イニエスタの苛立ちにチラつく神戸の迷い。7連敗で降格圏内が近づく
ヴィッセル神戸は、どこに向かっているのか。
Jリーグ第11節、公式戦6連敗中の神戸がホームに鹿島アントラーズを迎えた。神戸は出場停止の西大伍の代わりに大崎玲央を右サイドバックに入れ、ダビド・ビジャ、セルジ・サンペールが先発。アンドレス・イニエスタをベンチスタートさせた。一方の鹿島は、アジアチャンピオンズリーグ(ACL)でジョホール・ダルル・タクジム(マレーシア)とのアウェー戦を、30度近い高温と90%近い湿度というなかで戦い、中3日での試合となった。
川崎フロンターレ戦以来の出場となったアンドレス・イニエスタ(ヴィッセル神戸)
試合は、疲労が心配された鹿島が、立ち上がりから攻守にわたりアグレッシブに出て主導権を握り、立て続けに神戸ゴールに迫った。すると前半17分、左サイドの白崎凌兵のクロスにセルジーニョが右足を合わせ、鹿島が先制する。その後も鹿島はコーナーキックから決定機を作るなど、試合は一方的な展開になった。
神戸は、鹿島の攻撃に対してブロックを作っていたものの、選手の間をうまく使われ、なかなか攻撃に転じられない。しかも、この試合まで、攻守にわたってチームのために惜しまずスプリントを繰り返してきた古橋亨梧が、ケガのため交代。前半は鹿島が0−1とリードして折り返した。
後半に入っても、鹿島はFWのセルジーニョ、土居聖真がファースト・ディフェンダーとして前線から積極的にボールを追いかける。なかなかチャンスを作れない神戸は、後半20分に三原雅俊に代えてサイドアタッカーの小川慶治朗を、23分にはサンペールに代えてイニエスタを投入し、勝負に出る。
鹿島も少しずつ疲れが見え始めるが、レオ・シルバ、三竿健斗を中心にイニエスタに仕事をさせない。神戸がゴール前に迫るシーンでも冷静に対応し、逆にカウンターから決定機も作っていた。
結局、試合はこのまま鹿島が1−0で逃げ切った。点差以上に力の差は歴然としており、神戸はGKキム・スンギュのファインセーブがなければ3〜4点は取られていただろう。これで公式戦7連敗。泥沼にはまったかのように、最下位サガン鳥栖との勝ち点差はわずか3と、降格圏内も見えてきた。
この試合の神戸は、前線にビジャという世界的なストライカーがいるものの、鹿島の前線からのプレッシャーにより、彼の近くまでボールを運べなかった。縦パスを入れたくても、レオ・シルバ、三竿にケアされ攻撃の形さえできなかった。後半、イニエスタを投入したが、完全に抑え込まれ、スタジアムが湧くようなパスは皆無。イニエスタはレオ・シルバの激しいタックルで鼻血を流し、珍しく憤然とするなど、冷静さも失っているように見えた。
このチームは今季、フアン・マヌエル・リージョ前監督のもと、キャンプから”バルサ化”を目指してボールをつなぐところからスタートしている。それが吉田孝行監督に代わり、メンバーを入れ替えながら試行錯誤している状態だ。確かにケガ人は多いが、ウェリントン(この日はベンチ入りせず)を使って彼の高さを生かそうとしているのか、メンバーを代えてもつなぐサッカーを続けるのか、目指すところがまったく見えてこないのだ。
監督が代わってチームを立て直すには、一定の時間が必要だろう。しかし、試合は時間を待ってくれない。結果が出なければ、チームは悪い方向にしか進まない。次節はアウェーでの横浜F・マリノス戦。まだまだ厳しい試合が続きそうだ。