タイムアップの笛が鳴ると、PKの判定の時よりも、さらに大きなブーイングが、オランダの喜びを消し飛ばした。「この試合の本当の勝者はジャポン」とレンヌの観客はジャッジした。
 
「オランダの応援がほとんどという噂を聞いていたので、PKの時のブーイングもそうですけれど、意味がちょっと分かりにくくて、試合が終わってからのブーイングで、私たちに対する『よくやったぞ』という意味なんだろうなと感じました。光栄だとは思いますが、結果がすべてなので。FIFAの方からも『日本は素晴らしいチームだったね』と、たぶん慰めだと思うんですけれども言ってもらった。ただ『足りない』ということは、私たちが自分で感じたことなので」(高倉監督)
 
「試合をやっている自分たちにとっては、結果(が重要)なので……。勝って拍手を受けたかった。負けて拍手を受けても、悔しさのほうが強いし」と岩渕。キャプテンの熊谷も「素晴らしいチーム(と認めてもらって)も、負けていますからね。ここから先(ベスト8)につながらないので、何を求めるかの違いかもしれませんが……」。
 
レンヌのピッチに、甘い感傷はなかった。
 
「本当に、この試合で決め手というか、ああいうところで勝負は決まるんだな、という恐ろしさを痛感した。もうちょっとこのチームでやりたかったなという思いでいるので、悔しいです。(『素晴らしい内容と悔しい経験は、東京オリンピックへの道しるべになるのでは?』)だからこそ(ベスト8以降に)つなげたかったですけれど、今はこの結果を受け止めるしかない。この結果をしっかりと受け止めて次につなげていきたい」(熊谷)
 
 今大会、なでしこジャパンを降したオランダ、イングランドを含めて、ヨーロッパ勢がベスト8のほとんど(他地域は、前回優勝国のアメリカだけ)を占めている。圧倒的優位な欧州勢を、来年、なでしこジャパンは東京オリンピックで迎え撃たなければいけない。
 
「昨年、一昨年と欧州の試合を見に行きましたが、本当に移動距離もないですし、切磋琢磨しながら、みんなでレベルアップしているというのは感じました。その牙城を崩したかったのですけれども。やはり国内リーグのレベルアップというのは必ずしなければいけない。代表活動と国内リーグというのは両輪ですし、私たちも欧州に出かけていくというのを増やさなくてはいけないと思います。ここで終わるわけにもいかないですし、みんなで危機感を持って、いろんなことを変えていけたらいいなと思います」(高倉監督)
 
取材・文●西森 彰(フリーライター)