先日掲載の記事「詰んだ韓国。サムスン営業利益60%減の衝撃と文大統領の暗い命運」でもお伝えしたとおり、任期3年を残しながらも政権運営に黄信号が灯る韓国の文在寅大統領。日米、そして北朝鮮からも信頼を失い、国内でも猛批判に晒されています。韓国現政権の「寿命」はこのまま尽きてしまうのでしょうか。台湾出身の評論家・黄文雄さんが自身のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』で分析しています。

韓国】日米から見放され、親北団体に翻弄される文在寅政権の「寿命」

● やりたい放題の民労総「釜山の日本領事館前を『抗日通り』に」

4月11日に行われた文在寅大統領とトランプ大統領の米韓首脳会談では、2人だけの会談は2分しかなかったということで、いかにトランプ政権が文在寅政権に不信感を持っているかということが、韓国や日本のニュースなどでもさかんに報じられています。

文在寅大統領は「開城工業団地と金剛山観光の再開」に向けたアメリカ側との協議を求めましたが、トランプ大統領から「今は適当な時期ではない」と一蹴されてしまいました。

文在寅を「金正恩のスポークスマン」と批判して物議を醸した韓国の最大野党・自由韓国党の羅卿瑗(ナ・ギョンウォン)院内代表は「文氏の深刻な『会談中毒』が確認された」と述べ、「4月12日の最高人民会議での施政演説で、金正恩は制裁緩和なしには非核化する意思がないことを示したのに、文在寅氏だけが『非核化の意思を表明した』と述べている」と痛烈に批判しました。

韓国野党、文大統領は「会談中毒」=南北対話推進を批判

文在寅政権に厳しい態度の朝鮮日報も、社説で「この韓米首脳会談は一体何だったのか」と疑問を投げかけています。

●【社説】この韓米首脳会談は一体何だったのか

しかも、米朝の「仲裁者」であることを自負してきた文在寅大統領は、金正恩委員長からも4月12日の施政方針演説で「南朝鮮(韓国)当局は、すう勢を見てためらったり、騒がしい行脚を催促しておせっかいな『仲裁者』『促進者』の振る舞いをするのではなく、民族の一員として気を確かに持って自分が言うべきことは堂々と言いながら、民族の利益を擁護する当事者にならなければならない」と批判される始末です。

● 金正恩氏、文政権に「おせっかいな仲裁者ではなく…」 米韓首脳会談も不調、苦しい立場に

そんな文在寅大統領にとって、唯一、溜飲を下げたのが、4月11日にWTO(世界貿易機関)の上告委員会が発表した、「韓国による福島県産をはじめとする日本産の食品輸入禁止措置は不当とは言えない」とする最終判断結果でした。

これで韓国はお祭り騒ぎ、文在寅大統領も韓国政府訴訟対応団に祝いの言葉を伝えながら「緻密に準備すれば貿易紛争で勝つことができるという自信を持ってほしい」と述べました。

● 文大統領、WTO逆転勝訴に「対応団が大きな役割…訴訟戦略資料に」

当然、この「緻密に準備すれば〜勝てる」というのは、徴用工や慰安婦問題、竹島問題なども念頭にあっての発言でしょう。アメリカからも北朝鮮からも相手にされなくなって、韓国国内での批判が高まっていた文在寅大統領にとっては、まさにWTOサマサマだったでしょう。

ところが、今年6月に大阪で開かれるG20首脳会議の際に、安倍首相は文在寅大統領との首脳会談見送りを検討していることが明らかとなり、まさに韓国は日米朝から見放されつつある状況となっています。

ここでもう一つ、文在寅政権を揺さぶっているのが、冒頭のニュース記事である、全国民主労働組合総連盟(民労総)です。釜山市が日本総領事館近くの歩道に置かれていた「徴用工像」を14日に撤去したことに抗議して、民労総は釜山市を糾弾する集会を開催、「労働者像撤去は親日だ」「日本は謝罪せよ、親日積弊を清算しよう」というプラカードを掲げ、さらには日本総領事館前の道を「抗日通り」にするとまで主張し始めました。

