でいう堀江さん役を、東芝では僕がやらないといけない。僕はもう、堀江さんのようなドレッドヘアは生えてこないけど(笑)」
ワールドカップの時、堀江はメンバー外の選手にも気を配っていた。初めて先発落ちをしたリーチをカレー屋さんに誘うなどして、「ワンチーム」を体現したひとりだった。リーチは東芝で、共同キャプテンのFL徳永祥尭とSH(スクラムハーフ)小川高廣のサポート役に徹するつもりだという。
日本代表の指揮官は、ジェイミー・ジョセフHCの続投が決まった。リーチは4大会目のワールドカップ出場も視野に入れている。日本代表は今年6月に国内でウェールズ代表戦、7月にはイングランド代表戦が2試合、そして11月にはアイルランド代表戦、スコットランド代表戦と、「ティア1」と呼ばれる世界の強豪とのテストマッチが組まれている。
ただ、日本代表に関して、リーチは謙虚な姿勢を見せた。
「正直、4年後はどうなるかわからない。(日本代表の選手選考は)リセットされるし、トップリーグでも学生でも、いいプレーをしている選手はたくさんいる。過去のことは忘れて、もう一度しっかり(トップリーグで)プレーしたい」
LOトンプソン ルーク(元近鉄/今年1月19日に現役を引退)を超えるワールドカップ5大会出場を目指さないのか?
そう尋ねられると、リーチは「(5大会目の2027年は)38歳。顔はすでに38歳みたいに思われるけど(笑)。ただ、ワールドカップ日本大会でスポーツの力を肌で感じたので、できるかぎりやりたい」と、2027年大会にも意欲を見せた。
トップリーグでもボールを持った時、ファンから「リーチ!」と掛け声が飛ぶシーンはすっかり恒例となってきた。今後もできるかぎり長く、東芝で、そして日本代表で「リーチ」コールを聞いていたい。