2009年にリストラを行ったSONY

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 日本経済を不況が襲うたび、企業は“社員の血”を流して窮地を脱してきた。だが、そうしたリストラが奏功したかどうかについて、「長期的視点での検証」はなされていない。日本型企業の最大の特性でもあった「終身雇用」が揺らいでいる中で、今後“人減らし経営”はさらに加速していくものと見られている。

【一覧】リストラ実施企業の業績変化(日産、東芝、ソニー、東電、電通ほか)

 そこで、本誌・週刊ポストは、企業の信用調査をもとにデータベース事業などを行なう東京商工リサーチの協力をもとに、リストラ実施企業の「業績変化」成績表(別掲)を作成した。

 もともとの企業の大きさによってリストラの規模には差があるが、リストを見れば多くの会社が業績を拡大させていることがわかる。だが、経済ジャーナリストの福田俊之氏はこう指摘する。

「売上と利益だけではリストラが成功か失敗かは判断できません。リストラによって企業規模が縮小すれば、全体の売上高も下がる。その縮小が、不採算部門の整理などによるものであれば、売上減がそのまま失敗の証明にはならない。

 人件費など固定費を削減した分を、設備投資や研究開発費に回すなど、いかに『選択と集中』が行なわれているかが重要です」

 他にも成否を判断するポイントがある。

「リストを見ていくと、平均年齢が極端に上がった企業があります。希望退職や早期退職を募集すると、他の企業に移っても活躍できる優秀な人材が流出し、そうでない人材が、その企業にしがみつくという一面もある。平均年齢の上昇は、今後の事業を担うべき優秀な若手社員が抜けてしまい、歪な年齢構成ができあがったことを示しているケースがあります」(同前)

 100万円を超える平均年収の上昇を記録した企業もある。利益を社員に還元する姿勢の表われともとれるが、平均年齢の上下と同調する場合も多く、これもやはり一概には言えない。

 企業の“貯金”である内部留保を極端に増やした企業もあった。通信大手の「KDDI」はリストラ前の10倍、自動車メーカーの「マツダ」は実に25倍だ。

「企業の健全性という側面から言えば、内部留保が増すことは悪いことではありません。新規事業やM&Aに打って出るための“軍資金”という場合もある。ただ、リストラや株価下落後に極端に増加している場合、“社員にも株主にも顧客にも還元せず、経営側が貯め込んでいる”と批判されることもある」(同前)

 投資家からの“企業の評価”である株価が半額以下に暴落したケースもある。

「投資家は目先の数字だけではなく、今後の事業計画を踏まえて鋭い目で企業の将来を見据えています。売上や利益が改善していても、株価が大きく落ちているのであれば、投資家が企業体質や経営陣の中長期的ビジョンに疑問を持っている可能性が高い」(同前)

 これらのポイントを総合的に判断し、福田氏が各企業のリストラの「成功と失敗」を3段階で評価した。

「評価の基準は、売上と利益、そこから導き出される利益率。ただし、それらがプラスであっても、社員の平均年齢や平均年収の推移など、今後の企業活動を左右する要素を適宜考慮しました。

 ソニーや資生堂など“笑顔”の企業は、リストラが業績の回復はもちろん、将来の安定成長につながっていると判断できる企業です。対して、東芝や日本電気(NEC)など“困り顔”の企業は、長期スパンでの展望が不透明といえる」(同前)

※週刊ポスト2019年7月19・26日号