PayPay「20%還元」を抑制へ──使い勝手強化で『第2のYahoo!』目指す
PayPayでいつでも20%という状況は終わりする」──スマホ決済アプリ「PayPay」について、Zホールディングスおよびヤフーの社長を務める川邊健太郎氏はこう語り、将来の収益化へ向けた準備を進める方針を示しました。

ヤフーを中核として、アスクルなどを傘下に抱えるZホールディングスは、10月1日のホールディングス制移行後、初めての決算会見を実施しました。川邊社長の発言は、その決算会見の中でのものです。

PayPayはヤフーとソフトバンクの合弁で作られた企業。ソフトバンクグループの中心的な決済サービスと位置づけられています。川邊社長が「PayPayは"第2のYahoo!"を覚悟で立ち上げた」と繰り返し強調するように、ヤフー/Zホールディングスにとっても重要な存在です。

▲Zホールディングス 代表取締役社長/ヤフー代表取締役社長CEOの川邊健太郎氏

■大規模還元から使い勝手改善へ


「常時20%還元」をやめるといっても、PayPayが順調ではないからという理由ではありません。実際はその逆で、川邊氏によると、決済回数が順調に増加し、開始9か月目〜12か月目となる2019年4〜9月には、累計9612万回にのぼったとしています。

そして、追い風になったのが10月からの消費増税と、それにあわせて開始された政府の「キャッシュレス・消費者還元事業」でした。PayPayもこのキャッシュレス還元の対象となったことで、コンビニで2%、中小規模の店舗で5%の還元が受けられるようになっています。

PayPayでは政府のキャッシュレス還元にあわせ、中小店舗で5%上乗せ還元する「まちかどペイペイ」キャンペーンを実施。サービス開始から1周年にあたる10月5日には、1日限定で20%還元を復活させました。



このキャッシュレス還元の影響が大きく、PayPayの10月単月の決済回数は8000万回にのぼっています。川邊氏は「キャッシュレス還元が宣伝されたことで、PayPayを利用したいというユーザーが増えつつある」と話し、当初の予想を上回る実績を伸びを見せていると強調しました。



冒頭の「20%還元減らす」発言の真意をひもとくと"新しいユーザーを増やすために還元額を上乗せする段階は終わり、サービスの使い勝手を拡充する段階に移行した"ということになります。

PayPayは現状、巨額の赤字を出し続けていますが、川邊氏は「2020年代のどこかで黒字化したい」と表明。そのために決済手数料以外で利益を稼ぐ手段を増やしています。

直近ではYahoo! JAPANがモール型サイト「PayPayモール」と、メルカリに似たフリマアプリ「PayPayフリマ」を展開。PayPayが使えるシーンを増やし使い勝手を高めつつ、出品者からの手数料を取ることで収益化を目指します。この両サービスでは「最大20%還元」キャンペーンを期間限定中。PayPayから連想されるようになった「20%還元」を効果的に活用していることがうかがえます。

また、Yahoo!が買収を進めているZOZOについても、PayPayとの連携を強めていく方針で、まずはZOZOTOWNでのPayPay支払い対応とPayPayモールへのZOZOの出店が計画されています。




▲キャンペーンは「どこでも20%還元」をやめ、スポット的な展開に
▲「福岡ヤフオク!ドーム」の「PayPayドーム」への名称変更も正式に発表されました
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一方でPayPayはこれまで、サービスが利用しづらくなるなどのトラブルをたびたび起こしてきました。直近では10月5日の1日限定で20%還元を復活させたときに、一時的に支払い用バーコードを表示できなくなる大規模な障害が発生しています。PayPayが目指す"使い勝手の向上"には、想定を超えた利用にも耐えられるような設備増強も含まれるとしています。
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▲不正利用への補償や支払い機能も急ピッチでの拡充を続けます

「今のPayPayは昔のYahoo!と似ている状況だ。(固定通信の)Yahoo! BBを始めたころ、どんどんユーザーが増えて設備増強が耐えられなくなることがあった」と回顧する川邊氏。Yahoo! JAPANが日本を代表するポータルサイトになったように、PayPayも日本を代表する決済サービスとなるよう、規模拡大に対応できる設備増強を進めていく方針を示しました。

"第2のYahoo!"の言葉をなぞり、PayPayの最終的な目標として掲げられたは「Yahoo! JAPAN並の収益」でした。川邊氏は「日本のニーズを取りこみ、海外のプラットフォーマーに対抗していきたい」と意気込みます。

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