加えて翌15日には、民労総およびその参加のメンバー約100人が釜山市庁への突入を試み、警察や市庁職員と衝突する騒ぎにまで発展しました。

●「労働者像撤去は親日」、民労総の突入で修羅場と化した釜山市庁

この民労総は、2016年からの反朴槿恵デモである「ローソク革命運動」を主導した親北団体であり、文在寅政権の誕生にも一役買っています。ところが昨年末くらいから、文在寅政権を糾弾するような運動を展開し始めています。

たとえば昨年12月1日に「2018全国民衆大会」が開催されましたが、その主催者「民衆共同行動」は、民労総をはじめとする50余りの市民団体が5月に結成した団体で、3年前に当時の朴槿恵政権を批判した民衆総決起闘争本部の後身でした。

この大会で民労総の委員長は、「弾劾の木槌を叩いた国会がろうそく抗争以前に世の中を戻そうとしている。財閥には長時間労働と安い賃金を、労働者には過労死を与えている」「(政府・与党は)協治という美名の下に、積弊残党、財閥と両手を組んでろうそく精神に逆行しようとしている」などと、文在寅政権を批判しました。

ちょうどこのころは、北朝鮮が11月に予定されていた、アメリカのポンペオ国務長官と北朝鮮の金英哲朝鮮労働党中央委員会副委員長の協議をキャンセルした時期です。その約1カ月後の12月10日には、アメリカは制裁強化に踏み切っています。

そして、2月の米朝首脳会談の決裂、4月の米韓首脳会談の不首尾、北朝鮮の韓国批判に重なるように、民労総が大暴れしはじめたというわけです。もちろんその裏には北朝鮮の指示があり、文在寅大統領に対して圧力をかけているのは確実でしょう。

いまやトランプ大統領、金正恩委員長、安倍首相から完全に信頼されなくなった文在寅大統領。その外交のごたごたが国内政治に跳ね返り、韓国経済の低迷と政治の混乱を招き、国民からの支持率低下を招いているのです。事大主義とコウモリ外交は朝鮮半島の歴史的伝統ですが、そこから脱するために北朝鮮は主体思想を掲げているだけに、韓国の狼狽ぶりが一層引き立っています。

島の日本と陸の中国に挟まれている朝鮮半島にトラブルが多いことについては、地政学的理由から分析されることが多い。海の勢力からも大陸諸勢力からも「通路」として利用されるため、争乱が多いとも言われています。

いままで日本の対外戦争もたいてい朝鮮半島がからんでいます。その例として、白村江の役、秀吉の「朝鮮に道を借りての『征明』」、東学党の乱からの日清戦争などもよく挙げられます。

韓国における反日パフォーマンスは、日本でもよく報じられていますが、日本以外の国はたいてい「またか」ぐらいで、ほとんど気にしていません。日本では韓国と断交すべきという声までありますが、挑発の罠に嵌らないほうがいいという意見もあります。

いずれにせよ、外から相手にされなくなると内ゲバに変わるのが必至の国です。コップの中の嵐が多いことは、戦後史だけを見てもわかります。日韓合邦時代の反日・抗日の指導者たちはほとんどが政敵によって暗殺されてしまったため、戦後の韓国建国で李承晩が政権を握ることが出来たわけです。

その後は同じ民族同士の殺し合いである朝鮮戦争が起こりました。そして現在は日米からも北朝鮮からも距離を置かれるようになっているわけです。韓国経済の破綻も噂されており、何が起こるかわかりません。

先週のメルマガ「詰んだ韓国。サムスン営業利益60%減の衝撃と文大統領の暗い命運」では半ば冗談で、「文在寅はアメリカに亡命を依頼しに行くのではないか」と書きましたが、文在寅政権の終焉は意外と早いかもしれません。

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